Episode I-4

 キュリアスは今朝のマルダードに対する非礼により、晩餐の給仕も出席を控えるようにマリアに言われていたので、メイド室と呼ばれる休憩所で他のメイドたちと食事をしていた。お姉様もディアメイドもメイドも関係なく一緒に時間を過ごすことが出来る。スケジュールがまちまちなので手の空いた者から賄いを頂いていた。今回の当番は、時間が空いたキュリアスが進んで交代を申し出た。

「キュリアスの賄い、他の人とちょっと違う味よね」

「特に今晩の肉料理よ。どうしてこんなに美味しいのかしら。コツを教えてくださる?」

 二人のメイドに質問攻めにあいながらキュリアスはこの一時を楽しんだ。

 そこへマリアが入ってきた。

「あ、お姉様。お先に頂いています」

「どうぞ。もう、マルダード様の愚痴で耳が痛くなったわ」

「それは、申し訳ありません」

「今朝のことだけじゃないのよ。会わせろ会わせろとうるさくおっしゃってて……おかげでお腹すいたわ」

「ご用意します」

「あら、当番変わったのね」

「はい。ちょうど私の得意な肉料理でしたから、丁度良かったです」

「こんなバラ肉も、キュリアスの手に掛かると本当に美味しいのよね。……んっ、ほらね」

「ありがとうございます。ごゆっくりお召し上がりください」

「あら、お仕事?」

「はい、セリカーディお嬢様とお風呂に呼ばれておりまして」

「そう。あとで今日の報告書お願いね」

「かしこまりました」

 セリカーディの部屋へ迎えに行くと、ノックをする前に飛び出してきた。背伸びをして顔をぐっと近づけてくると、早く早くと黒髪ツインテールを揺らしてみせた。

 キュリアスは微笑みながら答え、浴場に先導した。

 脱衣場で膝を付き、脱いだ服を受け取る。ピンクの小さなブラを受け取った時にセリカーディが不意に呟いた。

「ねぇ、セルクスとお兄様との披露宴の日程が決まったそうよ」

「……そう、ですか」

「諦めるのは早いと思うわ」ガーターベルトとショーツを渡して「これを聞けば、キュリアスも許せないと思うはずよ」と耳元で囁いた。

 浴場用の作業着に着替えようとすると、ツインテールを下ろしたセリカーディが止めた。長い黒髪が肩まで流れ、幼い乳房はつんと上を向いている。ウエストの曲線もまだ大人びいているとは言えないものの、これからの成長に期待させるには十分な美しさだ。

「何やってるの。あなたも入るのよ」

「ですが、お勤めが」

「いいの。裸のお付き合いをしたいの」

「かしこまりました、お嬢様」

「先に湯浴みをしているから、早くね」

「はい」

 セリカーディが浴場に入るのを見送って、キュリアスも服を脱ぐ。ミニスカートのメイド服を籠にいれた。フロントホックのブラを外すと、ゆたやかな双丘が弾む。張りがあり前にせり出しているせいで下が見えにくくなってしまったので、いつものように大きく右斜めに身体をくねらせながら下の下着を外した。

 身体を洗う道具を揃えて浴場に入ると一礼した。

「失礼致します、お嬢様」

「キュリアス、早く洗ってよ」

「お待たせしました。それでは始めます」

 石鹸を粗めの布で細かく泡立てて、それを手で直接身体に塗っていく。擦ってしまうと肌を痛める原因になる。毎日入浴するならこれくらいで良い。

「ねえ、おっぱいスポンジやって」

「はい⁉ どこでそんな言葉を覚えたのですか」

「せっかくおっきいんだから、やってよ。本当に気持ち良いのか知りたいの」

「分かりました、やってみます」

 キュリアスは胸に泡立てた石鹸をつけ、それをセリカーディの背中に擦り付ける。ちょっとなれないため、背中が張る感覚がした。とくにこれといった刺激が自分に跳ね返ることはないが、少々恥ずかしい。

