Episode V

Episode V-1

 レイピアの柄が激しい火花を散らした刹那、カタナの剣先がセルクスの顔を捉えた。

『お見事。キュアリス』

「や、やっと……セルクスから一本取れた」

 もう決闘は明日だ。

 今日で成果が現れなかったらという不安もあったが、なんとか形になった。

『もっと自信を持って。私にこの格好をさせるまで上達したじゃないの』

「脱ぎだした時はびっくりしたけど」

 今セルクスは防護着レオタードの姿だった。もうメイド服のままではキュアリスの剣先を躱しきれなくなったのだ。それがつい昨日のことだ。

 イクイップフォームを解除しながら褒めた。

「成長の早さにびっくりしているの。さすがは私の大好きな人」

「私も……」

 キュアリスがキスで答えようとしたが、セルクスがそれを止めた。

「どうしたの?」

 いつもならすぐに首に腕を回してくれるのに、今日は俯いていた。

「キュアリス。もう決闘は明日なのに、私の正式なマスターになってくれるかどうかの返事がまだ……」

「あ⁉ ……だ、だって」

 思い出して顔が真っ赤になってしまった。カタナを鞘に納め、ゆっくりと地面に置くと、我慢できずに両手をびゅんびゅん振ってしまった。

「ああ、もう、だってだって。貴女にその、男の人のもついてて、あのその、正式な契約のときは、私の初めてをあげなきゃならないなんて、きゃぁぁぁぁ」顔を抑えて首をふるふるして「聞いてないわよ!」と訴えた。

「もう、いつもそればっかり」

「そればっかりって、セルクス。貴女まさかわざとこの話してるんじゃないでしょうね」

「ふふふ。どうでしょ♪」

「あーっ、やっぱり。もう許さないんだから」

 キュアリスの唇が人差し指で塞がれた。

「ちゃんと、答えを聞かせてくださいね」

「セルクス……もう、ずるい」

 人差し指をゆっくり払いのけて、唇を奪った。もう舌を絡めることに抵抗を感じない。唾液を堪能した後、ちゅぽっ、と音がした。

「あなたのために勝つ。今はそれだけのことを考えさせて」

「分かったわ。信じて待ってる」

 ああは言ったものの、トゥルマレディと添い遂げるなんてどうしたらいいのか、まだ気持ちの整理が付いていなかった。

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