第19話 魔王「勇者さん大好きです♪」
魔王(よし…街を不時着させるぞ)
魔王(しかし本当に毒霧が凄いな…とりあえず結界を張って毒の侵入を防ぐか)
魔王「…!」
魔王が念じると、街の外に薄い膜のような物がかかり、毒霧の侵入を防ぐ。
戦魔兵たち「おおお…」
戦魔兵「凄い…流石魔王様だ…」
勇者「お…」
神官妹「街全体に結界を張って毒霧が入ってくるのを防いだ…?」
神官妹(そこまで大きい街じゃないし、私にも出来ない事はないけど…)
神官妹(巨大な街を浮かす術式をやりながら、さらにそこからそんな結界を魔法を、まるで片手間感覚でやるなんて…)
神官妹(本当に魔力の底が知れない…もしかしたら神話の時代、神が使っていたとされる伝説の広域極大破壊魔法とかも使えたりするのかしら…?)
神官妹(だとすると、本当に前魔王とは桁違いだし、もしも街…いえ国を吹き飛ばすくらいの力があるなら、この戦争の根底から色々覆されるわ)
神官妹(勇者は寝首をかけば殺れるとは言ってたけど、もしも殺しきれなかった場合、魔王の怒りを買って人類は滅亡なんて事も…)
魔王(これで毒霧はよし、と…何かこんな簡単な事で皆さん必要以上に驚いているような…)
魔王 (うーん…)
魔王(僕が父上の息子で魔王だから気を使ってるのでしょうか?)
魔王(これが世に聞くシャコージレイと言うやつですか)
魔王(しかしそれよりも誰かしら手伝ってくれないかと思ってしまうのですが…)
魔王(さっきから全部一人でやっているような…)
魔王(別に一人でやるのは良いんですが)
魔王(何かこう…一人で全部やっていると、頑張っても実は周りから見たら、実は全部僕の独りよがりって思われてそうで不安になるな…)
魔王(結界魔法が得意そうな神官妹さんは、人間だからしょうがない)
魔王(戦魔兵の皆さんも魔法は不得意そうだからしょうがないけど)
魔王(でも魔法が得意そうな参謀さんくらい、言わなくても手伝ってくれても良いと思うんだけどな)
魔王(言葉じゃ一番僕を魔王として扱っているような気がするんだけど…)
魔王(やっぱり参謀さんも実際は僕の事、どこかで魔王としては認めてないのかな?)
魔王(うわ~…何か深く考え込んできたら凄い不安になってきた…)
魔王(僕…本当に魔族の皆さんに受け入れられてるんでしょうか…?)
魔王(…! いけないいけない…勝手に思い込んで、皆さんを悪く言うなんて) ぶるぶる
魔王(僕が信じなくて、信じてもらおうなんて虫のいい話です!)
魔王(いえ、それすらも本来は気にしてはいけない事!)
魔王(皆さんの信頼を勝ち取るには、信頼してもらえるまで、皆さんに尽くすだけの事です!)
魔王(だから頑張ろう!)
魔王(よし街を地上に着陸させるぞ…)
魔王(接地の瞬間、街の土台となっている地面と地上の地面を融合させるように沈ませて衝撃を減らしてっと…)
ズズズと少しばかりの音と震動を響かせて元魔石鉱脈の街は荒れ果ての地に同化するように降り立つ。
魔王(しかし毒々しい土地だけど、それだけあって生き物はいなそうだし、街を降ろしても生き物を殺さなくて済んだから、その点この土地が移住先で良かったかもって思いますね)
魔王(さていつまでも結界を張っている訳にもいかないので、次は外の毒の浄化作業ですね)
魔王 (…)
魔王(それもやっぱり一人でやるのかな…)
勇者「まーお様!」ダキツキ!
魔王「…! 勇者さん!?」
勇者「何ショボくれた顔してんのよ! な~に~かお困り!?」
魔王「え? え?」
参謀(…! 勇者…! 一体何を!?)
