第34話 魔王「魔界の大工さん」

???「こんなヘボい建物を作りやがって、せっかくの材料が泣いてるぞ!」

魔王「ヘボいって…そ、そんな筈ありません! 貴方にはこの素晴らしい美的センスが分からないのですか!?」

魔王「みなさんも僕が作った建物は素晴らしいと思いますよね!?」

女勇者「ヘボい」

神官妹「美しくありませんわ」

大臣「脚下」

呪族の幼女「ごみじゃのぅ」

魔王「えええ!?」

???「ほらみろいっ!」

神官姉「大丈夫…よ、魔王ちゃん…みためじゃ無いから」グッ(親指を立てる)

魔王「ど、どうも」

魔王「じゃなくて、いきなりケチをつけてきた貴方は一体誰なんですか!?」

???「俺か? 俺は魔界宮大工職人の魔大工ってぇもんだっ!」

魔王「えええ!? あの数千年続く魔界宮大工を引き継ぎ、建物を作り続けているあの魔大工さん!?」

魔大工「おう、建物を作り続けて数百年の魔大工っていやー俺の事だ!」

女勇者(誰だ…)

神官妹(魔界にも大工っているのね)

大臣(また変なのが出てきた)

呪族の幼女(三千年前も魔界宮大工あったの覚えておるの…まだおったのか)

神官姉(魔王ちゃんの…作った物を、馬鹿にして…許せない)

魔大工「たく、継魔(つぎま)もろくに出来ねえ素人が面白半分に建物何か作るんじゃねーや!」

魔王「継魔…?」

魔大工「いいから俺にやらせろ!」

魔王「は、はい!」

魔大工「おら! おら! おら!」

言うやいなや、魔大工は魔王が作った材料を使い、あっという間に建物を組み立てて行く。

一時間後。

豪邸「うっす自分豪邸です」

一同「おお~!」

女勇者「すげえっ! あのボロボロの廃墟が豪邸にっ!」

神官妹「なんと言う事でしょう…」

大臣「おお! 素晴らしい建物だ…!」

呪族の幼女「しゃんぜんねんまえより、きじゅちゅがあがってるのぅ(三千年前より技術が上がってるのう)」

魔王「そ、そうかなあ…僕の方がセンス良いと思いますが…」

神官姉「私も…魔王ちゃんの…廃墟的センスは好き…よ」

魔王「廃墟…」ガク

神官姉「あ、あ…」アセアセ

魔王「ま、まあそれよりも、何で魔大工さんの建物は崩れないのだろう?」

魔王「僕も同じように魔力接合したのに」

魔大工「同じじゃねぇ! 俺はただ魔力接合した訳じゃねぇ! 継魔を使って接合してるんだ!」

魔王「継魔…さっきも言ってましたね、それって何なんですか?」

魔大工「継魔って言うのは簡単に言えば、魔力接合する時に工夫をする事で、接合する魔力を止めても繋ぎ続けさせる事が出来る、魔界宮大工の技法の一つよ!」

魔王「す、凄い! そんな技法があるのですね!」

女勇者(魔界の建物ってみんなそんな感じに作ってんのか…)

神官妹(もしも魔力が切れたら、いきなり崩れる事もあるのね…何だか怖いわ)

大臣(何を言ってるのか良く分からんが、とにかく先進技術ぽくって良いぞ!)

呪族の幼女(我が呪族の城も、魔大工に作ってもらったが、三千年経った今でも普通に健在だからな…うむあの技術だけはわらわも凄いと思う)

神官姉(魔王ちゃんの…方が…上なのに!)

