Episode II-2
「全く、あの変態お兄様には困ったものだわ」
部屋に戻ってきたセリカーディは、キュアリスを見て安心したのか愚痴をこぼし始めた。
「聞いてくれる? 『セルクスは俺のものだ、あいつに会わせろ、お前の専属メイドなんて許さない』を壊れたレコードみたいに繰り返すのよ。あ、私から決闘の取り決めについて伝えておいたから。そこだけ素直に聞いたのは気になったけど」
「ご迷惑をかけてしまって申し訳ありません」
キュアリスが頭を下げると、セリカーディは黒いツインテールを跳ねてその手を腰に当てた。
「何を言ってるの、私が自ら申し出たことよ。それにあのお兄様を言いくるめるなんて猛獣を手懐けるより簡単よ」
「それは、頼もしいことです」
「ふふふ。ところで、セルクスの仕立てはまだかしら」
「見てまいりましょうか」
「お願いね」
キュアリスが部屋の扉を開けようとすると、ノックが聞こえた。
「大変お待たせしました、お嬢様。セルクスの仕立てが出来上がりました」
衣類専門のディアメイドの声だ。セリカーディはキュリアスに開けるように促した。
ディアメイドはキュリアスを見て会釈し、セリカーディを見て一礼した。
「お嬢様、ご確認をお願いします。さあセルクス、中へ」
「はい」
青い百合の花がそよぐように見えたその姿に、キュリアスとセリカーディは息を飲んだ。
大きい胸とフリルのミニスカートのがふんわりとマッチしていて、細い腰と相まって美しいラインを作っていた。全体の布地は寒色系の青でまとめられており、エプロンはごく薄い青色の大きなリボン付きだ。キュリアスのメイド服と同様、頭にはメイドキャップがつけられていてデザインは近いものになっていた。それでも、人間の女性では到底成し得ない
「お嬢様」ディアメイドは一つ咳払いして「私の見立てでは、何をどうお召ししても似合いすぎるように思えまして、かなり迷いました。いかがでしょうか」
セリカーディは大きく頷いた。
「いいわっ。想像以上よ! さすがね」
「ご満足していただきまして、心よりほっとしております」
「もういいわ、ありがとう。持ち場に戻って」
「では、失礼します」
改めてセルクスを部屋の中央に立たせると、窓からの光の加減と相まって更に美しさが際立った。
セリカーディはセルクスを何周もしながら感嘆の声をあげていた。
「キャー、いやぁん。本当に素敵ね」
「はい、本当に」
控えているキュリアスも我を忘れてしまう。
セルクスはセリーカディを捕まえて抱き寄せた。
「このような趣向はいかがですか」
ちょうどセルクスの豊かな胸が顔に埋もれて、存分に堪能できる状態になった。
「やだ、なにこれ。柔らかくて張りがあって、造り物だなんて思えないわ」
「ご要望でしたら、今すぐここで夜の接待をして差し上げますわ」
「え、ああ、それは遠慮するわ」
あっさりと断ってセルクスから離れたセリカーディは、二人に言った。
「ささ、お仕事にかかってちょうだい」
「はい、お嬢様」
何の躊躇いもなく素に戻った彼女に驚いたキュリアスだったが、早速とりかかった。
「ほら、セルクスも、いつまでも立っていないで、キュリアスの手伝いをしてて。私は食卓に降りるから」
「はい……。かしこまりした」
早い時間に掃除全般は済ませてあるので、あとはベッドメイクだけだ。買い出しから返ってすぐにやるつもりが、騒ぎのせいで出来なかった。さらに夕食の給仕もディアメイドの勤めだが、マルダードの怒りをまた買ってしまったのでしばらくはその仕事は出来ないだろう。マリアに確認を取った所、案の定だった。
「セルクス、ベッドメイクは出来る?」
「いいえ。私、家事手伝いは全く経験がありません」
「じゃあ、言われたとおりにしてね。今日はコンフォタを入れ替える日だから」
「コンフォタ? なんですかそれ」
「この毛布のことよ」
「掛け布団のことですか」
「かけ……和風な言い方するのね。まあいいわ、通路に新しいコンフォタがあるからそれを持ってきてくれる?」
「分かりました」
扉を開け、通路に停めてあるカートに置いてあったコンフォタを抱え上げた。
その歩く姿に見とれてしまうキュリアス。
「綺麗。まさに百合の花だわ」
「これでいいですか?」
「え? い……いいわよ。でも締めあげるように抱えるんじゃなくて、上腕にかけるように持ち上げると形が崩れないから」
慌てて我に返り、簡単なアドバイスをした。
セルクスは言われたとおりに腕にかけてみる。肩幅が狭いせいで腕が大きく広がった格好になってしまった。
「大丈夫?」
「はい。このくらいの重さなら平気です」
「私は、洗濯前のコンフォタをさっきのカートに置いて来るわ。はい、このシーツの上に乗せて」
「はい」
キュリアスが通路から戻ってくると、無造作に置かれたコンフォタがあった。
「よし、出来たわね。次に、さっきのような形に、ベッドの上に掛けることが出来る?」
「はい。記憶してます」
ぎこちない手つきで元通りのベッドに直す。セルクスは微調整を始めたが、それをキュリアスが止めた。
「だいたいでいいの。あまり正確に置いてしまうと、替えていないと疑われたり、手間がかかって仕事が遅れるから」
「そうですか」
「じゃあ、衣類の洗濯場に行くわよ。ついてきて」
「はい」
その間にメイドの仕事を一通り教えた。トゥルマレディだから今すべてを教えれば記憶してしまうだろうけれど、そろそろセリカーディが食事から戻る頃なので時間をかけていられなかった。
