第12話 制度・政策を分類できる

(文明論の効用 その7)


 文明論によれば、制度・政策が経済・社会活動を健全に保つにあたっても、他の文明要素との関係から、4つの経路ルートがあることが分かります。


 第一は、〝直接ルート〟です。経済・社会活動に直接働きかけて健全性を保つ、経済・社会政策です。産業振興・財政政策や社会保障(保険と福祉)・労働政策などの経済・社会政策が、これにあたります。治安・司法政策などもこれにあたりましょう。


 第二は、〝間接ルート〟です。制度・政策の実現に必要な条件を確保するための、人的資源政策です。教育(公教育)・保健(公衆衛生)政策などがこれにあたります。保健は保険とまぎらわしいですが、保健は心身の健康を保つため、保険は病気や失業・高齢など、いざという時のためにお金を出し合って備えるための、政策分野です。


 第三は、政策と技術が助け合う〝互助ルート〟です。科学・技術が経済・社会活動を豊かにする過程に働きかける技術的政策、いわゆる『ハード的な政策』です。先進的な研究・開発などは国レベルでないと困難なこともありますが、地域における統計情報の収集や分析は、市区町村でも行えます。周辺技術を用いた物的資源の整備に関わるインフラ政策や、社会に大きな影響を及ぼす主力技術について、社会全体で副作用や悪用・誤用を防ぎ、活用する、資源・環境、防災・防犯など社会工学的な政策も、重要な分野です。


 第四は、政策が自らを助ける〝自助ルート〟です。企画・総務・財務などの内部管理政策、あるいは行政管理政策がこれにあたると思います。


 制度・政策の立案も、広い意味では経済・社会活動に含まれるので、前三者のどれかに切り分けることもできます。しかし、こちらも伝統的に一つの分野を形成し、また最近では行政の役割拡大と分権化のなかで、より多くの人々が行政に参画していく必要があることから、ひとつの分野として考える意味があると思います。


 以上の分類はあくまでも理論的なものであり、実務上は重なるところもあります。第一と第三に政策的な治安と技術的な防犯、第一と第四に財政と会計が分かれて入っていたりします。第一の社会政策と第二の保健政策は密接に関係するので保健福祉政策としてまとめられることがあったり、学校改築やICT教育も第二と第三にまたがっていたりします。


 しかし、『技術が発達していく中で、社会を健全に保つ必要から分業化された活動が制度・政策であり、それには社会の中で資金を調達して必要な規制や支援を行ったり、政策を考え、支え、受けて活かせる人材を育てたり、技術の適正な開発・利用を促したりする経路ルートがある』という考え方は、文明全体の発展を考えていくのに合理的で、有効であろうと思います。

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