第8話 魔王「戦魔将軍さんは良い魔族?」
戦魔将軍「儂が戦魔将軍で!」
戦魔将軍「ござる!!」
魔王 (ござるって…)
魔王(どこの国の言葉だ…?)
魔王(でも厳めしい顔で筋骨粒々の)
魔王(如何にも魔族の戦士らしい戦魔将軍さんにはあっているような…)
魔王(いややっぱり何かおかしいー!)クスクス
戦魔将軍「ん? 何でござるか、この子供は…」
魔族っ子幼「チビのにーにだよ、おとーさん!」
戦魔将軍「何、チビ…でこざるか」
魔族っ子幼「うん!」
魔王「チビを定着させないで!」
戦魔将軍「魔族っ子幼…」
魔族っ子幼「うん?」
戦魔将軍「いかんぞぉぉぉぉ!!!」
魔族っ子幼「ぴっ」
戦魔将軍「他の者の身体を見て馬鹿にするような事を言うやつは」
戦魔将軍「クズだ!ダメなやつのする事だ!」
魔族っ子幼「ぴいいいい…」フルフル
戦魔将軍「そしてそれは武死道ブシドーに反する事でござる!」
魔族っ子幼「ぴ!?」
戦魔将軍「武死道を守れぬ者は武死騎士ブシキシにあらず…」
戦魔将軍「魔族っ子幼…お前は立派な武死騎士になりたくないのかぁぁぁ!!?」
魔族っ子幼「!?」
魔族っ子幼「うんん!」フルフル
魔族っ子幼「なりたい! おとーさんみたいな立派な武死騎士になりたい!」
魔族っ子幼「だからもう悪いこといわないっ!」
戦魔将軍「よし良い子だな、魔族っ子幼は」ナデナデ
魔族っ子幼「えへへ」
魔族っ子幼「あ! じゃあねーねも言ってたから、めっしないと」
戦魔将軍「ぬぁにぃ!?!?」ギロ
魔族っ子「いやあの…えへへ」
戦魔将軍「ぬぅん!!」ドン!
魔族っ子「いやその…ごめんなさい」
戦魔将軍「儂にでは無いでござろう!」
魔族っ子「はい…」
魔王(戦魔将軍さんって…)
魔王(…悪い事をした子は、ちゃんと叱ったりして)
魔王(え…実は良い魔族?)
魔族っ子「あの…」
魔族っ子幼「あの」
魔王(あ…チビって言ったこと謝ってくれるのかな?)
魔族っ子「チビって言って悪かったなチビ」
魔族っ子幼「ごめんなさいなの、チビのにーに」
戦魔将軍「良くちゃんと謝れたなお前たちは、偉いでござるぞ」なでなで
魔族っ子&幼「えへへ…」
魔王「いやおかしいでしょ!!!!」
魔族っ子「何故だちゃんと謝ったぞ」
魔王「いや結局チビって言ったら意味無いでしょ!」
魔族っ子幼「そうなの?」首かしげ
魔王「そうなの!」
戦魔将軍「がっはっはっは」
戦魔将軍「謝る気持ちがあれば形などどうでも良いのでござる!」
魔王「いや全然良くないから!」
戦魔将軍「何、男が細かい事をイチイチ気にするな!」
戦魔将軍「おなごの言う事くらいドンと受け止められてこそ男でござるぞ?」
魔王「何この魔族暑苦しすぎ!」
魔王(滅茶苦茶な魔族だな~)
魔王(でも何か…ちょっといいかな…こう言うの)
魔族っ子「名前呼べって言っても、私はあんたの名前とか聞いてないんだけど?」
魔王「あ、そっか僕は…」
戦魔将軍「さて! 楽しく話してるところ悪いが…これ以上は時間が無いようでござる」
魔族っ子&魔王「え?」
魔族っ子幼「?」
戦魔将軍「貴様の魔力はこの街に入ってきた時から気づいていたでござるぞ」
戦魔将軍「勇者!」
勇者「…どーも」
魔族っ子「ゆ、勇者」ゴクリ
魔族っ子幼「?」
勇者「戦ってないのに良く分かったっつーか、何アタシの魔力の感じ知ってるの?」
勇者「魔族に覚えられるなんて、チョーキモイんですけど」
戦魔将軍「前魔王様が倒された時、魔王城から感じていたでござるからな」
戦魔将軍「貴様の魔王様を超える圧倒的で強大な魔力を遠くから感じて」
戦魔将軍「儂は生まれて初めて、これほどの力を持った者がいることに歓喜した」
戦魔将軍「そして儂は後悔したでござる」
戦魔将軍「お前のような戦士と、前魔王様と供に戦えなかった事をな!」
勇者「それで…?」
戦魔将軍「我!!」
戦魔将軍「ついに死に場所見つけたり!」ブンブン(斧グルグル)
戦魔将軍「我魔王軍最後のもののふとして! 最後まで全力で戦い!!」
戦魔将軍「あの世に行った時に、前魔王様に聞かせる土産話にしてくれようぞ!」
戦魔将軍「さあ勇者! いざ尋常に勝負勝負!!」
勇者「はあ」
戦魔将軍「と言う訳だ坊主!」
魔王「え?」
戦魔将軍「二人を連れて逃げてくれんか?」
魔王「はい?」
魔族っ子「ちょ、ちょっとお父さんそれはどう言う」
魔族っ子幼「?」
