第56話 魔王「トイチの利息?」

姫「ふんふん~ふ~ん♪」

商人「ご機嫌で御座いますね」

姫「当たり前じゃ…もうすぐこの城と観光業をやろうとしている土地はわらわの物になるのじゃろ?」

商人「左様でございます」

姫「莫大な金のなる木が手に入るのだぞ? これが浮かれずにいられるか」

商人「ふふ…しかしどこで誰が聞いているか分かりません」

商人「過激なお言葉をお気をつけを…」

メイド(…私がいるんだけどな)

姫「構わぬ」

メイド(あ、構わないんだ)

姫「大臣も少し利益を回すことで、魔界に関する事はわらわに任せる事を了承させたしな」

姫「後は魔族だが…紙の上の話なら完全にカタに嵌めているのだろう?」

商人「それはもう…」

商人「魔王と言っても所詮は子供、こちらはちゃんと全部説明したのに、喜んで契約に応じてましたよ」

商人「あの酷い内容の契約書にね…」

姫「ならば後は魔族どもの暴走だけが心配だが…その点も大丈夫なのであろう?」

姫「女勇者の力を必要としなくてもな?」

商人「はい…代わりの方は大丈夫です」

商人「女勇者より強く調整してありますので」

メイド「…!」

姫「ならば何を恐れる必要も無かろう…」

商人「で、御座いましたね…くく」

メイド(女勇者さんより強い…? 一体誰なんだろう」

ドア「コンコン」

姫「む…」

魔王「ど、どうもお待たせしました」

商人「いやあ、ご足労ありがとうございます魔王様…」

女勇者「…」

神官妹「…」

神官姉「…」

商人「はて…貴女方は呼んだ記憶ありませんが…これはどう言う事ですかな? 参謀殿」

参謀「申し訳ありません…皆さん来ると言って聞かない物で」

魔王「す、すみません女勇者さんたちには魔界観光業に色々協力してもらってるので」

魔王「一応無関係じゃありませんので、魔界観光業の話なら同席させても良いですか?」

商人(…まさかこいつら魔王に要らぬ入れ知恵させたか…?)

商人(まあ、もはやこいつらが何を騒ごうとも…問題は無いと思うが…)

商人(一応、安全を取って追い払うか…)

商人「すみません魔王様…私一人なら構わなかったのですが本日は姫の御前」

商人「元から約束の無かった者はご遠慮して貰えませんでしょうか?」

魔王「え?」

神官妹「ここは魔王様の城でしょう? 決めるのは魔王様であって、貴方でも姫様でもございませんわ」

商人「…! 国賓が来てるのですよ? 貴女方無関係な者は遠慮して然るべきかと思いますが?」

女勇者「無関係とは挨拶だな」

神官妹「私たちはかつて魔王を倒した勇者のパーティー、救国の英雄なのですよ?」

神官妹「その力で救われた国の姫様が、まさかその私たちを蔑ろにはしないと思いますが…?」

神官妹「いかがでございますか? 姫様」

神官姉「うん…うん!」コクコク。

姫「…」チラ。

商人「お前らいい加減にしろ…姫様に不敬だぞっ!」

姫「構わぬ」

商人「は?」

姫「常に生活に苦しむ民の事を思って胸を痛めておる良き君主であるわらわが、救国の英雄を蔑ろなどと、する訳があるまい」

姫「苦しゅうないぞ、遠慮せず話を聞いていくがよい」

商人「…」

神官妹「それでは遠慮なく…」

女勇者「…」

神官姉「…」

魔王(何でこんな緊迫した雰囲気になってるんだろう…)

