第37話 魔王「魔界観光業?」

魔王「戦後補償を払っても…下位魔族さんたちの生活を苦しくしない方法?」

商人「はい…その方法は…」チラ

魔王「どうしました?」

神官妹「…私たちはお邪魔のようね。行きましょう」

商人「おや…お気を使わせてしまったようで、申し訳ありません」

神官妹「いえいえ…」

女勇者「お、おい、良いのか?」

神官妹「ええ、行きましょう」

女勇者「あ、ああ」

神官妹(奴のバックに姫がついてるなら、私たちと同等の王室権限を持っている…)

神官妹(ならび、ここでごねても時間の無駄ね…)

神官妹(それよりここは一旦引いて、何とかあの商人を黙らせる対策を考えなきゃいけないわね)

神官妹「魔王様」

魔王「はい?」

神官妹「しばらく魔王城に滞在しようと思うので、お部屋をお借りしてもよろしいですか?」

魔王「あ、はい構いません…でもえーと」

神官妹「どうしました?」

魔王「そう言えば父が先代魔王をやってた時」

魔王「城内はあまり自由に行来させてもらえなかったので、どんな部屋があるのかあまり詳しくないんですよね…僕」

神官妹「え…自分の家なのに?;」

魔王「お恥ずかしい限りです」

メイド「私がご案内しましょうか?」

女勇者「メイド…」

魔王「あ、メイドさんじゃ無いですか! 何だかしばらくぶりです」

メイド「はい! 魔王様もお変わりなく」ペコ

女勇者「…!」

魔王「でもあれ? 大臣様と一緒では無かったのですか?」

メイド「下手に外に出ると、魔族の敗残兵に襲われるかもと言う事で、大臣様に城に残るように仰せつかりました」

魔王「そうだったんですか!」

メイド「はい!」ニコ

女勇者「…」

女勇者「お前ら…仲が良いのか?」

メイド「あ…女勇者…様…」

魔王「はい! 勇者さんと同じで、僕と初めて友達になってくれた人間さんです!」

メイド「え…女勇者様が?」

女勇者「メイドが…友…達…?」

メイド「あ…!」

女勇者「本当なのかメイド?」

メイド「えっと…は、はい…」

女勇者「…魔族とね…なるほど魔王の一番目の友達ってあんただったんだ、ふーん」

メイド「…」アセアセ

魔王「?」

メイド「そ、それよりお部屋にご案内します…魔王様、特等客室にお通しして構いませんか?」

魔王「えーとどんな部屋でしたっけ…」

魔王「ま、まあ勇者さんたちに失礼の無いように、城で一番良い部屋ならそこで」

メイド「この城では、たしか国賓に使ってもらう一番良い部屋と聞いておりますよ」

魔王「え? メイドさん、もうこの城の部屋はどんな部屋があるのか把握してるんですか?」

メイド「はい! お掃除してた時に色々聞いたりして覚えちゃいました」

魔王「す、凄いですね…住んでた僕ですら、城の構造の半分も覚えてないのに…」

メイド「お掃除するためには建物の構造を把握しないとダメですからね」

魔王「へー…それで覚えられるなんて凄いなー」

メイド「はい! 魔王様の玉座の後ろの隠し階段まで頭に入ってますよ!」

魔王「そんなところまで!?」

女勇者「あー…そろそろ部屋に案内してくんね? ちょっと疲れてきたから」

メイド「あ! す、すみません!」

メイド「こ、こちらです」

女勇者「…ふん」

魔王(何だろう? 心なしか女勇者さん不機嫌なような…)

ゾロゾロ(部屋を出ていく女勇者、神官妹、メイド)

魔王(何かメイドさんと話したら急にそうなったな…あの二人何かあるのかな?)

魔王 (…うーん)

商人「では魔王様…私がご提案するプランについてお話をお進めしましょうか」

魔王「あ、は、はい」

魔王(ま、まあそれは後でいいや!とりあえず商人さんの話を聞こう)

魔王「それでどう言った方法なのでしょうか?」

魔王「その…下位魔族さんの生活を苦しくさせない、貴方たちが用意したプランと言うのは…」

商人「はい、まず下位魔族の不満の一つに、魔石の採掘権譲渡によって起こる魔石不足による問題」

商人「働くための力…つまりエネルギーが不足してどうにもならない問題が起きていますよね?」

魔王「はい…僕が尽力すれば良いって思ってましたが、魔界全土となると、流石に無理で…」

魔王「考え方が流石に子供過ぎましたと反省しています」

商人(…? 尽力すれば良い?)

商人(一人で国民が使う魔力を補おうとしていたのか?)

商人(そんな事は、情報によれば前魔王の魔力を持っても無理だぞ…)

商人(ふふ…確かに子供が安易に考えそうな方法だな…見た目通りの子供と言う訳ですね)

魔王「商人さん?」

商人「あ、申し訳ない話を途中で止めてしまって…」

魔王「いえ商人さんも呆れられてますよね…当然です」

商人「そんな事はありませんよ、例え不可能な事だとしても、魔王様の優しさや頑張ろうとしている気持ちがよく分かりました。やはり貴方は素晴らしい魔王のようですね」

魔王「い、いえ///」

商人「では話の続けましょう」ニコ

魔王「はい!」

商人(危ない危ない、あまりに純粋過ぎてちょっと場に飲まれてしまいましたね)

商人(本当に魔王なのでしょうか?)

