第29話 高鳴り、1


 久しぶりに一日ぶんの授業を終え、紗矢は気だるさのこもったため息を吐いた。 そして肩越しに後ろを見て小さく肩を落とす。珪介の机に彼がいないのだ。


 授業が始まる前は確かに座っていた。しかし授業開始から五分ほど経った頃、プリントを後ろの席へ渡す際、ちらりと目を向けた時にはもう、彼の姿はなかったのだ。

 置き去りにされた不安感に襲われると、ベランダの手すりへランスが舞い降りてきた。しばらく辺りをキョロキョロ見回したり毛繕いをしていたのだが……授業が終わった瞬間、大空へと舞い上がっていってしまったのだ。


(どうしよう。ここにいた方が良いのかな。それとも修治君のクラスに行った方が良いのかな)


 一人っきりは、不安だった。

 窓の外……あの校舎裏にあるビオトープから、嫌な気配が自分に向かって忍び寄ってきているように思えて、気が気でないのだ。

 昼休みに起きた憲二のこともある。今ここでまた何かに襲われたら、自分では対処が出来ない。


 紗矢の思考に割り込むように、ガタガタっと窓ガラスの揺れる音がした。一気に背筋が寒くなる。

 恐る恐るそちらに目を向けたが、特に変わった変化は見受けられなかった。

 ほっと息を吐き鞄を掴み取った瞬間、何かがベタリと窓ガラスに触れた。その音を耳で拾い、紗矢は身を竦める。

 窓の向こう側から黒い手が押しつけられていた。室内を覗き込もうとしているかのように、窓枠の下部から黒い影が盛り上がっていく。

 鞄を抱き締め、椅子から立ち上がった時、横からすっと細い手が伸びてきた。バチッと弾け飛ぶような音が鳴り響き、窓の向こうにいた異形が、黒い影を揺らめかせながらゆっくり姿を消した。

 慌てて振り返れば、いつの間にか紗矢の横に立っていた舞が囁きかけてきた。


「それなりに力を持った異形は、怪我をしてる人間に取り憑くことが出来るの。そして取り憑いた人間の力を利用して、私達を喰らおうとする。しばらく憲二には要注意ね」


 ふいにビオトープで珪介に助けてもらった時、彼に「力で弾き飛ばせ」と言われたことを、紗矢は思い出した。

 この電気がショートするような音にも聞き覚えもあった。異形の獣に襲われたときに、知らずに自分は弾き飛ばしていたのだ。

 こういう事かと納得は出来たが、しかし、どうすればそれが出来るのかと改めて考えても、よく分からなかった。

 紗矢が「すごい」と感心し言葉にすれば、舞がふふっと優しげに笑った。


「あれくらいだったら私でも何とか太刀打ち出来るけど、もっと強くなっちゃうと無理。修治に助けを乞うのもちょっと癪だけど、最後は頼りにするしかないのよね」


 舞が肩越しに後ろを見た。戸口には腕を組み高みの見物でもしているような修治と、寄り添い立つ祐治と唯がいた。

 やっと紗矢の心が落ち着きを取り戻していく。もう一人ではない。


「あれ? 珪介は?」


 抜け殻のような席を見ながら、舞がポツリと呟いた。紗矢はつい頬を膨らませてしまう。


「知らない。気付いたらいなくなってた」


「……そっか。じゃあとりあえず、今日は紗矢ちゃんも一緒に部活行こう」


 そう言って舞は歩き出す。紗矢もしっかりと鞄の持ち手を握り直し、舞の後を追った。



 昼休み、図書館の自習室内でご飯を食べながら、これからのことをみんなで話し合った。

 これからというのは、主に帰宅時についてのことだ。行き同様、帰宅時も行動を共にするということは一致した意見なのだが、問題は修治と舞がバスケットボール部に所属しているというところにあった。

 部活動に紗矢もマネージャーとして一緒に参加してしまうか。それとも、部活動が終わるまでどこかで待機しているか。それとも修治と舞が共に部活を辞め、さっさと帰宅の途につくか。