神官妹「それで…今日は一体どう言うお話に?」

姫「ほほほ、それは流石に魔王から切り出させないと失礼であろう?」

姫「負けた国のとは言え、一応王なのだから…」

神官妹「…それもそうですね、では魔王様お願いします」

姫「…ぷ」

神官妹「…何か?」

姫「いや仮にもそなたらは王国の者であろう…しかも勇者の一行…」

姫「そんなそなたらが、魔王に様を付けてそちら側にいるこの状況が面白くてな、ほほほ…」

神官妹「…王に礼儀を尽くしてるだけですよ」

神官妹「なのであっちもそっちもありません。あくまで私たちは王国に忠誠を誓った王国の側の人間です」

姫「王国のどの人間に忠誠を誓っているか分からないがの…」

神官妹「…」

姫「…」

姫「ふ…本気にするな、冗談じゃ真に受けるな」

神官妹「分かっています」

魔王「あ、あの…」

神官妹「…」

神官妹「失礼しました魔王様…話の続きをどうぞ」ニコ

魔王「あ、はい…」

魔王「えーと…」

姫「ふむ…」ジー。

魔王「え?」

姫「ほお…」ジロジロ。

魔王「え? え?」

魔王「あ、あの何か?」

姫「本当に子供の魔王なのじゃの!」

魔王「へ?」

姫「話には聞いていたが…本当に子供に魔王やらせるとは…大臣もあからさまの事をするのう」

魔王「た、頼りなくてすみません」ペコ。

姫「! あっはっはっは」パンパン。

魔王「え? ど、どうしました?」

姫「に、人間に頭を下げるとか、お前は本当に魔族か? そんな魔族見た事無いぞ」

魔王「え、いや…魔族らしくなくてすみません…」

姫「…! あっはっはっは! お、お前…わらわを笑い死にさせる気か…」

魔王「…;」

姫「くく…全く、頭に生えてる角が無いと本当にただの子供と見分けがつかんな…」

姫「うむ…一度直にあって正解じゃったわ、こんなに楽しかったのは久しぶりじゃ」

姫「そうであろう商人?」

商人「全くでごさいますね」

魔王「あ、あの…話は?」

姫「まあ座興はここら辺にしておくか…もうすぐ魔界観光業を始められると聞いてな」

姫「今日は出資した者として、その視察なような物に来たと言う感じじゃ」

魔王「視察?」

参謀「お金を貸した物として、ちゃんとお金を返せる物に出来ているか調べに来たのですよ」

魔王「なるほど…ならまだ出来るのは先の話ですが…一応一部だけ完成した場所もあるので見ていきますか?」

姫「まあ一部しか出来てないだろうな…」

魔王「え?」

姫「いやこちらの話じゃ」

魔王「?」

姫「それでじゃがとりあえず見るのは良い」

魔王「? それじゃ何をしに来たのですか?」

姫「今日は貸した金の返済についての話に来たのだ」

魔王「はい借りた分はきちんとお返しします!」

姫「うむ良い心がけじゃ…じゃあこの契約書通り払って貰うが…」

神官妹「…! ちょっとその契約書見せて貰って良いですか?」

姫「…わらわは魔王に見せると言ってるのだぞ」

神官妹「魔王様私にも見せてください。良いですよね?」

魔王「え、ええまあ」

神官妹「許可は頂きました」

姫「む…」チラ。

商人「…」

商人「見せても構いませんが、その契約書の内容は一切覆しませんよ」

神官妹「安心して下さい、私たちは覆す気はありませんので」

商人「…」コク。

姫「…」コク。

姫「ほれ」

神官妹「失礼します…」

神官妹「…!」

神官妹「これ利息がトイチ(10日で一割)になってますが…」

商人「そうですが何か問題でも?」

神官妹「…魔王様」

魔王「はい?」

神官妹「トイチの意味分かってます?」

魔王「はい! お金を返せば良いんですよね?」

商人「私はちゃんと説明しましたよ」

神官妹「あー良いから、そこら辺は良いから黙ってて」

商人「…?」

神官妹(余計な事言うな馬鹿商人が…!)

神官妹(魔王が騙されたって感じてショックを受けて邪神が復活したらどうするのよ!)

神官妹(まーこいつらにそんな事言っても分からないだろうけど…)

神官妹(しかしこの手の話を、大人の汚さを対象者に知られず解決するのって難しいわね…)

神官妹(さらに10日までにこの莫大な金額のトイチの利息を払わないと…担保は取り上げ…)

神官妹(…はっきり言って絶望的だわ)

神官妹(と言うか契約内容自体、最初から担保を取り上げるための物になってるわね)

神官妹(言うまでも無いかもだけど)

神官妹(たく…参謀は同席してなかったの?)

神官妹(こう言うのを助言して止めるのが参謀でしょ…一体何をやっているのかしら…)チラ

参謀「…!」

参謀「…」ニコ。

神官妹(呑気に笑ってんじゃないわよ…!)

神官妹「はあ…」

神官妹「貴方たちの条件は分かりました…この利息を10日までに払えば良いのね」

姫「ああ…払えればな、だだ払えなければ…」

神官妹「あーすみませんそこら辺は判っているので良いです」

姫「何?」

神官妹「最後に質問なのですが…利息を下げる気はありませんよね?」

姫「…無論じゃ」

神官妹「そうですか…」

姫 (なんじゃこいつ、やけにあっさりしてるのう…)

商人(諦めた…?)

神官妹「では10日までに指定された金額は用意致しますので、その時にまたお会いしましょう」

姫「何っ!?」

商人「!」

神官妹「お話は終わりました、行きましょう魔王様」

女勇者「え? 終わり?」

魔王「え、僕何も話して無いんですが…」

神官妹「いいから…!」

魔王「は、はあ…」

姫「…」

姫「ちっ…」

姫(神官妹め…何を考えている…強がりか…それとも)

神官妹(普通ならこの馬鹿みたいな利息を、10日まで用意するのはほぼ不可能だけど)

神官妹(まだ…打てる手はある…!)

神官妹(邪神を復活させないって理由もあるけど…)

神官妹(ここは私が作った場所なのよ)

神官妹(後から来た、貴方たち何かに奪わせないわ…!)

神官妹(どんな手を使ってでも守りとおして見せるわ!)


続く

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