第36話 魔王「人間の商人さんのプラン?」

参謀「こちらの応接間に通しておきました」

魔王「人間の商人…一体どんな人だろう」

女勇者「よくアタシらの手引き無しで魔界に来れた人間がいたな」

神官妹(商人…まさか)

呪族の幼女(今度は女勇者に力の結晶を取られてしまった…)

参謀「この部屋でございます」

魔王「あ、はい」

魔王「失礼します」ガチャ

メイド「いやですわ商人様」

商人「いやいやいや、貴方ほど器量よしで美しい女性は見たことがな…」

神官妹「げっ! やっぱり…」

勇者「?」

商人「これはこれはこれは…魔界の王にわざわざご足労して貰うとは…失礼いたしました」

商人「お呼びだて頂ければこの商人、早馬よりも早く魔王様の御前の前に現れましたのに、いやいやいや申し訳ない」ペコリ

魔王「い、いえ」

魔王(な、何だか良い人そうだな…)

神官妹「やっぱり貴方だったのね…」

商人「これはこれは、どんなに難しい交渉事でも、相手に必ずイエスと言わせることで有名な凄腕外交官の神官妹様では御座いませんか、お会いできて光栄の至りで御座います」

神官妹「白々しい…」

呪族の幼女(口のよく回る人間じゃのう)

女勇者「…? お前の知り合いなのか?」ヒソヒソ

神官妹「え、ええ…まあちょっと」ヒソヒソ

商人「おお! その美しき金髪に透き通った白い肌、女神を思わせる見目麗しき貴女はもしかして女勇者様では御座いませんか?」

女勇者「え!?」

女勇者「…」

女勇者「い、いやですわ…そんな女神だなんて…私…困ってしまいます…///」きゅん

一同「…!」

参謀「ふむ」

魔王「ゆゆ、女勇者さんどうしたのですか!?」

女勇者「どうしたも何も、わたくし元からこうですわ…///」首かしげ

魔王「だ、だって言葉遣いとかいつもと全然違いますよ!?」

女勇者「違うって…酷い! そんな私がいつもがさつ見たいに!」ジワ(涙)

魔王「え? え?」

女勇者「魔王様はいつもわたくしに意地悪ばかり…! わたしくの事がお嫌いなのですかっ!?」

魔王「魔王…様? 嫌う???」

神官妹(出た…よく分からない相手にはとりあえず猫被る女勇者の癖)

商人「いやいやいや…魔王様、こんなお綺麗な女勇者様にこんなに想われているとは、羨ましい限りで御座いますな」

女勇者「そんな…想うだなんて…わたくし恥ずかしくて…どうにかなっちゃいそうですわ…///」

商人「いや~女勇者様は見た目通りの可憐な方だ、私も魔王様くらいの一角の人物ならば、是非求婚を申し込みたい相手ですよ! いや魔王様がお羨ましい」

女勇者「そんな…求婚…な、なんて困ります…///」

魔王(な、何かもう会話についていけないな…)

呪族の幼女(ぐへへ…可憐な女勇者…可愛いのう…)

神官妹(前から見てるけど…猫被った女勇者って女の私でも可愛いと思うわ)

神官妹 (まあ…ともあれ)

神官妹「さて…茶番はともかく、何故あなたがここにいるのかしら? 商人」

商人「茶番とは心外な…私は至って真面目ですよ」

神官妹「あら…あれで真面目にやっていると言うならば、今すぐボロ着をまとい、人から利を得るために何をすれば良いのか? 道端で物乞いをして一から勉強し直した方が良いのでは?」

神官妹「あなたが本当に商人としての自覚がおありなら、ですけど」

商人「ははは、それはとても参考になりそうだ。機会があれば是非やってみたい」

商人「ともあれ貴女の方も、相変わらずのバッサリやるやり方変わっていないようですね」

神官妹「は?」

商人「この無条件降伏の戦後補償の項目などの事ですよ」バサー。

神官妹「な! なんでそれを貴方が持っているのですかっ!」

神官妹(まだそんな日も経ってないのに、どこから情報が漏れたの!?)

商人「おや、その慌てぶり…どうやらこの写しの内容に間違いは無いようですね…」

神官妹「く…そ、そんなの見たこと無いわ…デタラメよ…」

商人「おやそうですか…まあそう言う事にしておきましょう」

商人「ともあれ…この無条件降伏を受けるにあたっての条約項…まるで文字の書き読み覚えたばかりの子供が書いたかのように酷い内容だ」

商人「確かに敏腕外交官の神官妹様の仕事には見えませんよね」ニコ

神官妹「ぐ…」

魔王「え? そ、そうなんですか?」

商人「はい、左様で御座いますよ魔王様」

商人「普通戦後補償とは、戦う力を奪うくらいの賠償で留め、その国の今後の復興も考えてやる物です」

魔王「はあ」

商人「勿論たまに欲に目が眩んでそれ以上の物を要求する時もあるでしょう」

魔王「ふむふむ」

商人「しかしこの無条件降伏受けいれ条約項は明らかにそれ以下の外道な行ない」

魔王「そ、そうなんですかっ!?」

商人「はい、何故ならこの条件は、相手の国に滅べ、と言っているような物ですから」

魔王「滅べ!?」

商人「お訊きしましたよ~下位魔族がこの条件のせいで、大変ご立腹になったとかどうとか」

商人「何でも…死んでも構わないから人間に玉砕戦を挑むとか? そうなって当然ですよね? 何せ滅べと言われているんですから…」

魔王「た、確かに…下位魔族さんたちが怒られるのも仕方が無かった訳なのですね…」

神官妹「ち、違うのよ! そ、それは魔王様がもっとごねると思ったのに、あっさりOKするから、つい流れでそうなっちゃっただけなの!」

魔王「僕のせいなのか…」

神官妹「あ…いえそう言う訳じゃ…」

神官妹(ヤバイ! 騙されたと思ったら、魔王はあの恐ろしい魔力で人類を滅亡させてしまうかもしれないわ…!)

