第14話 魔王「みんなで力を合わせて頑張りましょう!」

戦魔将軍「それで儂らは何処に行けば良いのだ?」

魔王(あ、そう言えば…何処に移住して貰うのか聞いて無かったな…)

魔王(一体何処なんだろう?)

魔王(勇者さんとかご存じかな?)

魔王「えーと…」チラ

勇者「んだよ」

魔王「あのそのですね。戦魔将軍さんたちは何処に移住すれば良いか聞いてますか?」

勇者「は? 知らねーし」

魔王「え!?」

魔王「だって勇者さん人間側なのに何も聞いて無いんですか?」

勇者「は? な、何だよそのアタシだけハブられてるから言われなかったんじゃ無いんですか? って聞き方は?///」

魔王「え? そ、そんなつもりで言った訳じゃ無いですけど」

勇者「い、言っとくけどな、ハブられてる訳じゃないんだからな? ただ単にアタシが聞きそびれただけだからな?」

勇者「マジそこは、か、勘違いするなよ? アタシ色んなダチトモと深い交流関係あるからハブられるとか絶対無いから」

魔王「い、いや、そ、そんな事は別に…」

勇者「分かったな?」ギロ

魔王「は、はあ…分かりました」

魔王(勇者さん、何でそんなに言われなかった事気にしているんだろう?)

魔王(何かあるのかな…?)

参謀「失礼します」

魔王「参謀さん?」

戦魔将軍「ぬ!?」

戦魔将軍「この虫め! まだいたでござるか!!?」

参謀「やれやれ酷い言われようだ」

戦魔将軍「当たり前だ! この裏切り者め!貴様など生かしておいても、ロクな事にならん!」

参謀「私は裏切ったつもりはありませんよ?」

戦魔将軍「抜かせ! 前魔王様が倒れた時、真っ先に人間に寝返った分際で白々しい!」

参謀「貴方の物差しだけで考えられても困ります」スッ(眼鏡位置直し)

戦魔将軍「黙れ! 二度と儂の前に現れぬようこの斧で頭をカチ割ってくれるわ!」

参謀「やれやれ」

魔王「わー! 待ってください戦魔将軍さん、暴力はいけません!」

戦魔将軍「魔王子殿…」

魔王「とにかく参謀さんも私の仲間なのです」

魔王「同じ魔族なのです。同じ魔族同士で血を流すことはありません!」

戦魔将軍「しかし…」

魔王「と、とにかく落ち着いて…」

戦魔将軍「ぬう…お前がそこまで言うなら仕方がない」

戦魔将軍「とりあえずは止めておこう」

参謀「懸命です」ニコ

戦魔将軍「…」イラ

魔王「だ、だから落ち着いて! 参謀さんも煽らないで!」

参謀「それは失礼しました魔王様」

戦魔将軍「ふん! 魔王子殿!」

魔王「はい?」

戦魔将軍「この男…早いうちに追い出した方が身のためだと思うぞ」

戦魔将軍「いつ裏切るか分かったもんじゃ無いからな…ぶつぶつ」

魔王「はあ…」ツカレタ

魔王「それで…何ですか参謀さん?」

参謀「移住先の事ですが、私が神官妹様から聞いていますよ」

魔王「あ、そうなんですか」

勇者「はあ!? 何でアタシに言わないで、お前に言うんだよ!」

参謀「さあ? よく存じませんが、出発の時に思い出すように仰られてたので忘れてたのでは?」

参謀「ああ…そう言えば、貴方に伝えて置いてくれとも言ってましたね」

参謀「私も言うのを忘れてました。申し訳ない」

勇者「!」

勇者「な、なんーだ、そっか言い忘れてただけか、そうだよな」

勇者「たくっ、気を付けろよな!」ゴキゲン

参謀「失礼いたしました」

魔王「それで参謀さん、彼らが暮らす新しい土地は何処なんですか?」

参謀「それは…」スッ(眼鏡位置直し)

