第3話 魔王「無条件降伏についての会談が始まりました」
メイド「失礼します」コンコン
魔王(あの魔族一倍プライドの高い妖魔将軍の心を折るなんて…)
魔王(一体勇者はどんなに恐ろしい拷問をしたのでしょう…)
魔王(…な、何か考えると余計に怖くなってきました)
魔王(この部屋に入った瞬間僕は拷問をされてしまうのでは…)
魔王 (いやいやいや…)
魔王(いくらなんでもいきなりそれは…無いですよね)
参謀「魔王様?」
魔王「はははい!」
参謀「…! と」
魔王「なななんですか参謀さん!」
参謀「いえ、もう扉は開いているので、早く入らないと失礼になるかと」
魔王「あ…!」
メイド「ど、どうぞ」
魔王「す、すみません!」
魔王「し、失礼します!」
部屋の一同「…」ジー。
魔王「…あ」
魔王「あ、あの…ま、魔王です」ペコ
魔王(何か良く考えたら、流れで来ちゃったけど)
魔王(そう言えばこう言う政治的な物事に参加するのって初めてだった)
魔王(父上は私が反戦的な事を言うから、まつりごとからは遠ざけていましたからね)
魔王(そう思ったら、何だかき、緊張してきました)
魔王(う、上手く会談など私に出来るのでしょうか…?)アセアセ
大臣「…」
大臣(ふん…確かにあの参謀とか言う魔族の言う通りだったな)
大臣(これだけ気弱な性格なら、傀儡にするには打ってつけだわ…)
魔王「えと…その」アセアセ
大臣「まあまあ…そう緊張せんで構わんよ魔王君」ニコ
魔王「え?」
大臣「肩の力を抜きたまえ」
大臣「我々は何もこれから争いする訳では無いのだ」
大臣「人間と魔族」
大臣「二つの種族の争いを無くす、平和のための会談をおこなうのだからね」
大臣「その会談の前に君がそんなに力を入れていては」
大臣「弾む話も弾まなくなる」
大臣「違うかね?」
魔王「え、あ、そ、そうですね!」
魔王「あ、ありがとうございます!」ペコペコ
大臣「はは…」
大臣(こいつ本当に魔族か?)
大臣(こんなにあっさり人を信用する魔族なんて初めて見たぞ)
大臣(まあ都合が良くていいがな)ニヤ
魔族(なんだ参謀さんが怖い事を言うから、どんなに恐ろしい人達がいるかと思ったら)
魔王(良い人しかいないじゃないか)
魔王(良かった!)
大臣「では本格的に会談を始めようとしましょう」
大臣「人間と魔族…お互いのより良い未来を築くためにね」
魔王「そうですね!」ニコニコ
大臣「それではとりあえず自己紹介をしておきますか」
大臣「儂は王国の大臣と言う者ですじゃ」
大体「そして両隣に居るのが、従者の神官剣士」
神官姉「神官姉です」
神官妹「神官妹です」
魔王「ど、どうも」
神官姉「神官姉です」
魔王「え? は、はいどうも?」
大臣「そして神官妹のとなり居るのが」
大臣「勇者ですじゃ」
魔王「…え?」
勇者「勇者です」
魔王(…この人が勇者)
魔王(凄い長くてサラサラしてそうな金髪で)
魔王(な、なんと言うか…凄い綺麗な人で…)
魔王(勇者ってこんな美人の女性だったんだ)
魔王(何か知的で凛としてて、見とれちゃうな…)
魔王(何だ、参謀さんが凄い怖い人って言うから身構えちゃったけど)
魔王(そんな事全然無さそうじゃないか)
勇者「よろしく…は言いません」
魔王「よろ…え?」
勇者「私は魔族は嫌いなので、よろしくしたくはありませんので悪しからず」
勇者「…」キッ
魔王「ひ」
魔王(こわっ! 目付き凄いこわっ!)
