第2話 魔王「初めての人間の友達が出来ました」

メイド「…」コンコン

メイド「あの…ま、おぅ様…」

メイド「そろそろ会談が始まるのですが…」

メイド「…」

メイド(ううう…やっぱり怖いな…)

メイド(人間に無条件降伏したって言っても、やっぱり魔王だからなー)

メイド(何か粗相があったら下等な人間めー! って殺されちゃうかも)ガクブル

メイド(大臣様はそんな事は無いからって)

メイド(安心して呼びに行きなさいって言ってたけど)

メイド(大臣様を疑う訳じゃ無いけど…やっぱり怖いなー;)

メイド(ううう…何か考えてきたらますます怖くなっちゃった…;)

メイド(やっぱり魔族だから怖い人だと思うし…)

メイド(扉が開いた瞬間食べられたりしないかなぁ…)

メイド(ううう…怖いよぅ…)

メイド「…」

メイド(それにしても遅いな…)

メイド(ノック聞こえなかったのかな?)

メイド(でももしまだ出る途中でノックしたら)

メイド(人間の分際で催促しやがってー)

メイド(みたいに思われて食べられちゃうかも知れないし…)

メイド(でも大臣様もお待たせするわけには行かないし…)

メイド(ううう~私はどうしたら><)

メイド(…)

メイド(と、とりあえず、後一回ノックしてみよう)

メイド(それで何か粗相があったら土下座)

メイド(フライング土下座で許してもらおう)

メイド(よし…! もう覚悟決めました)

メイド(ではノックを…)

メイド(粗相があったら土下座、粗相があったらフライング土下座)コンコン

魔王「は、はーい、お待たせしてすみません! 今行きます」

メイド(しまった催促した形になっちゃった…!)

メイド(こ、殺されちゃう…!)

メイド(こうなったらフライング土下座でお許しを)ばっ!

魔王「すみません! お待たせして!」ガチャ

魔王・メイド「え?」

メイド(な、何このちっちゃい子!?)

メイド(と言うか、その位置に頭があったらぶつか…!)

ゴチーン!

魔王「わ!」

メイド「いたーーーーい!!」

メイド(ふ、フライング土下座したら丁度良い位置に頭が現れて…)

メイド(って! 誰だか知らないけど)

メイド(魔王様がいる部屋から出てきた子供にフライング頭突きしちゃった…!)

メイド(こ、この部屋から出てきたって事は魔王の関係者であって)

メイド(もしかして魔王の息子?)

メイド(…)

メイド(まままずーい!!)

メイド(殺される食べられる!!)オタオタ

魔王「あ、あの…?」

参謀「ん? どうかなされましたか?」ヒョイ

メイド「は…!」

参謀「ん?」

メイド(ここここの貫禄、冷たい目)

メイド(ままま間違いなく魔王です)

メイド(やはりこの子は魔王の息子…!)

メイド(そそそれに頭突きなんかしちゃって私どどどうしよう…!)

