第13話 魔王「僕に責任を取らせてください」

魔族っ子「せ、責任を取るってどういう事よ」

魔王「言葉通りの意味です」

魔王「父上の起こした事で、刻まれた貴女の悲しみを、僕に償う機会を下さい!」

魔族っ子「だからどう償うって言うのよ!」

魔族っ子「死んだ者は帰らないし、このまま生きてたって人間に屈辱を味あわされるだけ───こんな状況で」

魔族っ子「人間に勇者の言いなりになっているあんたに、何を償えるって言うのよ!」

魔王「───確かに今の僕に出来る事はちっぽけです」

魔王「でも、それでも」

魔王「僕に償う機会をくれるなら」

魔王「貴女にもうこの先悲しみを感じさせません!」

魔王「貴女がずっと笑って、そんな幸せを感じられる生活がずっも送れるように努力します!」

魔王「だから僕が作る新しい魔界政府の街に来てください!」

魔王「お願いします!」土下座

戦魔将軍「!」

参謀「ふむ」

勇者「…!」

勇者 (そこまでするか…? どこまでプライド無いんだよあいつは…仮にも魔王だろ…)

勇者「ちっ…」ナンカイゴゴチワルイ。

魔族っ子「ちょ、ちょっと止めてよ…そ、そんな事されたって…」

魔族っ子「わ、私はお母さんのお墓があるかぎり、ここからは離れる気は…」

魔王「お墓を新しい場所に移動するのでは駄目ですか?」

魔族っ子「移動って…それにあの時計台がある場所じゃなきゃ…」

魔王「それも移動させて貰えるように、勇者さんたちにお願いします」

魔族っ子「移動って…あんなデカイ物」

時計台「ウッス、ジブンタイジュウ150㌧ッス」

魔王「大丈夫です! 貴女が持っていきたい故郷の思い出は全て持っていけるようお願いしてみます!」

魔族「魔石鉱脈は約束なのでちょっと無理だけど」

魔王「それ以外なら全部僕が持っていきます」

魔王「だからお願いします! 僕と一緒に新しい街で暮らしましょう!」

魔族っ子「え…///」

魔族っ子「えっと…その…///」

魔王「お願いです! 僕を信じてください!」ペコリ!

魔族っ子「!」

魔族っ子(…こいつ何でここまで出来るの?)

魔族っ子(それに何でだろう…こいつと話していると)

魔族っ子(嫌じゃない)

魔族っ子(何だか信じても良いかなって気持ちになってくる)

魔族っ子(本当に何でだろう)

魔王「…><」プルプル(アタマサゲタママ)

魔族っ子「…!」

魔族っ子(そっか…こいつが本気で言ってるからか…)

魔族っ子(それが分かるから…私)