魔王(ぜ、前言撤回、やっぱり怖そう…)ガグブル
大臣「…ふん」
大臣(案の定勇者に恐れをなしたか)
大臣(魔王の息子と言っても、所詮は子供か)
大臣(…これでどちらが上か十二分に分かっただろう)
大臣(さて…有利になったうちに)
大臣(会談をより良い方向に進めるか)
大臣(人間のためのより良い方向へとな…くくく)
大臣「では自己紹介も終わった事ですし」
大臣「会談を始めますが、よろしいかな魔王様」
魔王「は、はい」
大臣「ではまず最初に…魔族の無条件降伏」
大臣「それを受け入れる際の、王国側の協定に関する条約の取り決め等は」
大臣「国王様から代諾権者を一任された、儂の裁量で決める事になっております」
大臣「留意しておいて下さいませ」
魔王「ダイダク…?」
大臣「国王様の代わりに考えて判断して任されても良い権利の事じゃよ」
大臣「つまり儂が出した協定に関する条約項は全て国王様の判断となり…」
大臣「引いては王国の総意となる」
大臣「まあ簡単に言えば、儂がこの会談において王国側の条約の取り決めや、その決定権を持っている」
大臣「そう言うことですじゃな」
魔王「なるほど! じゃあ大臣様の条約を受け入れれば」
魔王「魔族の無条件降伏を受け入れられると言う事になるんですか?」
大臣「まあ…そう言う事になりますかな」
魔王「そ、それはつまり、人間と魔族はもう争うことなく」
魔王「平和に暮らしていけると言う事になるんですよね!」
大臣「これはこれは中々にさとい」
大臣「流石に魔王直系の血を引きし者ですな」
大臣「ふぉふぉふぉ」
魔王「い、いえ…そんな///」
大臣(本当に愚かな奴じゃな)
大臣(それは魔族が条約に不満を抱かなかった場合に限るじゃろうに…)
大臣(まあ不満が起きた時は)
大臣(お前がその不満を一身に受ける事になるんじゃがな)
大臣(まつり事にも疎いと聞いていたが)
大臣(なるほどこれもあの参謀の言う通りか…)
大臣(食えない男かと思っていたが)
大臣(やつめ…完全に魔族を裏切る気か…)
大臣(まあ頭が良いやつほど切り替えも早いと言うしな…くくく)
大臣「いやあ本当に参謀殿が仰った通り、平和主義の素晴らしい魔王様だ」
魔王「え? い、いえそんな事ありませんよ」パタパタ
大臣「いやいや謙遜なされないでくださいませ」
大臣「あなたのような人が早く魔王になっていれば」
大臣「争いで無駄な血を流すことも無かったのにと…本当にそう思います」
魔王「それは確かに…」
魔王「僕が弱くなければ…もっと強ければ」
魔王「父上を止められて、こんな…こんな魔族と人間が争う事なんて無かったのに…」
魔王「本当に残念で仕方がありません…」
勇者「…」イラ
勇者「…ぞくが…良いやつ…ふりをするな…」ボソボソ
魔王「え?」
勇者「…」
魔王(あれ…今なんか言っていたような…)
大臣「ともあれ、本当に参謀には素晴らしい魔族を紹介してもらった」
大臣「感謝しますぞ?」
参謀「いえいえ…私の信条は、長いものに巻かれろ、でございますから」
参謀「お気にせずに」ニコ
大臣「ふん」ニヤ
大臣(…ふん、やはり頭の良い男か…)
大臣(時勢を読み、誰に付き従えば良いか分かっていると見える)
大臣(だが所詮は裏切り者)
大臣(信用にはおけん)
大臣(ある程度魔王を手懐けたら)
大臣(もはや必要はない)
大臣(その時は勇者に始末してもらうとするか)
大臣(まあそれまでの命は預けて置いてやる)ジー
参謀「…?」
参謀「…! ふふ」ニコ
大臣「ふん」ニヤ
大臣(笑っているわ…)
大臣(参謀でもこの程度か…)
大臣(全く魔族と言うのは馬鹿ばかりだな…くく)
大臣「では魔族の無条件降伏を受け入れる」
大臣「それを認めるに当たって」
大臣「人間側はまず戦後賠償を求める」
大臣「良いですかな?」
魔王「は、はい」
魔王「目が覚めたばかりの状況で」
魔王「この十年で、正直人間と魔族の間に、どんな事があったのか分かりません」
魔王「しかし一方的に人間の世界に攻めこんで」
魔王「人間に多大な迷惑をかけた事は、想像に難しくありません」
魔王「ですから魔族は、人間に償いをしなくてはいけない事だけは分かります」
魔王「その為の賠償と言うなら、慎んでお受けしましょう」
参謀「…」
大臣(…いきなりこちらの条件を全てを受け入れると言うのか…)
大臣(本当に甘いな)
大臣(まあすんなりと受け入れられる、条件では無いと思うからな)
大臣(こちらはごねた時の事を考えておくか)
大臣(とは言っても、ごねたらごねたで)
大臣(勇者を使って脅せば良いだけの話だからな…くくく)
勇者 (…)
勇者(ふん…大臣のやつ、アタシを脅しの材料に)
勇者(トンでもない賠償の提示額を吹っ掛ける気か…)
勇者 (まあ、いいさ)
勇者(それで生み出される利益は、アタシも頂くからね)
勇者(勇者ビジネスは魔王倒してから本番)
勇者(苦労して魔王を倒した分)
勇者(老後まで存分にセレブティーな人生を歩ませてもらいますからね~)ニヤ
勇者(臭い魔族なんか…)
勇者(魔族なんか、みんな臭いから死ねば良いですが)
勇者(簡単に死んでは面白くないし?)