 紗矢がマネージャーになれば、珪介も入部することになるので、運動神経の良い珪介を仲間に引き込むべく、修治は紗矢がマネージャーとして参加することに一票を投じた。

 しかし珪介は越河の仕事も抱えているため、部活動をすると身軽に動けなくなるから嫌だと、俺はさっさと帰りたいと主張する。

 そして舞は、どちらでも良い、紗矢の意見に従うと言った。

 珪介と修治も自分の意見だけ述べた後は、紗矢の選択に任せるというスタンスになってしまい、そこで昼ご飯がお開きになったのだ。



 紗矢は舞の隣に並ぶと、周りを気にしながらこそっと囁きかけた。


「あのね……昼間話してたことなんだけど、私が加わったせいで舞ちゃんたちが部活を辞めなくちゃいけないのは、やっぱり嫌なの」


 どうすればみんなの望むような選択が出来るのだろうかと、紗矢は午後の授業中そればかりを考えていた。


「でも、私も一緒にマネージャーやるって言ったら、珪介君の負担になっちゃいそうだし……あのさ、珪介くんの越河の仕事って何? すぐに帰った方が都合が良いのかな?」


「部活動で縛られると、動きたいときに自由に動けなくなるから、不都合なんだと思う」


 ぴったりと寄り添う祐治と唯の間に、修治が無理やり割り込もうとしているのを半笑いで眺めながら、舞は話し続けた。


「珪介は私達のように力のある子を見つけ出し、鳥獣に引き合わせる。そこで刻印を受ければ越河家に迎え入れるけど……刻印をされなければ、彼女の中にある力を上手く喰らい尽くし、力なのない状態になるまでちゃんと保護する。それが珪介の仕事」


「……そうなんだ」


「でも本当は珪介だけじゃなくて、修治と祐治の仕事でもあるんだよ。蒼一さんは違う仕事を任されてるからやらないけど」


 唯が嫌がって修治を突き飛ばしたことに吹き出し笑いをしたのち、舞は紗矢に顔を向けた。


「修治が言うには、刻印無しの子の力を喰らうってすごく難しいんだって。アイツ、昔失敗して一週間くらい寝込ませちゃったことあるし……それに祐治は唯が焼きもちやくから、やりたがらなくて……二人は珪介に任せっきり」


 舞は顎に手を添えて、考え出した。


「確か……今は若葉ちゃんが仕事相手みたいだよ。知ってる? 隣のクラスの」


「し、知ってる」


 やっと自分の中の疑問が繋がった。心がきゅっと重苦しくなるのを感じながら、紗矢は歯切れ悪く舞に問いかけた。


「あのね私、若葉と一年の時同じクラスで仲良かったんだけど……二年生になってから、若葉が怯えたように私を見るようになって……それって、この力が関係してるの?」


 そう言いながら、若葉だけでなく、峰岸家で竹内琴美からも怯えた目を向けられたことを思い出した。


「うん。それが原因だから気にしない方が良いよ。刻印受けなければ関係は戻るし」


「そうなの?」


「力が現れるのって突然だったりするから、へこむよね。私もそういうこと、昔あったよ」


 紗矢は舞の寂しそうな顔を見て、思わず彼女の細い腕をきゅっと掴んだ。舞はハッとし、笑顔を取り戻す。


「大丈夫、昔の話だから。自分より強い力を持っている女性を見て、気圧されちゃうのは理解出来るし……それに紗矢ちゃんは別格だから、私も怖かったよ。刻印を持つほどじゃない子なら尚更だと思う」


「えっ!? そんな風に感じたことなかったよ」


 舞から怯えたような態度を取られた覚えはなかった。驚きの声を上げれば舞が苦笑する。


「それは紗矢ちゃんの力が柔らかく感じたから……何て言うか、私に危害を加えようとか考えてないのが伝わってくるから、萎縮しすぎることもなかったし、警戒もしなかった」


「危害だなんて、そんな」


「紗矢ちゃんも気を付けると良いよ。私たちは色々と狙われやすいから。異形の獣もそうだし、他の五家の男、それから刻印持ちの女……私は負けん気が強いから、余計かもしれないけどね」


