Episode V-9
キュアリスとセルクスは、決闘場に通された。
「トゥルマが周りを取り囲んでいる。まるで古代のコロセウムね」
「キュアリスさん、着替えはよろしいのですか。そのような派手な格好のままでは、色々と支障が出るのでは」
案内してくれた軍人がミニスカートを見ながら尋ねると、首をふって答えた。
「このままで戦います。私は、この姿に誇りを持っています。あなた達の軍服と同じように」
「ほぉ。何かおありのようですね。わかりました。もうすぐ始まりますので、場内に入ってください」
目を細めながら、ゆっくりと入った。
周りから話し声はするが、お祭り騒ぎのような歓声はない。とても静かだ。
紅白の旗を持った審判が近づいてきた。
「私は、今回の決闘の見届人兼審判を任された、ディレン・ザクト・キーファ少尉だ。ルールを確認しておく」
・決闘においても殺人は違法。直ちに拘束され罪を負う。この場合は両者敗北扱い。
・決着後、賭けられた事柄または物品は速やかに渡されるものとする。
・敗北したものは、殺人または自殺以外の勝者側の言い分を全て承諾しなければならない。
「なお、四方を囲んでいるトゥルマは、マルダード殿からの強い要望によりリングコーナーとして立てた。起動は出来ないようロックがかけられている。以上だ。質問のある者は挙手」
二人ともお互いを見たまま手を挙げなかった。
「ところで両者とも、防具はいいのか?」
二人は首を振った。
「お嬢様から頂いたこれが勝負服です。他は必要ありません」
「妹の慰み者なんぞ、中身ごとズタズタにしてやる。一撃も貰わず、セルクスを戴く」
審判は紅白の両旗を掲げた。
「では、構え!」
マルダードが腕を大きく広げていった。
「よく、ここまで来たな。黄色頭のひよこメイドめ、いや無駄にデカイ乳をしているからホルスタインか」
「マルダード様……、あなたの想いは十分に伝わりましたわ。私もそれにお応えしなくては失礼というもの」
彼の挑発を全ていなすように、カタナ――
「ふん。目の見えぬお前に何が出来る」
マルダードもレイピアを抜いた。
三身分ほどの距離でさえ、目を細めてやっと見える視界だ。
剣先を合わせれば試合が始まる。
――お嬢様たちは間に合わなかった。
キュアリスは、一歩踏み込んだ。
マルダードは笑いながらレイピアをカタナの剣先に合わせた。
審判が両旗を振り下ろした。
「決闘、始め!」
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