第7話 魔王「戦魔将軍さんに会いに来ました」

~魔石鉱脈がある街~

魔王(魔石鉱脈がある街か…)

魔王(来るのは久しぶりだな)

魔王(あんまり城の外には出してもらえなかったけど)

魔王(ここは城から近い事もあって何度か来た事もあったけ…)

魔王 (しかし…)

魔王(記憶にあった景観と比べて、どこの建物もボロボロだ…)

魔王「参謀さん」

参謀「はい何で御座いましょうか魔王様」

魔王「ここには勇者は来なかったのでは無いでしょうか?」

魔王「何故こんなにボロボロに?」

参謀「はい、それは人間の軍隊との交戦の跡かと存じます」

魔王「人間の…軍隊?」

参謀「はい、魔界に侵攻してきたのは勇者だけではありません」

参謀「後から街を占領するための軍隊も、王国は送りこんできたのです」

参謀「恐らくこの惨状は、ここに駐留していた戦魔将軍と人間たちが争った後かと思います」

魔王「人間たちと戦魔将軍が?」

参謀「はい、そのように伺っております」

参謀「ほら、あそこに人間や魔族の死体が御座います」

魔王「!」

魔王「…酷い」

参謀「人間たちの軍隊は、基本的に勇者が無力化した街を略奪…こほん、占領していたのですが」

参謀「きっとここに来た人間たちは、ここに戦魔将軍がいた事を知らなかったのでしょうね」

参謀「たぶん建物をボロボロにしたのも、人間ではなくて、戦魔将軍自身かと思います」

魔王「戦魔将軍が…!?」

参謀「はい、何分力任せに戦う、とても粗っぽい御仁なので」

魔王「えええ…」

魔王(そ、そんなに粗っぽいのか…)

魔王(昔遠目に見たときは、ちょっと武人ぽい感じがしたから)

魔王(腹をわって話せば分かりあえるんじゃないかって思ったんだけど…)

魔王「あの参謀さん…」

参謀「はい?」

魔王「ちなみにその魔族聞く耳と言うのは持っていますか?」

参謀「持っていませんね」ニッコリ&即答。

魔王「ですよねー」

参謀「はい」ニッコリ。

魔王「はあ…」

魔王(本当にどうしよう…何かここに来てとてつもなく不安になってきたぞ)

魔王(いやいやいや…ここで僕が頑張らなければ、この街の魔族の皆さんの命が…!)

魔王(そうだ頑張らないと…頑張って説得するぞ)

神官妹「つきました」

魔王「説得するぞ…説得するぞ…」ブツブツ。

神官妹「あの魔王様?」

魔王「大丈夫…大丈夫…」

神官妹「あの魔王様ー!?」

魔王「わあ!!」

神官妹「きゃ!」

魔王「び、ビックリした…」

神官妹「そ、それはこっちのセリフですよ」

魔王「す、すみません…そ、それで何でしょうか?」

神官妹「いえ、戦魔将軍が立て籠っている建物についたので」

魔王「え、あ、そ、そうですか」

神官妹「はい(大丈夫かこいつ…)」

神官妹「ではここから先は、貴方たち三人でお願いします」

勇者「…ふん」

参謀「…ふ」

魔王「え? 神官妹さんは来ないのですか?」

神官妹「正直命の危険もあるし、私は勇者のように強くは無いので、ご遠慮させて頂きます」

魔王「命の危険…!?」

神官妹「はい、では御武運を」

神官妹「勇者も私情に囚われず、任務を全うするのですよ」スタスタスタ(早足)

勇者「けっ、逃げながら言ってもしまらないってーの」

魔王「命の…危険」

勇者「何モタモタしてるんだよ…さっさと行け」ドカ(背中蹴り)

魔王「あっ待って下さい。心の準備が…」

勇者「心の準備じゃねーんだよ!」

勇者「お前が駄々こねるからこんなメンドクセー事になってるんだろ!」

勇者「良いから行け!」ドカドカ(連続背中蹴り)

魔王「あ、け、蹴らないで…;」

勇者「うっせ、あれだけ啖呵切っといて、何情けねー事言ってんだ)