参謀「荒れ果ての地です」

ドヨ…。

戦魔兵「荒れ果ての地ってマジかよ…」

戦魔兵「毒の瘴気で、何も育たない魔界一の不毛な土地だぞ…?」

戦魔兵「ちょっと…流石にそれは」

ザワザワザワ…。

戦魔副長「…荒れ果ての地か…はは…こいつわ…」

魔族っ子「…」

魔族っ子幼「ねーね?」

戦魔将軍「むうう…」

魔王「? ちょっと皆さんど、どうしたんですか?」

参謀「戦魔軍の反応はもっともで御座いますよ魔王様」

魔王「参謀さん、それはどういう意味ですか?」

参謀「それは荒れ果ての地が、魔界一不毛な土地であると知っているからです」

魔王「不毛?」

参謀「はい、呪いによって、常に毒の瘴気が立ち込め、草木一本生えない土地なのです」

参謀「流石にそんな土地で一から頑張ろうとは思えないのでしょうね」

参謀「だから皆さん戸惑っているのかと思います」

魔王「土地全体に毒…」

参謀「はい毒です」

魔王「確かにそれは厄介ですね…」

参謀「はい」

魔王「でも…諦めなければ、きっと切り抜けられます」

魔王「皆さん!」

戦魔軍一同「…?」ザワザワザワ

魔王「毒の土地で暮らすのは嫌かも知れませんが、ご安心下さい!」

魔王「毒なんて掃除して綺麗にすれば良いだけの話です!」

戦魔兵「綺麗にってどうやって?」

戦魔兵「無理だろ…」

魔王「無理じゃありません! 土地に呪いの毒がかかっているなら、全ての土地に呪いと毒を解呪させる魔法を使えば直せない事はありません」

戦魔兵「え? か、解呪の魔法って、あの広大な土地に全部かける気なんすか?」

魔王「はい! 確かに私一人の力では大変ですが、皆さんと力を合わせれば、きっと出きる筈です!」

戦魔兵「いやいやいや…俺たち魔法専門じゃ無いし、む、無理ですよ」

戦魔兵「と言うか…この魔王様、ちょっと現実知らなすぎじゃ…」

魔王「え…」

戦魔兵「だって魔法のあのちょろっとしかない効果範囲を考えたら子供だって無理だって分かりますよ?」

魔王「そ、そんな事ありません! 確かに大変ですが、やり続ければいつかは全ての土地を浄化する事は可能です!」

戦魔兵「い、いやそれはそうですけど…その間の毒とか…ね?」

戦魔兵たち「ヒソヒソヒソ…」

魔王「皆さん! お願いします! 僕を信じてください!」

魔王「やり続ければ毒は必ず消えます!」

魔王「肝心なのは諦めずにやり通す事です!」

魔王「戦魔軍のお強い皆さんならきっと乗り越えられますよ!」

戦魔将軍「!」

戦魔兵「って、言ってもなぁ~…」

戦魔将軍「やかましいお前ら!」

戦魔兵たち「!」

戦魔将軍「一度ついていくと決めたのだ! ウダウダ言わず黙って従え!」

戦魔将軍「それに魔王子殿は、貴様らの強さを見込んで言ってるんだぞ!」

戦魔将軍「その期待に応えられてこそ誇りある戦魔軍の兵だ!」

戦魔兵たち「!」

戦魔将軍「分かったか!?」

戦魔兵「はっ!」ビシ

魔王「せ、戦魔将軍さんありがとうございます」

戦魔将軍「何気にするな…」

戦魔将軍「とは言え、儂も少々迷ってしまったでごさるから、偉そうに言える立場でも無いがな」

魔王「戦魔将軍さんが、迷うなんて…荒れ果ての地と言う場所はそんなに酷い所なのですか?」

戦魔将軍「うむ…かつて修行のためその地を赴いた事もあったが…魔族の住むところではないな」

魔王「ええ…! そんなに何ですか!?」

戦魔将軍「ああ」

魔王「そ、そうなんですか…」ウナダレ

戦魔将軍「後悔したか?」

魔王「す、少し…」

戦魔将軍「ふ…素直でござるな」

魔王「はい…でも」

戦魔将軍「?」

魔王「ちょっと不謹慎ですけど、見るのが楽しみでもあります」

戦魔将軍「楽しみ…? 何故でござるか?」

魔王「は、はい、僕は魔王城からあまり出た事が無かったので、見たことない土地に行くのはちょっと興味があって…はは」

戦魔将軍「成る程初めてだからと言う訳か」

魔王「はいそうです。でもそんなに酷い土地だとは、想像も及びませんでした…」

魔王「ちょっと早計であったことは否めませんね」ガックリ

戦魔将軍「ふ…まあそれでも成せばなるんだろう? その意気で頑張れ!」カタドン!