魔族っ子「ふふ」

魔王「だ、駄目ですか?」

魔族っ子「え…!?///」

魔王「やっぱり駄目ですか?」

魔族っ子「えっと…その///」

魔族っ子「駄目…じゃ…ない」

戦魔将軍「!」

勇者「!」

参謀「ふふ」

魔王「やっぱり駄目ですかー、でもそれでもお願いします!」

魔王「え?」

魔王「今なんて?」

魔族っ子「い、良いって言ったんだよ! ちゃんと聞けよ…」

魔王「ほ、本当ですか!?」

魔族っ子「だ、だってお前嫌だって言っても諦めないだろ…」

魔族っ子「だ、だから…///」

魔王「ありがとうございます! ありがとうございます」両手掴んでブンブン。

魔族っ子「わ、わわ///」

魔族っ子「ば、馬鹿! まだ安心するな!」

魔王「え?」 

魔族っ子「い、妹合わせて、贅沢させ無いと駄目何だからな!><///」

魔族っ子「凄い贅沢させないと駄目何だからな!><///」

魔王「…え? あ、はい努力します」ニコ

魔族っ子「…///」

戦魔将軍「ふ…はは…がっはっはっは!!」

魔族っ子「お父さん」

魔王「戦魔将軍さん」

戦魔将軍「よくぞその頑固物を説得してくれたな、礼を言うぞ魔王子殿!」

魔王「い、いえ別にそんな…」

戦魔将軍「そんな事はない!」

戦魔将軍「やはり未来ある若い魔族が戦で命を落とすのは忍びないからな!」

戦魔将軍「なのにそのはねっ返りは、以前から儂と一緒に死ぬと言って聞かなかったからな!」

魔族っ子「だ、誰がはねっ返りよ!」

戦魔将軍「それを思い留まらせてくれてのだ。本当に礼を言うぞ魔王子殿!」

魔王「戦魔将軍さん…」

戦魔将軍「さて、では魔族っ子、それに幼」

魔族っ子「何?」

魔族っ子幼「なーに、おとーさん」

戦魔将軍「新しい地でも姉妹仲良く暮らすのだぞ?」

魔族っ子「え? お父さん、何を言って…」

魔族っ子幼「?」

戦魔将軍「儂は残って戦う」

魔族っ子「!?」

魔王「ど、どうしてもう貴方がここで戦う理由は…」

戦魔将軍「儂は魔王軍最後の将として、最後まで人間と戦う義務がある」

戦魔将軍「それは魔族っ子たちとの約束が無くても変わらぬ」

魔族っ子「そ、そんな、止めてよお父さん」

魔王「ちょっと待ってください。貴方が戦いを止めなかったら意味無いですよ!」

戦魔将軍「言った筈だ、話を聞くだけで命令は聞かないと」

魔王「そ、そんな」

戦魔将軍「さあ勇者! 儂は思い残すことはもう何も無い! いざ尋常に勝負!」

魔王「わー! 勇者さん、戦っちゃ駄目ですよ!!」

勇者「だから…アタシはどーすりゃいいんだよ」

戦魔副長「大将馬鹿ですか? そんな事言い出したら、お嬢もまた死ぬとか言い出しますよ?」

戦魔将軍「誰が馬鹿かーーー!?」

魔王「あ、貴方は…」

戦魔副長「あ、すいませんね魔王様、本当うちの大将頭が固くて」

魔王「い、いえ」

戦魔副長「何だったら大将を首にしてあっしを将軍にして見ては如何ですかね?」

魔王「は?」

戦魔副長「あんな脳筋よりよっぽど上手く戦魔軍を回して見せますぜ」ゴマスリゴマスリ

魔王「は、はあ」

戦魔将軍「貴様、さらっと裏切るんじゃないっっっ!」

戦魔副長「いやー大将、やっぱり俺らもどっちかってぇーと死にたくないし?」

戦魔副長「ほら皆も大将と心中するくらいなら、あっしが将軍やった方が、実は良いって思ってますから」

戦魔副長「なーみんな?」

戦魔将軍「何だとぉぉぉぉっっ!?!?」

戦魔兵「は? 副長が将軍とか無いだろ」

戦魔兵「ばーか! 副長何て、怖くてついていけるか!」

戦魔兵「消えろ消えろ!」

戦魔兵「大将一生ついていきます!」

ヤンヤヤンヤ♪

戦魔将軍「お、お前ら…」

戦魔副長「まあと言う訳で、大将が死ぬと、いつか乗っ取ろうとしている戦魔軍が無くなる訳で、そうなるとあっしも困った話になる訳で…」

戦魔将軍「…」

戦魔副長「大将のために死ねる何て良いやつらじゃ無いですか」

戦魔副長「大将は本当にあいつら死なせて構わないと思っているんですかい?」

戦魔将軍「!」

戦魔副長「勿論お嬢たちの事も」

戦魔将軍「…」

戦魔副長「…」ポン(肩を叩く)

戦魔副長「あっしらの事を第一に考えて良い魔王様じゃ無いですか…」

戦魔副長「仕えなくても、信じるくらいしても良いんじゃないんですかね?」

戦魔将軍「…」

戦魔副長「…そろそろお嬢を理由に背負ってた肩の荷…全部降ろしましょーや大将」

戦魔将軍「…」

魔族っ子「お父さん」

戦魔副長「ね?」

戦魔将軍「やかましい」ゴチ

戦魔副長「あいた」

戦魔将軍「…勝手にしろ」

戦魔副長「お」

魔族っ子「お父さん!」

戦魔副長「魔王様~と言う訳でこっちの事情はOKですわ」

戦魔将軍「ふん」

魔王「え…」

魔王「えええ!?」

魔王「す、凄いです! 副長さん、説得の神様ですか!?」

戦魔副長「いや…魔族に神様とか…はは、本当に面白い魔王様ですね~」

魔王「そんな事無いですよ。本当に尊敬します!」

戦魔副長「いや~何かそんなに言われると照れちまいますね…へへへ」

戦魔将軍「調子に乗るな」ドカ

戦魔副長「いた! ちょ大将の蹴りは普通と違うんですから、簡単に蹴るの止めて下さいよ」

戦魔将軍「ほう…そんな事で痛がっては後が持たないぞ」

戦魔副長「へ? 後?」

戦魔将軍「儂を首にして将軍になるのだろう? 脳筋の儂より適任らしいからな」

戦魔副長「え(汗)」

戦魔将軍「だから将軍に相応しいか、後でたっぷり見極めてやる…楽しみにしていろ」

戦魔副長「そ、そこでそれ言います?」

戦魔将軍「当たり前だ! 馬鹿者め!!」

戦魔副長「ひええええ!」

一同「はははははは!」

戦魔将軍「よし…お前ら聞けぃ!」

戦魔軍一同「…」ピタッ

戦魔将軍「戦魔軍は長きに渡って、この地に留まり、戦いを続けて来たが…こほん」

戦魔将軍「大変不本意ではあるが…魔王子殿に帰属する、あくまで暫定的に帰属する事によって…」

魔王「はは…(汗)」

戦魔将軍「一旦全ての戦闘を停止する」

戦魔将軍「今日までこんな儂についてきて、長きに渡りよく戦い抜いてきた!」

戦魔将軍「お前らは儂の誇りだ! 礼を言うぞ!」

戦魔将軍「ありがとうでござるっっっ!」

戦魔兵「おーーーーー!!!」

勇者「…」

勇者(マジかよ…本当に説得しやがった…)

戦魔将軍「それで魔王子殿?」

魔王「はい?」

戦魔将軍「儂らはここを出てどこへ向かえば良いのだ?」

魔王「え? あ」

戦魔将軍「?」

魔王(そ、そう言えば何処なんでしょう…?)


続く

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