魔王「ど、どうしたんですか勇者さん、急にぼ、僕ごときに抱きついてきて」
魔王「さっき泣くほど僕の事怒ってませんでしたっけ?」
勇者「ああん! さっきの事はさっきの事よ」魔王の胸を指でぐりぐり。
魔王「ちょ、ちょっと///」
魔族っ子「…」ムカ
勇者「あのねーアタシ~魔王の事…好きになっちゃった見たい! きゃ!」
魔王「はあ!?」
神官妹(勇者…ベタベタ演技な上にストレート過ぎ…!)
戦魔将軍「こらぁぁっっっ!! 勇者! 魔王様に不敬であるぞ!!」
魔族っ子「そ、そうよ! 勇者の癖に、私たちの魔王様にベタベタしないでよ!」
勇者「はあ!? 愛は種族の壁を超えるっつーのっっっ!!」
戦魔将軍「そんな話はしとらーーーんっっっ!!」
魔王「ほ、本当にどうしてですか…何故急に僕の事を好きに?」
勇者「え!? あー…えーと、そのなんだ…」
魔王「?」
戦魔将軍「魔王様! その外道勇者の言う事に耳を傾けてはなりませんぞ!」
魔族っ子「そうよ! きっと嘘をついてるに決まっているわ!」
勇者「うっせ外野は黙ってろ!」
勇者「そのなんだ…うー…」
勇者「…!」
勇者「そうあれだ、人を…じゃなくて魔族を好きになるのに理由なんて要らないだろ!」
魔王「!」
勇者「みたいな…テンプレ展開的なやつ? かな…?」
魔王「ほ、本当に僕の事を…好きなのですか?」
勇者「え!? お、おう、す…好きだよ?」
魔王「…」俯き
勇者「…えっと…魔王?」
魔王「ゆ」プルプル
勇者「あ…えーとプルプルしてどうしたのかな(汗)」
勇者(ヤバいバレた!?)
魔王「勇者っ!」ぐわ
勇者「聖光浄魔斬っっっ!!」
ドカーーーーーン!!!
魔族っ子「だ、騙し討ちだーー!?!?」
戦魔将軍「なんて卑怯な奴だっっっ!?」
勇者(クソ! アタシに好かれて喜ばないなんて、何て欲が無いヤツ!)
勇者(チッ作戦失敗逃げ…)
魔王「勇者さん!」ダキツキ!
勇者「どわあぁあぁぁあ!?!? 捕まったーー!」
勇者(だから何で土煙が舞った視界が悪い中すぐに見つけられるんだよっっっ!)
魔王「勇者さん!」
勇者 (クッソー…ここまでか)
魔王「ありがとうございます!」
勇者「へ?」
魔王「こんな僕を好きって言ってくれてありがとうございます!」
勇者「えーと…どう言う事?」
魔王「だから勇者さんが僕を好きって言ってくれた事です!」
勇者「あ、うん」
魔王「僕さっきまで、実は誰からも信頼されていないんじゃ無いかって不安になってて…」
魔王「そんな時勇者さんが、僕を好きって言ってくれたので、僕…本当に嬉しかったです」
勇者「ああ…そうなの(もしかしてバレて無い!?)」ニヤリ(悪い顔)
戦魔将軍「魔王様だから、騙されてはいけませんぞ! 攻撃されたでしょう! 聖剣でっっっ!」
魔族っ子「そうよ! その勇者は危険だわ!」
魔王「やだなぁ…何でやったかは知りませんが、土埃を舞わせるだけの【弱い】技で魔族が死ぬ訳無いじゃないですか」
勇者「よわ!? ぐ…そ、そうよ~魔王様の頬に蚊が止まってたからら魔王様を傷つけ無いように」
勇者「手加減して手加減して手加減して手加減して手加減して手加減してぇ~~~技を撃ったんですよ~?)ヒクヒク
魔王「そ、そんなに手加減を強調しなくても、それくらい分かりますよ」
戦魔将軍「嘘だぁぁああ!! その勇者魔王様手加減など一切…」
魔王「あ…でも手加減なら戦魔将軍さんの方が上手いですね」
魔王「あれだけ派手な見た目で、勇者さんの技より、威力を抑えてるんですから」
戦魔将軍「…!!!」ピキ
戦魔将軍「ど…」
戦魔将軍「どうせ儂なんか数百年修業しても、この程度でござるよぉぉぉおお!!」ドヒューン(逃走)
魔族っ子「お父さーーーん!?」
勇者(ふ…何だかよく分からないけど邪魔者がいないうちに魔王を骨抜きに…!)