商人「いえいえ、説明の義務を怠った神官妹様のせいなので、魔王様はお気にせずに」

神官妹(く…こいついちいち…何も情況も知らない癖に~)

神官妹「そ、そんな事より、どうやって来たか知らないけど、魔界に入るには王室の許可が必要なのよ!?」

神官妹「一般人の貴方が…こんな事をやってただで済むと…」

商人「王室の許可書ってこれですか?」ペラ

神官妹「な…な…ど、どうやって…」

商人「姫様が、国王に頼んだらあっさり許可がおりましたよ?」

神官妹(ひ、姫!? く…あんのヘタレ王様が~!)

神官妹(ともあれこいつのバックにいるのは姫だったのか…)

神官妹(く…姫なら私や大臣様のやろうとしている事に、介入しようとするのも頷けるわ)

神官妹(く、目障りな)

商人「魔王様」

魔王「はい」

商人「我が王国の姫君は、一部の暴走で魔界と人間界にこれから築かれる、より良い関係に傷がつくのを恐れています」

魔王「より良い魔界と人間界の関係…姫様が…ほ、本当ですか!?」

商人「はい」ニッコリ

商人「しかしこのような、幼稚! な条約を結ばれては上手く行くのも行きません」

神官妹「ぐぬぬ…」

魔王「ですよね…それで下位魔族さんたちも怒ってしまわれたのですから…」シュン

魔王「やはり大臣さんにお願いして、戦後補償の減額を頼んだ方が良いでしょうか?」

商人「いえいえ、1度国同士が決めた事を、民衆がごねたからと言って、直ぐに変えてしまっては、民はごねればどうとでもなると勘違いしてしまいます」

神官妹(え…? 何でこいつ、私たちの決めた条約項を擁護する気なの…?)

魔王「でも…それは僕のせいだから、間違った事は真摯に受けとめ国民の皆さんには謝罪しなくては、と思うのです」

商人「…素晴らしい!」

魔王「え?」

商人「国民を思うその真っ直ぐな姿勢…私、久々に感動しました…」ウル

魔王「そ、そんな魔王として当然の事です」

商人「しかし真っ直ぐなだけでは国民を本当の意味で幸せにすることは出来ません」

魔王「本当の意味での幸せ…」

商人「はい、失礼ながら魔王が誠心誠意謝ったところで、彼らの生活が良くなる訳では無いので、彼らの怒りは収まらないでしょう」

魔王「そうなのでしょうか…?」

商人「はい左様で御座います、民は付き従うのは、自分を豊かにしてくれる者だけです」

商人「自分に利を与えてくれる者だけを信用し好きになるのです」

商人「そしてその利こそが民の幸せであり、それを与えるのが…王たる貴方の仕事で御座います」

魔王「利益を与える…そんな形だけの物で済ませるだけで良いんでしょうか?」

魔王「もっとこう…心的な物見せないと、国民は分かってくれないのでは無いでしょうか?」

商人「それは素晴らしい考えです、しかしながら、それは魔王様ご自身だけのお考えではありませんか?」

魔王「僕自身だけ…?」

商人「はい、魔王様が良いと思っている物が、他の全ての国民が良いと思っている訳では無いと思いませんか?」

魔王「…! そ、そうですね…僕は何て自分勝手な考えを…」

商人「流石思慮深き賢王で御座いますね魔王様は、これが分かる者が中々いないのに、全くもって素晴らしい!」

魔王「い、いえ僕なんか…///」テレテレ

商人「そんな魔王様だから、言わなくても分かっておいでかと思いますが、あえて言わせてもらいますと」

魔王「は、はい」

商人「国民は日に生きる糧を得るのも大変なのです」

商人「なれば心よりも、日に食べるパン、物の方が大事に感じると言う訳で御座います」

魔王「な、なるほど…心ではお腹は一杯にならないと言うことですね」

魔王「な、何となく分かってきました」

商人「流石聡明な魔王様だ感服します」

魔王「でもやっぱり物で釣るって言うのは嘘で悪いことじゃ無いのかな…?」

商人「いえいえそんな事はありませんよ、何故なら嘘ではなく私たちは夢を与えているのですから」

魔王「夢…」ジーン

女勇者(口うめー…あの馬鹿すっかり騙されてるぞぽいぞ)

神官妹(おのれ…商人めえ…!)

呪族の幼女(眠く…なってきた)

魔王「でも不満に思っている下位魔族さんに、戦後補償の減額をしないで、利益与えると言ってもどこから捻出すれば良いのか…」

商人「ご安心ください魔王様!」

魔王「え?」

商人「私たち商人が、それを解決する素晴らしいプランを既にご用意しております」

神官妹「!」

女勇者「!」

呪族の幼女「Zzz」

神官妹(くそ…商人めそうやって魔王に取り入るのが目的だったね…)

魔王「素晴らしいプラン…それは一体?」


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る