商人(分かってやっていれば、それなりの策士ですが…まあその心配は無いでしょう)

商人(気をつけるは、隣の参謀のみ…さて上手く行くかどうか…)

参謀「…」

商人「…それで魔石が枯渇して起こるエネルギー不足ですが…」

魔王「はい」

商人「我々は王国が魔界から引き上げた魔石を安く買うルートを確保しています」

魔王「はあ」

参謀「…」

商人「この仕入れた魔石を魔界に格安で魔王様にお譲りしようと我らは考えております」

魔王「格安で! 本当ですか!?」

商人「はい…値段にして、これくらいです」

魔王「はい…おお!」

商人「いかがですか?」

魔王「よく分かりません!」

商人「…!」ガク

魔王「参謀さん、ちょっと僕はこう言う値段には疎いので、安いかどうか教えて頂けますか?」

参謀「はい魔王様」

商人「…!」

商人(参謀…さてこの値段を見てどう思う…?)

商人(普通の奴なら、この値段を見た時点で安すぎて逆に怪しいと思う値段だが…)

参謀「そうですね…」

商人「…」

参謀「とてもお安くなってますよ、戦後補償を払っても払う事が十分に出きる値段かと思います」ニコ

魔王「ほ、本当ですか?」

参謀「はい魔王様」

商人(…気づかない? 参謀…実は大した事は無いのか?)

商人(いやまだ分からないぞ…何でこんなに安いのか聞かない事もおかしいし…逆に何か企んでいるかもしれませんね)

商人(ここは早計せず慎重に…冷静に…)

魔王「でも何でこんなに安くしてくれるのですか?」

商人(魔王から聞いてきたか…)

商人「はい、勿論安くするには相応の理由がございます」ニコ

商人「魔王様には、その仕入れた魔石を使って、下位魔族に仕事を与えて欲しいのです」

魔王「仕事を…?」

商人「はい、現在魔界は勇者と人間軍の侵攻で、各主要の都市や街は、そのほとんどが住めないほどにボロボロになっていると思います」

魔王「まだ見てはいないらしいですが…そうらしいですね」

商人「下位魔族にはその都市や街を復興させる仕事を与えるのです」

魔王「街の復興…! なるほど、確かにその仕事なら、今の魔界ならあぶれる程ありますね」

商人「左様でございます」

商人「さらに今魔王様が手掛けている、魔族の自治区となっている荒れ果ての地の開拓、それに魔石鉱脈の街開発、探せばいくらでも下位魔族を働かせる仕事があり、その仕事をするための魔石も十分…」

魔王「そうですね…あ、でも働く下位魔族さんに払うお金はどうしたら…」

商人「当面の賃金も私たちが都合しましょう」

魔王「ほ、本当ですか!?」

商人「はい」ニコ

魔王「あ、ありがとうございます! で、でも何故そこまでしてくれるのですか?」

商人「それは当然不思議に思いますよね?」

魔王「は、はい」

商人「ご安心ください、当然私たちに利益あっての協力ですから」

魔王「利益…? でもそちらが払ってばかりで何も利益は…」

商人「私たちは復興した後の街に、私たちの商会が優先的に商売出きる権利とその自治区を作ることをお許し頂きたいのです」

魔王「復興した街で商売を…?」

商人「そうです。他のライバルたちを押さえて魔界で商売が出来れば、こちらが提供した資金など霞むほどの純益が出ると私たちは試算しております」

商人「これが私たちが多くの資金を提供できる理由です。まあ先行投資みたいな物ですよ、ご納得頂けましたかな?」

魔王「た、確かに…で、でも魔界で商売とは一体何を?」

商人「よくお聞き下さいました」

商人「私たちは人間向けの魔界観光業をやろうと思っています」

魔王「人間向けの観光!?」

商人「はい、戦争が終わった後、王国が許可の無い者は、危ないと言う理由で魔界に入る事を禁止しました」

商人「しかし覗いてはいけない物こそ覗きたくなるのが人の常」

商人「今一部の貴族や金持ちが、金に糸目をつけないので魔界に行きたいと思っている人間が沢山いるのです」

魔王「な、なるほど、む、難しい話ですが、何となくとんでもなく儲かりそうなのは分かりました」

商人「そうです。それにこの一大事業は人間と魔族が深く交流する事が出きるきっかけにもなりますよ?」

魔王「!」

商人「確か魔王様は、人間と魔族が共に平和に暮らせる世の中にすることを目指しておりましたよね?」

商人「どうです? 私たちと協力しませんか?」

魔王「は、はい! 願っても無いですか」

参謀「…」

商人(…結局参謀は終始何も言わなかったな…)

商人(切れそうな男だったが…そうでも無かったか? ふむ)

魔王「参謀さんも良いと思いますよね」

参謀「はい魔王様のお考えの通りかと思いますよ」ニコ

魔王「ですよねですよね!」

商人(気のせいだったか…)

商人「…では話は成立と言う事でよろしいですか?」ニコ

魔王「はい!」

商人「ありがとうございます」

商人「それで最後に何ですが…」

魔王「はい?」

商人「実はこの交渉が上手くいったら、わが主である姫が、出来たら魔王様と会ってみたい言付かっていたのですが…受けて頂けますか?」

魔王「え!? 王国の姫ですか?」

商人「はい」ニコ

魔王「僕は構いませんが…」

商人「おお! ありがとうございます。姫もさぞお喜びになられるでしょう」

魔王「い、いえ」

魔王(王国の姫…一体どんな人物なのだろう?)


続く

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