魔王「あ、あの勇者さん!」勇者の両手を取る。
勇者 (お…! 大胆に手なんか握りやがってこのマセガキ! 堕ちたか…?)ニヤリ
魔王「ぼ、僕を好きなら…その」
勇者「…!」
勇者(お! お! もしかしなくても告白か? 何だ何だ~結構いい調子じゃないの)
勇者(やっぱ…アタシってば超イケてるんじゃん?)ニヒヒ
神官妹(嘘…あんなので上手く行っちゃうの?)
参謀(チッ勇者のやつ…そう言う事か…)
参謀(魔王の心の懐に入る気か…)
魔王「その…///」
勇者「うんうん♪ 何かな~? おねーさんに言ってみそ~♪」
魔王「その…僕と友達になってくれませんか!?」
勇者・神官妹・参謀「!?」
神官妹(友達…?)
参謀(なるほど…城の時のメイドと同じ反応を返しますか…)
勇者「…」
魔王「勇者…さん?」
勇者(あれ? 友達…? 恋人とかじゃなくて?)
勇者(んん? あ! あーあれか…まずはお友達から始めましょうって奴か…?)
勇者(でもそう言うのって普通女のアタシから言うもんじゃなかったっけ?)
勇者(何か腹立つ敗北感…)
勇者(ま、まあ良いか…こう言う心を掴む作戦は焦っちゃ駄目だよな…)
勇者(うん友達…進展あった! OK!)
魔王「や、やっぱり駄目ですか?」
勇者「え!? いや…良いよ、うんなろう友達…」
魔王「え!? 本当ですか!?」
勇者「あ、ああ! 今日からアタシとあんたはガチなダチトモな!」
魔王「あ…ありがとうございます勇者さん」ウルウル
勇者「な、泣くこと無いだろ…;」
魔王「だってあんなに嫌われてた人から友達になってくれたなんて本当に嬉しくて…」
勇者「は、はあ? そんくらいでマジ感動とか、お前ダチトモ居なさすぎじゃね? うけるんですけど~」
魔王「いえそんくらいじゃないです!」
魔王「勇者さん大好きです!」ニコ
勇者「…! ば、馬鹿じゃねーのそんくらいで本当馬鹿///」
勇者(な、何こいつ…笑顔をが意外に…)
勇者 (は!?)
勇者(ば、ばーか、これはおおおお前を油断させる、ハニートラップ何だからな、くの一何だからな!///)
勇者(そんな笑顔を見せたって、あ、後で絶対後悔と絶望を味あわせてやるんだからな! お、覚えとけよな///)
魔王「嬉しいなー…」
勇者「ふ、ふん…そ、そんなに喜ぶんじゃねーよ。くだらねー///」
魔王「いや嬉しいですよ、これで人間のお友達は二人になりましたからね」
勇者「え…二人?」
魔王「はい! 勇者さんが二人目の人間のお友達です!」
勇者「アタシは…二人目」
魔王「はい! 二人目です」
勇者(何だよ…アタシが最初じゃ無いのかよ…)
勇者「…!」
勇者(いや残念がる事じゃないし!? 何残念がってるのアタシ馬鹿じゃないの!?)
勇者(そーよ、こいつの友達になるなんてフリなんだから順番なんか)
勇者「…! てっ!」
勇者が思いに耽っていると、頭に何かがぶつかる。
そのぶつかった物を反射的に目で追うと、それは石コロだった。
勇者「だ、誰だこらぁぁああ!!」
???「うるせー!!」
勇者「チッ、アタシに石ぶつけるなんざ…」
魔族の子供たち「…」ジー
勇者「魔族のが、ガキ?」
魔王「魔族の…子供? 魔族っ子以外にもこんなにいたのか…」
魔王(でも彼らは一体何故勇者さんに石を…?)
魔族の子供たち「…」
続く
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