勇者(魔族は、アタシが一生贅沢して生きるための利益を生み出すために)
勇者(奴隷にして、死ぬまで働き潰す)
勇者(臭い癖に、無駄にプライドだけ高い魔族に)
勇者(最高に屈辱的な扱いを与えてやろうじゃない)ニヤ
大臣「まず第一のこちらが提示する賠償条件は」
大臣「魔界全土の採掘された魔石およびこれから採掘される物」
大臣「所有権と採掘権の全ての譲渡」
勇者(…! 大臣め…いきなり大きく踏み込んできたな」
勇者(魔石は魔界のライフラインを維持するエネルギー源の1つ)
勇者(今の魔界において、生活レベルを落とさ無いために必要な魔石は)
勇者(魔界全土の魔石量の最低でも70%は必要と言われている)
勇者(それを全て奪うと言うのだから…)
勇者(流石に許容出来るレベルじゃ無いだろう)
勇者(まあ先に高い値段を吹っ掛けて、徐々に値段を下げて行き)
勇者(そして本来の目的の値に持っていたところで了承させるって感じの思惑なんだろうが)
勇者(最初に高い値段を見せられれば、トンでもない額でも安く見えるもんだからな)
勇者(商人が良く使う手だ)
勇者(ありきたりだが結構効果的かもね~)
勇者(さて、あの魔王の小僧はどうでるかね…)
魔王「分かりました」
勇者「…!?」
魔王「?」
勇者「…」ヘイゼン
勇者(…と危ない危ない)
勇者(あまりのアホな返答に動揺が顔に出るところだった)
勇者 (そういやこいつ)
勇者(会談…と言う以前に)
勇者(政治的な事に関しては、生まれて初めて参加するんだったか)
勇者(そりゃ分からなくて、アホな発言が飛び出ても仕方ないよねー)
勇者(つーか、そう言う知恵役やるのは参謀の役目だろ)
勇者(何考えてるんだあいつ)ジッ
参謀「…?」
参謀「…」ニコ
勇者(笑った…? あいつも分かってねーのか?)
勇者(いや…そんな筈は…)
勇者(あいつマジで魔界を裏切って人間側の味方になったつもりなのか?)
勇者 (わかんねー…)
勇者(…まっいいか…この条件で泣きを見るのは、あのクセー魔族の子供だし)
勇者(ここは何も言わずほっとこ…)
大臣「わ、分かりましたって…1%も要らんと言うのか!?」
魔王「はい? それが貴方たちの条件なのでは無いのですか?」
大臣「い、いや…その、それはそうだが」
大臣「都市の機能維持に少し…くらいは…その必要では無いのか?」
勇者(うわ…大臣それ聞いちゃう?)
勇者(何も言わず、そのまま受ければ100%採掘権を手に入れられたのに)
勇者 (ないわーマジないわー…)
勇者(一応世話になってるからあんまし思いたく無かったけど…)
勇者(この人結構ここら辺抜けてるんだよな…)
勇者(自分で会談するって張り切ってたけど)
勇者(話すの下手なんだから)
勇者(交渉ごとは神官妹に任せて置けばいいのに…)
神官妹「あの大臣様…」
勇者「お…」
大臣「な、なんじゃ…神官妹」
神官妹「どうやら魔王様は、まだこう言う会談の場で話し合うには幼いご様子」
神官妹「大臣さまの聡明高き見識の基準でお話をしますと、その追い付けないかと…」
大臣「そ、そうか…」
神官妹「はい、なのでここは単刀直入に、こちらが求める賠償額を提示しては如何かと」
他「う、うむ、そうだな、確かにその方が良さそうだな」
勇者(流石神官妹…上手く大臣を立てて会話を誘導したな)
勇者(交渉ごとに関してはやはり王国一)
勇者(でも…)
神官妹「差し出がましい真似失礼しました」
大臣「いや…いつも助かる」
大臣「信頼しておるのだから、これからもよろしく頼むぞ」
神官妹「それはもちろん…」
神官妹「愛す…敬愛する大臣様の為なら喜んで」
神官妹「ぽっ///」
大臣「あ、ああ…頼む(汗)」
勇者(あの気色悪いオヤジフェチが無ければ言う事は無いんだがな)
勇者(姉も姉で、詳しくは知らないけど、確か性癖に問題があるんだよな)チラ
神官姉「…」
神官姉(魔王…ショタ…可愛い…///)
勇者(とにかくまあ変なところはあるが、一応王国一の神官権外交官だ)
勇者(とりあえずはこの場神官たちに任せておくか…)
神官妹「では魔王様、こちらが求める賠償額をお伝えします)
魔王「は、はい!」
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