参謀「…? 本当に一体何があったのですか?」

魔王「あ、うん、この子が…」

メイド「はっ!? いいいえ何でも無いです! 何にもありません!」ワタワタ

魔王「え?」

メイド「いいいえ、その何でも無くはありませんが…」

メイド「ゆゆ許してください、ままま魔王様」ペコペコ

参謀「は?」

メイド「ああ貴方様のご子息にとんだ無礼を…!」ペコペコ

参謀「…? ああなるほどそう言う事ですか」ニコ

メイド「え?」

参謀「私は魔王ではありませんよ」

メイド「ええ?」

参謀「何をしたか存じませんが」

参謀「そちらの【ご子息】と仰っている方こそ魔王様に御座いますよ」

メイド「えええ!?!?」

魔王「ど、どうも、魔王らしなくて、す、すみません、はは」

メイド「嘘! このちびちゃいショタ眼鏡がっ!?」

魔王「シ、ショタ眼鏡…|||」ズーン

メイド「はっ!」サアアー|||

メイド「ごごごめんなさい、すみません! すみません!」ペコペコ

メイド「わわわたし、まだここに来たばかりでなれてなくて」

メイド「許してください! 許してください! 許してください!」ペコペコ

魔王「え、ちょ、ちょっと…」

メイド「ごめんなさい! お願いしますから、たた食べるのだけはっ…!」

魔王「た、食べるって…」

魔王「お、落ちついて下さい!」

魔王「別に僕は貴女を食べたりなんかしませんよ」

メイド「え…? でも魔族は人間を食べるんじゃ…」

魔王「…はあ」嘆息

メイド「ひっ」ビク

魔王「確かに…悲しい事ですが、人間を食べる魔族はいます」

メイド「…悲しい…事?」

魔王「でも魔族の全てが人間を食べる訳じゃ無いんです」

メイド「…食べ…無い?」

魔王「はい…少なくとも僕は食べたりしません」

メイド「本当…ですか?」

魔王「本当です」

魔王「意思を疎通出来る者を食べるなんて」

魔王「可哀想で出来る訳ないじゃ無いですか」

魔王「と言うか、僕は生きている物自体食べたく無いですよ」

メイド「え…それじゃ」

メイド「何も…食べれなじゃ無いですか」クス

魔王「あ…(笑ってくれた)」

メイド「あっ! す、すみません!」

メイド「ま、魔王様に対して…私なんて言葉遣いを…」ペコペコ

魔王「…」クス

魔王「大丈夫ですよ、僕は気にしてませんよ」ニコ

メイド「で、でも」

魔王「…えっとメイドさん」

メイド「は、はい…」シュン

魔王「僕は…その最近まで眠っていたので」

魔王「その間に、人間と魔族が争ってしまうと言う悲しい事が起き」

魔王「どれだけ深い溝が生まれたのか、正直なところよく分かりません」

魔王「ただその戦争で刻まれた恐怖が」

魔王「貴女たち人間に、魔族を恐れる理由になってしまったのは何となく分かります」

メイド「…」

魔王「ですが、私は封印される以前から人間との戦争には反対で」

魔王「仲良くしたいと考えていたのです」

メイド「仲良く…」

魔王「はい! 仲良くです!」

魔王「なので僕が魔王に即位したからには」

魔王「この魔界は、人間さんとより良い関係を築ける国にして」

魔王「人間も魔族も、ずっと仲良く暮らしていける世界にしていきたいと考えているのです」

メイド「は、はあ…な、何だか凄いですね(汗)」

メイド(あれ? この子ちょっと、もしかして?)

メイド(どこかズレてる…?)

魔王「はい! だから怖がらずに仲良くしてくださいねメイドさん!」

メイド「そ、それはもう…(汗)」

魔王「本当ですか! 良かった~凄く嬉しいです!」

メイド「そ、そんな大袈裟な…」

魔王「そんな事無いですよ!」

魔王「実は僕人間さんと仲良くなれたのって初めてで…」

メイド「え…?」

魔王「いや、父上が健在だった昔」

魔王「僕は弱い上に、人間に対して友好的だったから、人間と会わせるとロクな事にならないと思われて」

魔王「生まれてからずっと魔王城に閉じ込められていたのですよ」

魔王「だから人間と会うのって、実は初めてなんです」

メイド「え! そうなんですか」

魔王「はい、だから仲良くしてくれた人間さんは貴女が初めてで」

魔王「だから凄く嬉しいんです!」

メイド「な、なるほどそれで…」

魔王「はい、だからこれからも仲良く…そ、その良かったら友達になってくれませんか?」

メイド「は、はい…私で良ければ」ニコ

魔王「ほ、本当ですか! 嬉しいな~」ニコ

メイド「あ…」

メイド「うふふ」

メイド(何だろうこの子…)

メイド(角が生えて魔族ぽいところあるけど)

メイド(見た目通り、子供なんだ…)

