第46話 魔王「魔法使いさんの授業?」

魔王「…」

魔王「ん…ここは」

魔法使い「気づいたか?」

魔王「…! 魔法使いさん」

魔王「こ、ここはどこですか…?」

魔法使い「ここはエルフの村で捕らえた者を閉じ込めて置くのに使っている部屋だ」

魔法使い「まあ…牢屋みたい物だな」

魔王「牢屋なのに、ベッドや布団などちゃんと完備してあるんですね…」

魔法使い「元々エルフは外界とはあまり接触しないし、仲間から罪人が出ることも少ないし、だいたい追放するからな」

魔法使い「罪を犯したら牢屋に閉じ込めて置く、と言う人間や魔族にはある文化に疎いのだ」

魔王「す、凄いですね…それは」

魔法使い「そうか? まあ他を騙し騙されたりが常のお前らから信じがたい事だろうがな」

魔王「はい! 驚きです…魔界もいつかそんな牢屋なんて必要が無い、そんな良い魔族ばかりの国にしたいです」

魔法使い「良い魔族…?」

魔王(あ…いけない、魔法使いさんは魔族は全員悪人だと思ってるから、そんな事言ったら、また良い魔族のふりするなって怒られるかも…)

魔法使い「良い魔族のフリをするな」

魔王「…」ビク

魔法使い「と言いたいところだが、不思議だな…お前と話していると、本気で言っているようにも思える」

魔法使い「見た目が子供だからか…まあそれで演技なら本当に大した物だが」

魔法使い「あながち魔王と言う言葉も本当の事かも知れんな」

魔王「はは(本当なんだけど…また怒らせるかもだから余計な事は言わないようにしておこう)」

魔法使い「もしも本当に前魔王の息子なら寝ている間に殺してたしな」

魔王(言わなくてよかった~;)

魔法使い「ところで私の魔法を耐えられたらと言う勝負だが」

魔王「あ…」

魔法使い「どうやら私の勝ちのようだな」

魔王「はい…」

魔王「そ、そう言えば子供たちはっ!?」

魔法使い「安心しろここと同じような部屋にいてもらっている」

魔王「そ、そうですか、ほっ」

魔法使い「それより」

魔王「はい?」

魔法使い「私が勝負に勝った際の賞品を決めて無かったが…」

魔王「…! 賞品…い、一体何を…」

魔法使い「そう構えるな…何も取って食おうと言う訳ではない」

魔王「は、はい」

魔法使い「賞品は…そうだな…ふむ」

魔王「…」ドキドキ

魔法使い「お前たちにはしばらくエルフの村で暮らしてもらう」

魔王「エルフの村で暮らす?」

魔法使い「そうだ魔族を滅ぼすための人質として使う日まで、ここで大人しく逗留してもらう」

魔法使い「厳しい拘束をするつもりは無いが、村を出たら分かる魔法をかけさせてもらう」

魔法使い「それでもしも自らの意志で村を出たと分かったら、残念だがそいつには死んでもらう」

魔王「死ぬ…!?」

魔法使い「だから慌てるなと言っている」

魔法使い「禁を破らなければ…何もしない、そこは自称でも魔王を名乗っているのだから、そうさせないようにお前がまとめれば良いだろう」

魔王「は、はあ…」

魔王「分かりました…でもエルフの村で暮らしているだけで良いんですか?」

魔法使い「勿論、滞在中は他にもやってもらう事がある」

魔王「え? それは一体…?」

魔法使い「ふ…それは」


~村の勉強部屋~


魔法使い「お前たちにはこれからエルフの歴史と道徳を勉強してもらう」

魔王「え…やってもらう事ってそれですか?」

魔法使い「そうだ」

魔族子供1「ふざけんなクソエルフ! 誰がそんな事を…」

魔法使い「先生と言え」ピシャッ

魔族子供1「いってぇーっ!?」

魔王「あ、あの魔法使いさん」

魔法使い「先生」

魔王「せ、先生、あのこの勉強をする事に何の意味が…」

魔法使い「我々エルフは寛大で慈悲深い種族だ」

魔王「はい?」

魔族子供1「ちっどこがだよクソババア!」

魔法使い「…」ビシバシッ!!