戦魔将軍「すまんな魔族っ子!」
戦魔将軍「お前たちの故郷だけは、人間の手から守ってやりたかったでござるが」
戦魔将軍「勇者が相手では、ちと無理そうだ」ニヤ
戦魔将軍「だが、この戦魔将軍…!」
戦魔将軍「血肉一欠片まで戦い抜き、最後のその時までお前の故郷は守り続けてやる!」
戦魔将軍「たとえ死ぬことになってもな!」
戦魔将軍「だからまあ…それで勘弁しろ」
魔族っ子「おと…うさん」
魔族っ子「…」
魔族っ子「もう…いいよ」
戦魔将軍「ぬ?」
魔族っ子「もう故郷なんていいから!」
魔族っ子「だから一緒に逃げよう!」
魔族っ子「お願いだから!」
魔族っ子「お願い…だから」グス
戦魔将軍「魔族っ子…」
戦魔将軍「…すまんな、それも無理そうでござる」
魔族っ子「え?」
戦魔将軍「言ったろ、勇者相手じゃ無理だと」
戦魔将軍「勇者相手では、逃げることすら叶わんだろう」
魔族っ子「そ、そんな」フルフル
戦魔将軍「だが、お前らを逃がす時間だけは、儂が命に換えても作るでござる!」
戦魔将軍「だからいつか立派な武死騎士になって、お前ら二人の力で取り戻せ!」
戦魔将軍「お前らの故郷をな!」
魔族っ子「お、お父さん…」ポロポロ
魔族っ子幼「ねーね…泣いてるの?」
戦魔将軍「たった少しの間だけだったが、お前らと家族になれて、儂は嬉しかったぞ!」
魔族っ子「おとーーーさーーーん!!」
魔王(…何か、知らないところで感動的な物語があった的なみたいな感じになってますけどー?)
勇者「おーい? もうこいつ死ぬ気満々みたいだから、殺しても良いんじゃね?」
魔王「駄目ですよ!! 約束は僕が死にそうになったらでしょう!?」
勇者「ち…」プイッ
戦魔将軍「…? 小僧…何故勇者と親しげに話す」
魔王「あ、は、はい!」
魔王(な、なんか知らないけど話す機会を作れたぞ…!)
魔王(この機会に何としてでも、戦いを止めるよう説得しなければ)
戦魔将軍「小僧…まさかお前…」
魔王「あ、はいそうです!」
魔王「僕は貴方が戦いを止めるように、説得しに…」
戦魔将軍「やはりそうかぁぁぁああ!!!」ビリビリ
魔王「ひえ!」
戦魔将軍「魔族っ子、そいつから離れろ」
魔族っ子「うん…お父さん」ギロ
魔王「え? な、何突然」
戦魔将軍「人間は 戦に負け誇りを失った魔族に、説得させると言う薄汚い真似を何度かしてきていたが…」
魔王「え…な何の話…」
戦魔将軍「まさかこんな魔族の子供にまで、そんな真似をさせるとは…」
戦魔将軍「人間はここまで薄汚い生き物なのか…!」ギリギリ
魔王「ちょっとあの…」
戦魔将軍「小僧! お前はまだ若い!」
戦魔将軍「人間の手伝いなど止めろ! 魔族の誇りを失うな!」
魔王「…えっと」
戦魔将軍「んんんん!?」ギロリン
魔王「…」
魔王「…と、取り敢えず武器を置いて、平和的に話しませんか?」
戦魔将軍「置くかぁぁぁああ!!!」ビリビリ!!
魔王「わひぇっ!」
魔王「…」
魔王「で、ですよねー」
参謀「やれやれ相変わらず困ったお人だ」
戦魔将軍「ぬ!?」
戦魔将軍「き、貴様は…」プルプル
参謀「どうも久方ぶりです」
戦魔将軍「裏切りものがぁぁぁああ!!!」ビリビリ!!
参謀「開口一発目がそれですか」
戦魔将軍「当たり前だぁぁぁああ!!!」
戦魔将軍「この獅子身中のゴミ虫めがぁぁぁああ!!!」
参謀「やれやれ酷い言われようだ」
戦魔将軍「しかしこれぞ僥倖!」
参謀「はい?」
戦魔将軍「勇者と戦って果てる前に一番殺したかった奴が目の前に現れたのだからなぁぁぁああ!!!」
参謀「まあ私の事はともあれ」
参謀「魔王様の命令ですよ」
参謀「旧とは言え貴方もれっきとした魔王軍の一人」
参謀「魔王様の命令を素直に聞くのは、配下の務めではないのですかね?」
戦魔将軍「何を世迷言を…」
戦魔将軍「前魔王様はとっくに亡くなられたわ!」
参謀「私は前魔王様の事を言っている訳ではありませんよ」
戦魔将軍「ぬ」
参謀「私は新しい魔王様の命令を聞けと言っているのです」
戦魔将軍「新しい…だと?」
参謀「そちらの貴方が小僧と言ったお方の顔をお忘れですか?」
参謀「前魔王のご子息であられますよ?」
戦魔将軍「何っ!」
魔族っ子「え!」
魔王「ど、どうも…」
続く
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