第18話 魔王「僕は世間知らずなのでしょうか?」

戦魔兵「へ、へいこれがあっしが見た毒霧立った場所、荒れ果ての地です」

街中なので魔法で投影ビジョンを作り、街の外をうかがう魔王たち。

魔王「こ、これが荒れ果ての地…」

魔王(確かに遠目からでも、青紫色の毒々しい霧がかかっていて…生きる者が住むところには見えないな…)

魔族っ子「あ、あんなところでこれから暮らすの…」ドンヨリ

魔王「…! だ、大丈夫ですよ! 魔族っ子さん!」

魔族っ子「ま、魔王様…で、でも」

魔王「だ、大丈夫です! 僕が必ず魔族が住める土地に開拓しますから!」

魔族っ子「は、はい…」

魔王(うーん、とは言ってもやっぱり不安そうだ)

魔王(かく言う僕も何だか不安になってきた)

魔王(解毒か解呪系の魔法で、土地のハシからハシまで浄化すれば結構いけると思ってたけど…)

魔王(何かあそこまで毒々しい物だとは思ってなかった…)

魔王(果たして上手く行くのだろうか?)

戦魔兵「ま、魔王様、そ、それでどうするんで?」

魔王「あ、は、はい! とりあえず不時着しましょう!」

魔王「戦魔将軍さん、えーと…あそこの開けたところに着陸を…」

戦魔将軍「…」シーン。

振り向けば地面に潰れたカエルようにめり込む戦魔将軍の姿があった!

戦魔副長「し、死んでる」

戦魔兵「な、何だってー!」

魔王「え!?」

魔族っ子「きゃーおとーさん!?」

魔族っ子幼「あははーおとーさん変な顔」

魔王「な、何故戦魔将軍さん程の者が突然!?」

一同 (あんたのせいだろー!)

魔王「と、とりあえず気絶していると言う事は…」

魔王「あわわわわ!?」

魔王が気づいたように言うと、大地がグラグラと揺れる!

魔族っ子「きゃーーー!!」

魔王「街が落ちていると言う事になるので、危ない!」ハシッ!

直ぐに魔王は、街を浮遊させている、魔法をコントロールしている鎖を掴む。

すると直ぐに揺れは収まった。

魔王「ふう…危なかった…」

魔王「それにしても戦魔将軍さん程の魔族が、あの程度で気絶するとは…もしかして」

参謀「…!」

参謀(まさか戦魔将軍の無様な姿を見て、自分が強いことに気づいたか…?)

参謀(不味いですね…人間に魔王が完全な反戦主義だとバレ無いために、魔王には自分が本当は強いことを自覚はして欲しく無いんですけどねえ…)

参謀(何故ならば、魔王自身がよく分かっていないこの曖昧な状況こそ)

参謀(実際どうなのか分からない相手側にとって、必要以上の想像をさせ、魔王が本当に戦う気があるのかないのか、その判断がしにくくなる)

参謀(そうすればればうかつに手も出しにくくなる)

参謀(その状態を維持する事こそ、魔界建て直しの時間稼ぎには最良の状態…)

参謀(だから魔王自身が強さに気づかれるのは、少々厄介なのですが…魔王は一体何を言う気だ…?)

魔王「もしかして…」

参謀「…」

魔族っ子「…」

戦魔兵一同「…」

魔王「寝不足でしょうか?」

一同「ズコーーー!」

参謀「ふ…」ニヤリ

魔王「え? ど、どうしたんですか皆さん」

魔族っ子「寝不足ってそんな訳無いでしょー! あ、無いと思いますが魔王様///」

魔王「え、寝不足じゃない?」

魔王「でも僕よりも遥かにお強い戦魔将軍さんが、あの程度物を浮かした浮遊魔法で潰れる訳がないし…一体何故お倒れになったのか、その理由以外、僕にはちっとも分かりません」

魔族っ子「いやだからお父さんは確かに強いけど…」

魔族っ子(…どうしよ魔王様は確かにお父さんより強いけど、それでお父さんの事を大した事が無いみたいに言うのは何か嫌だな…)

魔族っ子(とゆーかなんで魔王様はそんな謙遜するの?)

魔族っ子(誰が見たって凄い力を持っているのに…も~訳が分からないよ!)

魔族っ子「と、とにかく魔王様は思い違いをしているの!」

魔族っ子「察してよ!」

魔王「思い違い…察する…」

魔王「は! ま、まさか…!?」

魔族っ子(分かってくれた…!?)

魔王「物凄い筋トレした二日後だったとか!?」

魔王「それで物凄い筋肉痛になってとか!?」

魔族っ子「はあ…もういいです…」ガク

参謀「ふ…」クイクイ(上機嫌で眼鏡の位置を直す)

魔王(な、何だろう…? この感じ)

魔王(荒れ果ての地の毒を魔法で全部浄化しようって言った時も、何だか僕が間違っているように思われていたようですし)

魔王(いけませんね…やはり城からあまり出たことがないと、どうにも世間知らずになってしまって…)

魔王(でもそんな僕でも、少しでもみんなのお力にならなくてはいけないですよね!うん!)

