Episode IV-5

 リズィが連絡を受けてやってきた。二人も一緒に後部座席に乗ることになった。一番後ろにセリカーディ、その向かいにキュアリスとセルクスだ。

 車が発進すると、キュアリスが話しかけた。

「お嬢様」

「なにかしら」

「いいこと、ありましたね」

「ええ! とっても」

 三人は顔を合わせると、明るい笑顔で花を咲かせた。

「お嬢様、よろしいですか」

 運転中のリズィが話しかけた。

「どうしたの」

「お預かりしたものがございますので、お屋敷についたときにお渡ししたく思います」

「ええ。わかったわ」

 屋敷についてリズィがトランクを開けた。

「どうぞ、お嬢様」

「これ、レイピアじゃない。どうして」

「これも一緒に渡されました」

「手紙?」

 小さい手紙を開くと、短い文章でこう書かれてあった。

《お父様にはくれぐれも内密にしろ。いいな》

 肩をすくめた。

「リズィ、どなたからのプレゼントかしら」

「お屋敷のメイドが持ってきました。どうしたのと聞いても、首を振るだけで『お嬢様に渡してください』とだけ」

 それを聞いたセリカーディは、手紙を四つに破った。

「リズィ、ライターでこれを燃やして」

「かしこまりました、お嬢様」

 跡形もなく燃え尽きたのをみると、セリカーディはレイピアをセルクスに渡した。

「さあ、あなたにプレゼントするわ。キュアリスを鍛えてあげて」

「あ、ありがとうござます。このレイピアはお買い求めになられたのですか」

「さあ? 私には無用のものだからあなたが使いなさいな。今日はもうお屋敷のお勤めはいいから鍛錬を始めなさい」

「はい、直ちに。お嬢様」

 キュアリスとセルクスは裏庭に向かった。

 セリカーディはリズィを帰すと、屋敷の自室に戻った。

 脱衣所で制服を脱ぎ、ピンク色の下着も丁寧に脱いでツインテールをほどくと、シャワーを捻った。

 汗を洗い流しながら、手を壁に叩きつけた。

「二回までは許して差し上げますわ、お兄様。ただし、三度目はありませんわよ」

 セリカーディの目は、薔薇の棘で渦巻いていた。

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