 呆気にとられている紗矢に穏やかな笑みを向けてから、舞は自分の靴箱へと向かっていった。紗矢も靴に履き替えるべく、自分の靴箱へと向かう。

 珪介といい、舞といい、いったいどんな幼少時代を送ってきたのだろうかと、紗矢は表情を曇らせた。

 今まで怯えることのない生活を続けてこられたのは、祖母のおかげだろう。紗矢は彼女の大きさを改めて実感していた。

 まだ生きていてくれたら、どれほど心強かっただろうか。自分は祖母から学ぶことが沢山あったはずだとも考えれば、どうして全てを隠したまま逝ってしまったのかと口惜しくなる。

 紗矢は外に出て空を見上げた。雲が風に押し流されていく。


「おい、片月ー! 行くぞー」


 紗矢は修治の声に「はーい」返事をし、祖母への思いを心の底へ押し込めるように表情を引き締め、再び歩き出した。



 バスケ部が活動している体育館は、図書館の隣に建てられている。

 部室に向かう修治と舞と途中で別れ、紗矢が祐治と唯の後に続いたとき、唯がくるりと踵を返し紗矢の腕に絡みついてきた。


「私、応援しますから」


「え?」


 何の事かと目を瞬かせれば、唯が可愛らしく笑う。


「紗矢さんは珪介さんがお気に入りなんでしょ?」


 咄嗟に祐治を見れば「すみません。唯ちゃんには隠し事出来なくて」と祐治が申し訳なさそうな顔をした。


「大丈夫です。珪介さんが動かない限り、私も黙ってます」


 唯は自分の唇に人差し指を押し当てた。紗矢が難しい顔をすれば、祐治が苦笑する。


「あの……動くって、どういうこと?」


「珪介兄さんが、蒼一兄さんを越えて、紗矢さんの隣に立とうとするってことですよ」


 紗矢が目を見開けば、祐治がおかしそうに笑う。


「アレです。前に僕が言った、好きな女を取られるくらいなら、やってやりますってやつです」


「す、好きって……そんなまさか」


 紗矢が顔を強ばらせ、信じられないと首を振れば、祐治の笑みが寂しそうに消えていく。


「その様子だと、珪介兄さんはまだその気になってないみたいですね。やっぱり珪介兄さんは一筋縄じゃいかないか、修治兄さんと違って」


「あの時、蒼一さんも居合わせてくれたら良かったのにね。そしたら珪介さんが紗矢さんを想ってることが伝わってきたのに」


 祐治の悲しそうな声に続いて、唯が切なげなため息をついた。


「紗矢さんが刻印を受けたあの日、学校から帰ってきた時、いつもクールな珪介兄さんがすごく熱くなってて、僕たちは騒然としたんですよ」


 体育館の前に辿り着き、祐治は足を止める。つられて唯と紗矢も足を止めた。


「片月紗矢はまだ刻印を受けてないって、アイツが望んでるのは峰岸じゃない越河だって声を荒げて」


 唯が思い返すようにコクコクと頷いた。聞かされる情報に紗矢の頭は混乱していく。何も考えられなくなっていく。


「あんなに感情を露わにしてる珪介さん、私初めて見ました」


「僕もだよ……母親が亡くなったときだって、皆の前では涙どころか表情一つ変えなかったのに」


 祐治の言葉が、容赦なく紗矢の心を締め付ける。


『せいぜい神様に祈っておくと良いよ。紗矢ちゃんが自分の母親と同じ目に遭いませんようにってね』


 卓人の笑みと言葉が脳裏を過ぎり、思わず胸元に下げている石たちを服の上から手の平で抑えつけた。


「けれど僕たちは、紗矢さんが越河を望んでるってことが信じられなくて。即座に次の行動へ移れなかったんです」


 申し訳なさそうに祐治が打ち明ければ、唯が続きを引き継いだ。


「ランスも珪介さんも怪我をしてる様子なのに、みんなが動かないなら俺一人で行くって言い出して……その時、紗矢さんのお母さんから忠実さんの携帯に連絡が入ったんです。峰岸が紗矢さんを連れて行こうとしてるとか、異形の獣に襲われてるって状況を聞いて」