「お嬢様、これでよろしいですか」

「あら?」

「どうされましたか」

「あなた、乳首ないの?」

「え。あ、ちょっ」

 セリカーディがくるりと振り返ると、目の前には大きなおっぱいが二つ泡まみれになっていた。

 その先端を探すように触りだした。

「ちょ、お嬢様。あ、やめ、あっ」

「やっぱり。あなた、陥没乳首だったのね」

「え、ええ。結構深くて」

「本当だ。指が第一関節まで入る」

「あうっ、痛っ」

「あ、ごめんなさい」

「もうお嬢様、爪を立てすぎです」

「これだけ弄っても、浮き出ないのね」

「やめてくださいませ。おもちゃではありません」

「こんなに沈んでて大丈夫なの?」

「あのその……気持ちよくなると浮き出てきますから」

「あら、じゃあ試しに」

「お嬢様、お戯れはもうやめてください。恥ずかしいです」

「良いじゃない。女同士なんだから。あ、じゃあ吸ってみようか」

「あの、おっぱいスポンジはどうしたんですか」

「こんな乳首じゃ、気持ちよくなれないわよ。計画変更! お湯に入るわよ」

 セリカーディと自分の身体を流したキュリアスは、セリカーディが肩まで浸かったのを確認した後に入った。ゆっくりと身体を沈めると、胸が浮き上がり肩の力が抜けていく。

「キュリアスって、生えてないのね」

「お、お嬢様。どこを見ているのですか」

「どこって、おまん……」

「お嬢様、それ以上はおっしゃってはいけません」

「むー。どうしてよ」

「もっと、仲の良いご友人か恋する殿方の前で言うものだと思います」

「じゃあ、キュリアスは友達じゃないの?」

「私は、お嬢様の専属ディアメイドでございますから」

「いいわ。すぐに友人関係になれるなんて薄っぺらいものね。ところで、さっそく吸うわよ。ほら、隠さないで」

「赤ちゃんみたいですよ」

「陥没乳首を立たせてみたいじゃないの」

「なんだか、目がいやらしいですぅ」

 これ以上拒否するわけにも行かず、メイドであることを若干呪いながら右胸を差し出した。

「どうぞ」

「では、ちゅぅぅぅぅ」

「うう、イタタタ」

「むう。あなた、きっと敏感なのね。では優しくペロペロしてみましょう」

 ペチャペチャと舌を鳴らして舐めあげていく。

「あっ、うっ、うふっ……も、もう駄目」

「あ♪ 立った立った、乳首が立った」

「んはっ。……どこかの古典小説みたいなこと言わないでください。うう、恥ずかしい」

 片側の乳首だけそそり勃った。真っ赤な色なので、白い肌に余計に目立った。

「あらら。もう縮んできた」

「お嬢様もう満足されましたよね」

「ええ。右も吸おうと思ったけど、疲れちゃった。でも、セルクス相手なら、すぐにビンビンになるんじゃない」

「……!」

「すぐ顔に出るんだから、可愛い。そのセルクスのことだけど」

「もぅ。……はい何でしょうか」

「あの件は、お兄様が一方的に取り決めたそうよ」

「婚姻でしたら、セルクス様の意思は」

「『様』づけはおかしいわね。人形なんだし。そう、人形だから一方的に決めて良いってわけよ」

「そんな、横暴では」

「だって、意思があるとは思えないわよ」

「でも、私と出会った時はまるで人と同じような心を持っていた気がします」

「心? 気のせいじゃないの」

「そんなはずは無いと思います」

「本当なのかしら? じゃあ明日、学校の図書館にトゥルマレディの本借りてくるわ。なにか分かるかも」

「そんな、勿体無い」

「いいのよ、タダだし。あっ」

「どうされましたか」

「あれ、持ち出し禁止だわ。どうしましょう……」しばらく腕を組んで考えて「ねぇ、お屋敷出ることは出来ない?」

「ええ。明日は私が買い出し当番ですから」

「じゃあちょうどいいわね。私の学校わかるわよね」

「はい。王立第一中等部ですよね」

「そうそう。司書官に言っておくから、学校来てよ」

「仰せのままに、お嬢様」

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