魔王(それが正しいか分かりませんが、とにかく自分が出きることを頑張りましょう!)フンス

魔王(とりあえず移住先に街を降ろしますか…)

魔王「あ、皆さん街を降ろしますので、着陸した時、少々揺れまーす!」

神官妹「げ、着いちゃった…」

神官妹「正直な話、街ごと引っ越すとは思って無かったから、こんな毒々しいところに来る予定は無かったんですけどね」

神官妹「こんなところにいたら毒に当てられますわ」

神官妹「そろそろ引き時ですかしらね、勇者?」

勇者「裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った…ブツブツ」

神官妹「ああもう! いつまでもしつこい!」

神官妹「悪かったわよ、でも私だって命は惜しいのよ! 貴女だって逆の立場ならそうしたでしょ!?」

勇者「裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った裏切った~~~~!!」

神官妹(子供か…;)

神官妹「分かった分かったはいはいごめんなさい! で私たちはそろそろ逃げるけど貴女はどうするの?」

勇者「…」ピタ

神官妹「勇者?」

勇者「い…ない」

神官妹「え?」

勇者「行かない…」

神官妹「は?」

勇者「逃げない…」

神官妹「…」

神官妹「え!?」

勇者「アタシをあんな公衆の面前で泣かせて一生物の恥をかかせた魔王…」

勇者「絶対……にっっっ! ゆるさなぁぁぁあいっっっ!!」ユラリ

神官妹「ひぃ!」

勇者「魔王殺す魔王殺す魔王殺す魔王殺す殺す殺す殺す…ころぉーーーすっっっ!!!」

勇者「ひゃは、あひゃはははっっっ!!」

神官妹「こ、殺すって、自分でどう足掻いても勝てないって言ってたのを、一体どうやって殺すって言うのよ…」

勇者「油断させて寝首をかくっっっ!!」

神官妹「今更だけど勇者らしからぬド外道な言葉ね」

勇者「勇者なんて飾り何ですよ! 偉い人にはそれが分からんのです!」

神官妹「飾りにしない…でどうやって油断させるつもりなの?」

勇者「ふん…それはアタシ流勇者術の極意の一つを使うわ」

神官妹「貴女式の勇者の極意…それは一体…?」ゴクリ

勇者「ふ…それは…」

勇者「アタシ流勇者術の極意【零式】!!」

神官妹「零式っっっ!?!?」

神官妹(何だか思いっきり痛そうな名前だけど、何だか凄そうだわ!)

神官妹(一体どんな凄い極意なの!?)

勇者「ハニートラップ!!」

神官妹「ハニー…え?」

勇者「または女と言う字をばらして【くの一】!」

神官妹「…;」

勇者「ふ、ここは女勇者として、女の部分の特権を最大限に利用するってーって事で」

勇者「アタシの超イケてる女としての魅力で、あの馬鹿ガキ魔王をメロメロのヘロヘロにしてさ」

勇者「懐に入れる位油断したところで、寝所で寝ている時を狙ってブスリさ」

勇者「そうANSATU! 暗殺するんだよ!」

勇者「流石にあいつがどんなに固くても、魔族特攻があるこの聖剣なら、寝てる時なら流石に殺れるだろうからな」

神官妹「清々しいまでの屑の理論ね」

勇者「そんなに誉めるなよ、照れんじゃん」

神官妹「誉めてないから」

勇者「とにかく、真っ正面から向かって勝てないなら、アタシはこの戦法を取るぜ!」

神官妹「そんな事言って…貴女まだの癖に…そんな女の技なんか分かるの?」

勇者「まだ…って…は、はあ? そ、そんな訳ねーし!」

勇者「普通に経験豊富だし、ビビビッチだし!」

神官妹「自分でビッチ言うな」

勇者「うっさい! 爺が好きな悪趣味なヤツにどーこー言われたくないし!」

神官妹「何ですって!?」

勇者「もういいよとにかくアタシはこのやり方であいつを殺るんだ!」

勇者「殺るまで帰らない!」

勇者「だからあんたは好きな爺のところにでも行って、とっとと消え失せやがれ!」

勇者「じゃあな! へん!」

神官妹「あ、勇者待ちなさい!」

勇者「うっさい裏切り者!」

神官妹「行っちゃった…」

神官妹「…経験も無い癖に、何が女の技よ。ばっかじゃないの?」

神官妹「…」

神官妹「やれやれ…まああの魔王は何故だか危害を加えてくる感じは無さそうだし、危なくなる前くらいまでは付き合ってやるか」

神官妹「アタシってほんとお人好しよねぇ…ほんと」

神官妹「まあと言う事だから…姉さんは一旦大臣様のところに帰って報告を…」

神官姉「勇者ちゃん…可愛い魔王ちゃんに手を出したら…ゆる…さない」メラメラ

神官妹「どいつもこいつも…;」


続く

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