「そこでやっとみんな、実感が沸いてきたというか……」


 自宅で異形に襲われたとき、母が誰かと電話で話しをしていたのを思い出し、紗矢は小さく頷き返した。


「忠実さんのあの性格が、重要な場面でまさか役に立つなんて思わなかったよね」


 唯が祐治に笑いかければ、祐治が複雑な顔をする。


「そうだよね……忠実さんはマツノさんの葬式に参列してたみたいで、その時紗矢さんのお母さんに何か困ったことがあったら連絡下さいって連絡先を渡してたんです」


 紗矢は目を丸くする。忠実が参列者の中にいたかどうかなど覚えていない。祖母の葬儀は涙を堪えるので必死だったから余計だ。


「こんなこともあろうかと思って番号を教えといた、なんて言ってましたけど……紗矢さんのお母さんが可愛かったからいつもの癖で渡してしまったと、あとで白状しましたよ」


 紗矢はそれを聞いて、苦々しく「そ、そうなんだ」と相づちを打った。


「情けないですけど、蒼一兄さんもいないのに、僕たち三人だけで峰岸家に乗り込むのは不安だって言ったら、珪介兄さんは例え死んでも諦めるよりはマシだって」


「普段は我関せずを貫いてる珪介さんがそんなこと言うから、その場にいた舞姉さんと忠実さんも……修治さん以外は、ピンときたと思います。紗矢さんのこと大事なんだなって」


 唯に笑顔と共にそうハッキリ言われ、紗矢は完全に何も言えなくなってしまった。頬が熱くなっていくのをただ感じながら、視線を足下へと落としていった。


「なるほどねぇ」


 突然、自分たちとは別の声音が話に割り込んできた。

 紗矢は勢いよく声のした方へと顔を向ける。体育館の壁にもたれかかる格好で、一人の男性が立っていた。眼鏡を掛けたその男に見覚えはないが、彼の胸元にある校章の色から三年生である事や、その身の内に鳥獣の力を宿している事は分かった。