お風呂の時間。
今日は、部屋の隣にある浴室を使う事になった。大浴場は週に一回交代で屋敷の貴族たちが使用人と共に使用する決まりになっている。ちなみに、彼らが使い終わった後に使用人たちだけで入ることになる。
その時間があるので使用人は貴族と風呂にはいる時に、専用の作業着で共に入るのだがセリカーディはまた「一緒に入ればいいじゃない」と言うので、作業着をつけず裸での接待をすることになった。
「お嬢様、失礼します」
「キュリアス、セルクス、待ってたわ。……まあ、セルクス。裸で見ると本当におっぱい大きいのね」
「ありがとうございます」
「いったい、何カップあるのよ」
「Gカップになります。ちなみに、トップは85cmです」
「85でG? どういうことよ」
「アンダーが人間の女性とは違うのです。私のアンダーは59cmです」
「細! 細すぎでしょ。ねえ、キュリアスもそう思うでしょ」
「……ふぅ」
「キュリアスってば」
「はいっ、すみません。お嬢様」
「あなた、裸になったセルクスにまで見とれているの?」
「うっ、それは」
「言い訳してもダメよ、顔真っ赤だもの。そうだ、キュリアス。セルクスにおっぱいスポンジやってみなさいよ」
「そ、そんな」
「隠したって無駄よ。もう陥没乳首浮き出ているじゃない」
「嘘です」
と自分の胸を見ると、本当に少しだけ乳頭が乳輪の割れ目から出てきていた。
戸惑うキュアリスを気にもとめず、セルクスは言った。
「キュリアスも娼婦の経験が?」
「無いわよ! ただ、お嬢様に言われて試した程度よ」
「お嬢様が望まれるのでしたら、私はされてもいいですよ」
「セルクスまで……。もう、わかりました」
セルクスが腰掛けに座った。ほくろひとつない真っ白な背中だ。それを見ながら自分の胸を泡立てていく。なんだかいつもより胸の奥が熱い。
ゆっくりと胸を押し付けていく。上に擦ると、乳首がピンと上へ滑った。ますます硬く反り返っていくようだ。
「あっ……ん」
下へ滑らせると顔が背中に当たった。肌が本当にすべすべしている。
「キュリアス、ちょっとよろしいですか」
「は、何?」
「肩を抱きかかえるようにして滑らせると楽ですよ。人間の貴女では、動きづらいでしょう」
「わ、分かった」
顔が紅潮するのを感じながら、セルクスの肩を抱きかかえた。すると、彼女はその手を掴んで胸に導いた。
「せ、セルクス」
「私のおっぱいを揉みながらお願いします……」
吐息が甘い。セルクスはすっかり出来上がっていた。キュリアスも言われるがまま乳房を揉みしだく。柔らかくて、指が埋まっていく。コリコリとした突起が当たると「あん」とキュリアスが小さな声を上げた「セルクス、私」
「あ、キュリアス。とても素敵です」
セリカーディはそっと湯船に入り、熱い視線を向ける。身を乗り出しながら、こっそりと指を秘丘に這わせると、そこはぬらぬらとしてきた。声を抑え、ゆっくりと弄ると夜ひとりでする時以上の快感がこみ上げてきた。
一方、キュリアスの大きく柔らかな双丘スポンジは、ますます熱心さを増していった。
「あう⁉」
「ふう⁉」
お互いに何かのツボに当たったのか、急に動きが激しくなる。
そしてキュリアスはセルクスの
その瞬間、二人は無言の絶頂を迎えた。
頭が真っ白になり、キュリアスはセルクスの背中にもたれた。自分の秘部が熱く滴っていたのが自覚できるほど達してしまった。
セリカーディも同時に達したが、二人には気づかれないように余裕を見せた。
「ふぅ……。すごかったわよ」
「お嬢様、見苦しいところを見せてしまって申し訳ございません」
「とっても楽しめたわ。それに、何言っているの。私の時は感じなかったのに、セルクスの時は凄いじゃない。やっぱりあなた、恋しているんでしょ」
「な、いや、あの、その、ええと」
本人を目の前にしていう言葉⁉ と困惑するキュリアスにセルクスはその開いた唇を奪った。
「んんっ」
「ん……。ぷはー。……嬉しいです」
思わず目がとろんとしてしまったが、慌てて我に帰り、顔を覆ってしまった。
「うう……」
キュリアスが困っていると、セリカーディは仕方ないわねと畳み掛けた。
「あなた、間違いわ。私はセルクスに抱きつかれた時、何も感じなかった。たしかに気持ちよかったけれど、高鳴りは感じなかったわ。裸を観た時も、綺麗だとは思ったけれど、流石に何も着てないとなんか違うというか可愛さ半減って感じ。でも、あなたは、全てに対して乙女の反応をしていた」
キュリアスは顔を覆ってしまった。裸を見られることよりも恥ずかしいことが、この世にあるのかと思うくらい恥ずかしかった。
セリカーディは畳み掛けた。
「認めなさい」
「でも、まだ自分の中で確信が」
「もう、じれったいわね。まあいいわ。この私がこれだけ指摘したんだから、あとは時間の問題よ。決闘までにきっちりと心の整理をつけときなさいね」
「あ、決闘」
「呆れた、忘れてたの」肩を上げながら「セルクスにお熱だったのね」
居たたまれなくなり、湯船に飛び込んだキュリアスは背中を向けたままそっぽを向いた。
「もうお嬢様ったら、知りません!」
「キュリアスって、やっぱり可愛い」
セルクスの言葉に素直に喜べないまま、夜は更けていった。
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