魔族子供1「うぎゃーーっっ!」

魔法使い「なのでお前たち魔族の子供にはチャンスを与える事にした」

魔王「チャンス…?」

魔法使い「そうだ、ここでしっかりとした正しい道徳と魔族がいかにエルフに酷い事をしたかを学び」

魔法使い「魔族の行った過ちを素直に悪いと思える清い心に更正出来たなら、お前たち魔族の子供に限り殺さないようにしよう」

魔王「な、なるほど、そう言う事ですか」

魔族子供1「へんっ! どうせお前らは自分の良いように教える気だろ! そんな勉強するもんかっ!」

魔法使い「まあ、覚える気は無くても、授業には参加してくれればそれだけで良い」

魔法使い「その時間の中で、どう変わるかはお前次第だからな」

魔法使い「こっちは必ず覚えろ、と強制してやる訳では無い点だけは最初に伝えておく」

魔族子供1「へ、へっそうかよ…」

魔法使い「まあそれにそれで更正出来なければ…」

魔族子供1「で、出来なければ…?」

魔法使い「…」

魔法使い「授業を始める」

魔族子供1「最後まで言えよ!」

魔法使い「言ってください」ビシバシ!

魔族子供1「ぎゃーーーー!?!?」

魔王「はは…」

魔族子供1「何笑ってるんだよ腰抜け魔王!」

魔族子供1「お前あんなやつに良いようにされて魔王のプライドとか無いのかよっ!?」

魔王「え、いや…まあ別に良いんじゃ無いですかね?」

魔王「それにずっと寝てたから、どんな事があったか知りたいですし…僕は構わないかなって思いますが…」

魔族子供1「? 何だそれ…意味わかんね」

魔法使い「授業中は私語は厳禁だ」ビシバシ!

魔族子供1「ふぎゃーーー!!」

魔王「はは…」

魔族子供1「はは、じゃねーよ! 何で俺ばっか叩くんだよ。魔王だって喋ってたじゃないかっ!」

魔法使い「やる気がある者は叩かない」

魔族子供1「きったねー! 依怙贔屓!!」

魔法使い「まだ叩かれたいのか?」

魔族子供1「う…」

魔法使い「ふん…じゃあ授業を始める…最初は道徳の授業だ」

子供たち一同「はーい」

魔族子供1「ちっ!」

魔法使い「こほん…あるところに500才のエルフと50才のエルフがいた」

魔法使い「二人は魔物に襲われてた」

魔法使い「助けるならどっち?」

魔法使い「はい魔族子供1」

魔族子供1「お、俺!? 何で俺なんだよ!?」

魔法使い「早く答えろ…答えないと」ギラ。

魔族子供1「わ、分かった言うよ! 言うからもう叩くなよ」

魔族子供1「えーと…500才の方がババアだから、そっち助けた方が良いんじゃね?」

魔法使い「不正解」ビシ!

魔族子供1「いてっ! だから叩くなよっ!」

魔族子供1「てか何でだよ!?」

魔法使い「エルフで500才と言えば一般的に、ちょうど魔力が一番充実している年頃であり、さらに戦いの経験や技量も積んできている事から一番強い時期と言われている」

魔法使い「よってこの場合は助けはいらない」

魔族子供1「ババアの年頃が一番強いとか引っかけかよ! きったねー!」

魔法使い「ちなみに私は今年で512才だ」ビシバシっっ!

魔族子供1「いたー! 何で叩くんだよ!?」

魔法使い「うるさい」ビシバシ!!

魔族子供1「ふんぎゃーー!!」

魔法使い「じゃあ他にこの問題が分かる人はいるか?」

魔族子供♀「は、はい…」

魔法使い「じゃあ魔族子供♀」

魔族子供♀「えっと50才です」

魔法使い「正解、理由は?」

魔族子供♀「えっと50才はまだ子供…だから…子供は守らないといけないから…?」

魔法使い「正解、偉いぞ」なでなで

魔族子供♀「えへへ…///」

魔族っ子幼「すごーい魔族子供♀ちゃん!」

魔族子供1「おかしいだろっ!?」

魔王(…道徳?;)

魔法使い「次は歴史をやるぞ」

魔族子供1「へっどうせまた妙な歴史何だろ…」

魔法使い「…」ギロ

魔族子供1「マジ歴史知りたいわーすげー知りたいわーぱなく知りたいわー」

魔法使い「ふん…では魔族が妖精界に攻め込んできた時の事を教えてやる」

魔王「魔族が…」

魔法使い「そうだ…私はその時、その攻めこまれた村にいたからよく知っている…まあ生き証人と言う奴だな」

魔王「…!」

魔王(魔法使いさんは魔族が攻めてきた時そこにいた…だって?)

魔法使い「だから私には、お前らの親たちがどんなに残忍にエルフの村を襲ったのかを鮮明に教える事が出来る、心して聞くが良い」

魔王(魔族は一体どんな…酷い事をして、魔法使いさんを…エルフを襲ったのだろう…?)



続く

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