「せ、瀬谷さん。いつからそこにいたんですか!?」


「いつからって……最初からかな。図書館に珪介もいるようだし、ここで待ってたら姫様が来るかなと思って待ち伏せしてみた」


 祐治が焦った様子で、紗矢と瀬谷篤彦の間に割って入れば、すぐに篤彦は他意は無いというように両手を広げてみせた。


「祐治くん、そんな恐い顔しないでよ。俺は瀬谷の次期当主として、求慈の姫に挨拶したいだけなんだから」


「……瀬谷?」


 紗矢が震えるように呟けば、篤彦はにっこりと笑いかけてきた。


「はい。五家のひとつに名を連ねさせてもらっています。瀬谷篤彦と言います。お見知りおきを」


 篤彦はそう言いながら紗矢の前に出ようとしたが、祐治に腕を掴まれ足を止めることを余儀なくされる。


「そんなに警戒しないでって。俺は越河を敵に回すほど愚かじゃない」


 篤彦に笑われて、祐治はむっとする。


「警戒するなっていわれても、しますよ」


「見てごらんよ。珪介は明らかに俺が片月紗矢に接近したことに気付いてる。ここで求慈の姫に危害を加えようとしたら、直ぐさまあの鋭い嘴で貫かれちゃうって」


 篤彦の視線の先――図書館の屋根の上には、ランスがいた。ランスは篤彦をじっと見据えながら、狙い澄ますように体勢を低くする。


「でも一応、聞くだけ聞いておこうかな……姫様、どうですか? 越河は」


 ジャリッと靴が砂を噛んだ音が聞こえ、紗矢は総毛立った。


「もし居心地が悪いようでしたら、瀬谷が歓迎しますよ」


 瀬谷篤彦が紗矢の手を掴み、甲に口づけをするように持ち上げていく。


「いやっ!」


 嫌悪感が体を駆け上り、紗矢が声を荒げた瞬間、弾けるような音が鳴り響いた。紗矢の力が篤彦の唇を拒絶したのだ。


「……っ」


 勢いよく篤彦は紗矢の手から顔を離し、そしてすぐに己の手も離した。

 突風の如く舞い降りてきたランスの嘴が、篤彦の手を掠めていった。よろけるように大きく後退したあと、篤彦はくっと笑みを浮かべ、眼鏡を指先で押し上げた。


「だから、試しに言っだけだって」


 篤彦の首元に刃が突き付けられている。


「次期当主なら、言動に責任くらい持て」


 絶対零度の瞳で睨み付けながら、篤彦の斜め後ろに珪介が立っていた。

 ランスはバサリと羽音を鳴らし、滑るように紗矢の前へと舞い降りると、篤彦に向かって唸り声をあげた。


「それにしても驚いたよ。珪介が発端になって、姫様を奪いにかかったんだってね」


「誰に聞いた」


 珪介が眉根を寄せると、篤彦は躊躇いもなく言葉を続けた。


「目の前の二人」


 直ぐさま祐治と唯は珪介から視線をそらした。


「まぁ、そこは意外だったけど……でも……俺も珪介が本気だったってことは分かってたけどね」


 自分の言葉で珪介の刃先がぴくりと揺れ動いたことに、篤彦は笑みを浮かべた。


「今まで絶対に刻印持ちを喰らわなかったのに、確実に奪いたいがために珪介は喰らった、よね?」


 祐治から「えっ」と声が上がり、珪介の手に力がこもった。


「姫様が刻印を受けてからしばらく、珪介の力は漲ってた。刻印持ちを喰らわなくちゃ、あの力は保てない……君は必死に隠してたみたいだけど俺は気付くよ? 君たち兄弟と峰岸卓人はしっかり観察させてもらってるからね」


 自分の言ってることが間違っていないと確信したように、篤彦の口調は強気になっていく。


「しかもここ最近、姫さんも喰らってるでしょ? ランスのあの目を瞠るような成長ぶり。珪介はやっと粗食を返上して越河次期当主に――くっ」


「黙れ」


 首筋に刃を押しつけられ、篤彦は言い留まった。

 降参するように篤彦がゆっくりと両手を挙げ数秒後、やっと珪介は刃を下ろした。篤彦はほっと息を吐き出し、苦笑いしながら紗矢に体を向ける。


「お騒がせして、すみませんでした……あの、瀬谷はこれから惜しみなく越河に力を貸す所存です。なにとぞ、よろしくお願い致します」


 最後に深く頭を下げてから、篤彦は紗矢にニコリと笑いかけ、そして珪介の肩をポンッと叩き、その場から立ち去っていった。

 珪介が大きくため息を吐きながら刀を鞘におさめれば、祐治が走り寄っていく。


「すみません、珪介兄さん」


「いや、これくらいどうってことないけど……修治のヤツ、遅い」


 部室の方に目を向け、珪介は顔をしかめた。


「もういい、紗矢は連れてく。図書館にいるから、部活が終わったらお前が来いって修治に言っといて」


「あ、でも……仕事は」


「さっさと片付けた。問題ない」


 なんてことない様子で珪介に返答され、祐治は頷き返した。


「分かりました。僕たちも修治兄さんに伝えたら、図書館に行きますから」


「あぁ」


 珪介は踵を返し、そしてちらりと紗矢を見た。


「行くぞ」


「う、うん」


 紗矢は気恥ずかしさを感じながらも、大人しく珪介を追いかけた。








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