魔王「メイドさんは、人間さんの友達第一号ですね!」

メイド「そうですね」ニコ

魔王「じゃあ友達として今度…」

参謀「魔王様、お話しが弾んでいるところ悪いのですが」

参謀「そろそろ人間との会談の場所に行きませんと」

魔王「あ! そ、そうでしたね」

メイド「いけない…! 私もそれで呼びに来てたんでした」

魔王・メイド「…」

魔王・メイド「あはは」

魔王「じゃあお話はまた今度ゆっくりしましょう」

メイド「はい、光栄です魔王様」

魔王「では会談の場所に案内してくれますか?」

メイド「はい、こちらです」

魔王「ありがとう」

メイド「ふふ」ニコ

参謀「あ、魔王様」

魔王「? 何か?」

参謀「会談の場には前魔王様を倒した勇者もいますので、くれぐれもご用心を」

魔王「え…! 父上を…倒した勇者」

参謀「お気持ちは分かりますが、ここは堪えて下さい」

魔王「…それは大丈夫です」

魔王「父上はそれだけの事をしてしまったのですから…」

魔王「殺されて当然、とまでは思いませんが」

魔王「ただ息子として、親の死を悼みたいだけなのです」

魔王「そこに恨みは欠片もありません」ニコ

参謀「左様で御座いますか…杞憂でしたね」

魔王「いえ…お心遣いありがとうございます。参謀さん」

魔王「ところで」

参謀「はい?」

魔王「勇者は一体どんな感じの人なのですか?」

魔王「やっぱり勇者らしく正義に道溢れた人なのですか!?」憧れキラキラ

参謀「…ふむ、確かに正義に道溢れた御仁かも知れませんね」

魔王「ほ、本当ですか!」

魔王「じゃあ良い人なのかなー」

魔王「良い人なら人間と魔族が仲良く出来るように上手く会談が進められるかも知れませんね」

参謀「…確かに正義の味方、良い人かも知れませんが」

参謀「それは人間に取っての…でしょうね」

魔王「人間に取って…?」

参謀「はい、勇者は魔族に対しては容赦の無い性格をしていると認識しております」

魔王「魔族に…対して?」

参謀「はい、妖魔将軍を覚えていますか?」

魔王「はい、七魔将軍の一人です」

魔王「凄いプライドの高い魔族だったと覚えていますが」

参謀「そうです。その妖魔将軍が勇者に倒された時」

参謀「勇者は、その妖魔将軍を簡単に殺さず」

参謀「妖魔将軍が殺してくれ、と心が折れるまでかなり酷い拷問をしました」

魔王「えええ!?!?」

魔王「ゆ、勇者なのに、そんな事したんですか」

参謀「はい、なので会談中はくれぐれもお気をつけを」

魔王「ひ、ひえええ…」

メイド「あ、あの」

魔王「は、はい! 何でしょうか!?」

メイド「着きましたが」

魔王「え?」

メイド「そ、その会談を行う部屋に」

魔王「え!? そ、そんなまだ心の準備が…」

参謀「大丈夫ですよ魔王様」

参謀「大人しく話だけを聞いていれば問題はありませんから」

魔王「い、いやでも僕…参謀さんみたいに強く無いし」

魔王「正直な話、勇者に会うのが怖くなって来たのですが」

参謀「さっきまで勇者と聞いたら」

参謀「憧憬の眼差し全開になっていたじゃ無いですか」

魔王「で、でも」

参謀「ほら行きますよ魔王様」

参謀「待たせる方が拷問されちゃうかも知れませんよ」

参謀「勇者は結構気が短そうですから」

魔王「そ、そんな」

参謀「ほら」

魔王「あううう…」

メイド「…」

メイド「あ、あの魔王様」

魔王「はい?」

メイド「私には難しい事は分かりませんが」

メイド「魔王様が言う、人間と魔族が仲良く暮らせる世界って」

メイド「きっと良い事なのだと思います」

メイド「だから…その…会談上手くいくと良いですね」

メイド「応援してます」ニコ

魔王「…!」

魔王「そ、そうですね…怖くても私がここで頑張らないといけませんよね」

魔王「ががが頑張ってきます!」

魔王「ありがとうメイドさん!」

メイド「はい」ニコ

参謀「やれやれでは入りますよ魔王様」

魔王「は、はい、お待たせして申し訳ありません」

魔王「でででは入りますよ参謀さん」

参謀「はい」


続く

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