魔王「凄いです! 僕も出来るようになりたいです!」

魔大工「バカヤロ! 一朝一夕で覚えられるもんじゃねえや!」

魔大工「だいたい俺がここに来たのは、建物作るためでも、ましてやお前に継魔を教えにきた訳でもねえんだ!」

魔王「で、では魔大工さんは一体何をしに来たのですか?」

魔大工「俺はお前に文句を言いにきたんだ!」

魔王「も、文句…何故ですか?」

魔王「僕は貴方に恨まれるような事をした覚えはありませんが…」

魔大工「お前新しい魔王なんだろ?」

魔王「は、はいそうですが…」

魔大工「お前…人間に魔石採掘件をほとんどやっちまったって聞いてるぞ?」

魔王「は、はい…それが何か問題でも?」

魔大工「バカヤロ! 魔石っつーのはな、魔族にとって大切な魔力資源の一つなんだ!」

魔大工「それが無くなると、魔力を使う仕事をしている魔族が、魔力回復が出来なくて仕事が出来なくなっちまうんだよ!」

魔大工「実際俺たち魔大工だって、1つの建物を作るのに凄い魔力を使うんだ!」

魔大工「その道を極めた俺だって、こんな建物一つ作るだけでもうヘトヘトなんだぜ?」

魔王「…その割には凄い元気そうですが…?」

魔大工「バカヤロ! 気合で話してるんだ! ちゃちゃいれんなっ!」

魔王「は、はい、すみません!」

魔大工「まー、ってぇー訳で、俺たち魔大工はお前が勝手にやった事に迷惑してるんだ!」

魔王「は、はい、す、すみません!」ペコペコ

魔大工「それに俺たち大工だけじゃねえ…武器職人たちも鋳造禁止になって仕事を無くすし、それを売っていた商人も売る物が急に無くなって稼ぐ事も出来ねえ」

魔大工「お前が安易にやった事で今魔界は大混乱してるんだ!」

魔王「そ、そんな事が…」

女勇者 (まーそうなるわな…)

神官妹(でもマズイわね…思ったより下位魔族の不満は大きいわ)

大臣(じゃからもう少し切り詰めて話せば良かったのに…)

呪族の幼女(何で人間なんぞに資源を渡してるんじゃ?)

神官姉(うるさい奴は…処断すれば…いいのに)

魔大工「とにかく今のこの状況何とかしてくれなきゃ、俺たち下位魔族はあんたを魔王として認めないぜ!」

魔王「は、はい! 何とかしてみせます」

魔大工「おう頼むぜ…もし出来なければ、俺たち下位魔族にも考えはあるからな…」

魔王「か、考え?」

魔大工「…戦争だ」

一同「!」

魔王「え!?」

魔大工「俺たち下位魔族は今連合を組んで準備を進めている」

魔王「待ってください! 戦争はもう終わったのに、何故わざわざ血を流すような真似を!?」

魔大工「バカヤロ! お前たち上級魔族が勝手に戦争を終わらしただけだろ!」

魔大工「俺たちは人間なんかに負けちゃいねえんだ! まだ戦えるんだ!」

魔王「で、でも貴方たちが集まれば勇者さんが倒せると本気で信じているのですか?」

魔王「失礼ですが…貴方の力は勇者さんが手を抜いてる状態でも遠く及びませんよ?」

魔王「今のほら! 凄いちっちゃくて弱く感じる力よりも、貴方の力の方が弱いんですよ? ほら! ほら!」

女勇者(別に普通の状態何だけどな…)

魔大工「んな事は分かっている!」

魔王「…! ならば何故?」

魔大工「確かに俺たちは戦う事は不慣れな一般魔族!」

魔大工「だがな…このまま惨めな生活を送るよりも、俺たちは戦って死んだ方がマシだって考えてるんだ!」

魔王「そ、そんな…」

魔大工「良いか? 俺たちは近いうちに行動を起こす!」

魔大工「賛同している魔族は魔界全土の下位魔族全員…数万だ!」

魔王「!」

女勇者(数万…流石にここまで数揃うと面倒くさいな…)

神官妹(最近、やろうとする事がことごとく怪しい雲行きになっていきますわ…)

大臣(勇者なら…勝てるよな?)

呪族の幼女(面白い事になってきたの)

神官姉(不忠な…臣民は処断! 処断!)

魔大工「まあそう言う事だから、覚えておけよ」

魔大工「それと、もしも何とかしたいならお前が人間に差し出した物を取り返す事だな」

魔大工「俺が言いたい事はそれだけだ、あばよ」

魔王「あ、待ってください!」

魔王(…行ってしまった)

魔王(ど、どうしよう…どうしたら彼らを止めることが出来るだろうか?)


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る