勇者「それとも? 今更になってビビって~止めたくなってきちゃいまちたか? プププ」

魔王「ムカ…」

魔王「そ、そんな事無いですよー!」

魔王「勇者さんこそ、僕が殺されそうになるまで、絶対に手を出さないで下さいね!」

勇者「あー善処するわ」

魔王「善処じゃなくて絶対です!」

勇者「へいへい」

???「止まれ!」

勇者「!」

魔王「な、何ですか?」

参謀「魔王様あれを」

魔王「あれは…魔族の子供?」

魔王「ここには戦魔将軍の軍隊しかいなかったんじゃ…」

魔王「どういう事ですか勇者さん!」

勇者「は? 知らね」

魔王「知らないじゃ無いですよ!」

魔王「貴方は…貴方たちは、あんな子供まで皆殺しにしようとしてたんですか!?」

勇者「そりゃーまー…」

勇者「魔族なんかどーでも良いっつーか」

勇者「あのそのゴニョゴニョ」バツワル

魔族っ子「やいお前ら私を無視するな!」

魔族っ子「お前たちは何しに来た!」

魔族っ子幼「なにしにきたー!」

魔王「あ、もう一人子供がいたんですね」

魔族っ子「む…子供扱いするな!」

魔族っ子幼「するなー!」

魔族っ子「お前だって子供じゃないか!」

魔族っ子幼「じゃないかー!」

魔王「あ、そ、そうだね。ごめんね」

魔族っ子「ふん、それより何しに来た!」

魔族っ子幼「きた!」

魔族っ子「またこの土地を狙ってやって来たのか! 下賎な人間め!」

魔族っ子幼「げせん…?」

魔族っ子幼「…めー!」

魔王「ち、違う違う、僕も魔族ですよ」

魔王「ほら角もあるし」

魔族っ子「…ふん、確かに魔族みたいだな」

魔族っ子「チビだけど」

魔族っ子幼「けど!」

魔王「いやチビにチビとか言われたくないんだけど!?」

魔族っ子「いや私の方がお前より1センチは高い」

魔族っ子「だからお前の方がチビだ」

魔族っ子幼「だー!」

魔王「は、はあ? そ、そんな僅かの差、適当に言ってるんじゃ無いですか!?」

勇者(すげー動揺してるな…結構背の事は気にしてるのか?)

魔族っ子「じゃあ勝負してみるか?」

魔族っ子幼「みるかー!」

魔王「しょ、勝負?」

魔族っ子「そうだ勝負だ」

魔族っ子「お互い身長を測って、どちらの言い分が正しいか決めるんだ」

魔族っ子幼「わーいわーい勝負勝負ー!」

魔王「べ、別にそこまでやらなくても…」

魔族っ子「怖じけついたのか?」ニヤリ

魔族っ子「こっちは別に勝負しなくても良いんだよ?」

魔族っ子「何せ勝負をしなくても、私の方が背が高いのは決まっているのだから」

魔族っ子幼「だからー!」

魔王「な…! い、良いですよ、勝負しようじゃないですか」

魔王「貴女こそ、負けたからと言って、泣き言いわないでくださいよ!?」

魔族っ子「…ふ…勿論」ニヤリ

~勝負中~

魔族っ子幼「ねーねが2センチたかいから、かちー!」クルリンクルリン

魔王「ま、負けた…」

魔王「しかも1センチも多く…」ガックシ

魔族っ子「だから言ったのだチィビ!」

魔族っ子幼「ちびーちびー!」

魔王「お願いだからチビを強調して言わないで!TT」

魔族っ子「ふふん」

魔族っ子「で?」

魔王「はい?」しくしく。

魔族っ子「お前は何しに来たんだ?」

魔王「はっ!」

魔王(目的すっかり忘れてたー!)

魔王(早く説得しないと、勇者さんに魔族が、この子たちが皆殺しにされちゃう!)

魔王(馬鹿なことやってたから、またイライラしてるんじゃ…)チラ

勇者「…」

勇者「…!」キッ

魔王(睨まれた! やっぱり怒ってる!?)

勇者「…」

勇者「…」プイッ

魔王(…? 目を逸らした?)

魔王(何でだ? まさかさっきの子供の話を気にして?)

魔王 (いや…まさかね)

魔王(それより早く戦魔将軍を説得しなきゃ)

魔王(本当に勇者さんにこの子たちも殺されちゃう!)

魔族っ子「おい聞いているのか?」

魔族っ子幼「のかー?」

魔王「あ、ああうん、あのね」

魔王「戦魔将軍がここにいるって聞いてるんだけど」

魔王「どこにいるのかな?」

魔族っ子「戦魔将軍…」

魔族っ子「ああ、お前は戦争孤児か」

魔族っ子「だからここに保護を求め難民しに来たって訳か」

魔族っ子「お前は弱そうだからな、それは正しい判断だな」

魔王「はは…」

魔族っ子「チビだし」

魔王「お願いだからチビから離れて!」

魔族っ子幼「チビのにーにも、おとーさんに、まもられにきたの?」

魔王「だからチビは…」

魔王「ん? おとーさん…?」

???「ぬううううぅぅぅぅぅんんんん!!!!」

魔王「へ?」

遥か頭上から唐突に響き渡る雄叫び。

魔王がその声の方向へと、目を向けようと空を仰ぐと。

その眼前には、黒く大きな物が「落ちてきている」ところだった。

魔王「……っぁうああああぁぁぁああ!!!」

???「ふんっっっ!!!」ズウーン!!

魔王「どわっ!」フキトバサレー

魔王「く…」

魔王「…!」

魔王「あ、あの魔族は…」

魔族っ子「…お父さん」

???「儂がっ!」

魔王「せ、戦魔将…」

戦魔将軍「戦魔将軍でっっっっ!!!」

戦魔将軍「ござるっっっ!!!!」

魔王「へっ?」


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