魔王「うわ!」

戦魔将軍「浄化は儂も手伝ってやるからな!」

魔王「え? せ、戦魔将軍さんが? ありがとうございます!」

戦魔将軍「…ふ」

戦魔将軍「よーしお前ら引っ越しの準備をするぞ!」

戦魔将軍「目ぼしい物を持って出発…」

魔王「あ、ちょっと待ってください戦魔将軍さん」

戦魔将軍「? 何だ?」

魔王「一応引っ越しをする前に、ここにあるものを持っていって構わないか確認を取ってきます」

戦魔将軍「ここにあるのは元々我らの物ぞ? 奴らに断る理由など無いでごさるが?」

魔王「それは分かりますが、一応聞いておかないと、後で色々あったら面倒だと思うので…」

戦魔将軍「むうう、納得いかんぞ…それは」イラ

魔王「いやあのだから…」

神官妹「構いませんよ」

戦魔将軍「ぬ?」

魔王「神官妹さん!」

神官姉「…」パタパタ(魔王に手を振る)

魔王「?」

魔王「ど、どうも神官姉さんも」パタパタ(手を振り返す)

神官姉「…!///」

神官姉「♪///」

魔王「?」

魔王「そ、それで構わないと言うのは?」

神官妹「ニブチンですね。私物は全部持っていって良いと言うことですよ」

魔王「ほ、本当ですか!?」

神官妹「私たちは魔石鉱脈さえあれば良いですから」

魔王「あ、ありがとうございます!」

神官妹「全くせっかく成功した交渉を台無しにする気ですか」

神官妹「よくそんな下手な交渉しか出来なくて、説得したいなんて言い出せた物ですね」

魔王「はは…す、すいません」

神官妹「さあ、こちらは今日にでも魔石発掘に取りかかりたいので」

神官妹「邪魔な貴方たちは、お早くお引っ越しをする準備をしてくださいな」

戦魔兵たち「チッ…ナンダヨ…エラソウニシヤガッテ…ニンゲンノクセニ」ドヨ

戦魔将軍「…気にするな!」

魔王「あ、後!」

神官妹「はい?」

魔王「私物ってあの時計台とかお墓とか、魔族たちの私物なら、何でも持っていって良いんですよね?」

魔族っ子(! 魔王…私の事もちゃんと覚えてて)

魔族っ子(…♪///)

神官妹「時計台…」チラ

時計台「ウッスジブン150㌧ッス」

神官妹「…どうぞ、持っていく労力をそちらで出して頂けるなら」

魔王「本当ですか!? ありがとうございます!」

戦魔将軍「…」

戦魔将軍(もしかしてあれを運ぶ算段を、儂の剛力に期待してるんじゃ無かろうか…)

時計台「ウッスウッスジブン150㌧ッス」

戦魔将軍(…ばらして持っていっても何日かかるだろうか?)

戦魔将軍(ま、まあ魔族っ子のためだから、やっても…かま…わんが…;)

神官妹「特別に全部運ぶまで時間も上げますので、まあその…頑張ってください」

魔王「あ、ありがとうございます! 神官妹さんって優しいんですね!」

神官妹「え…」

神官妹「ふ、普通ですよ。別に///」

神官姉「…ムカ」ギロ

神官妹「え? 何で睨むのお姉ちゃん」

勇者(メンドクセー事してんなー)

勇者(こだわらないで捨てちまえば楽なのによ)

勇者「ふぁ~~」

勇者「つまんね…」

戦魔将軍「よーしじゃあ今度こそ…」

魔王「あ、待って下さい戦魔将軍さん」

戦魔将軍「今度は何だ…?」

魔王「荷物はそのままで大丈夫ですけど」

戦魔将軍「…荷物をまとめなきゃ街から出れないだろうが」

魔王「…? 街は出ませんけど」

一同「…」

一同「はい!?」

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