坂井雪ちゃんの消失

坂井実

第1話にして最終話:出会いと始まり

あれは、私が高校一年生の時に体験した話です。

(今日から文芸部に入れる。楽しみだなぁ)

自己紹介が遅れたね。私は、坂井雪…所謂対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースの量産型初期ロット…それが、

本来の私…ただし、今回はあくまで部員としてのシフトになる。

なお、涼宮ハルヒに関してはまた別の高校に

行っているとの事。つまり此処で少しネタバラシするならば、あの時間軸の続きと言う事だ。

そこではキョン、すなわち彼は私達に普通に

接してくれている。

と、ハイライトにしては長すぎるかな。とりあえず私は、文芸部の扉を開けた。

「よぉ、坂井…随分遅かったな。」

キョン先輩が出迎えてくれた。

「すいません。」

すかさず平謝り。

「まぁ、良い…それより長門を見かけなかったか?」

「長門先輩…ですか?」

「此処最近顔を合わしてなくてな。」

「多分、マンションにいると思いますよ。」

「アイツに限ってそれはないだろう。」

実際は、彼の言う通りであった。実はこの坂井雪と話している合間、長門は、この並行世界を操っているのだから…

「ただいま。」

そんな事は露知らず長門有希、此処に帰還。

「おかえりなさい、長門先輩。」

「…」

何やら彼女は、手に持っている《夜間飛行》を目に見えるようにして

「…嫌な予感がする。」

キョン、此処に来てようやく勘が鋭くなって来た。

「焦る必要はないんじゃない?」

朝倉、まるで何かに引き寄せられたかのようにあらわる。

「…もしかすると。」

不意に走り出したキョン、そして

「待って!」

それを追うように坂井雪が走る。

彼が目指す先は、別の高校だった。これで彼もこの並行世界から開放される…筈だった。

キョンを追って走る雪に一台の車が迫って来た。

「…!」

鈍い音がキョンの耳に響き渡る。

「坂井、しっかりしろ!」

やがて彼女は頭から赤い液体を出しながら辛うじて立ち上がった。

が、次の瞬間…雪の口から衝撃の一言が発せられる。

「…此処は、どこ?私は、誰?」

「…っ!」

「ひいぃ、す、すいやせん。」

轢いた車はそのまま逃走。

「お前、まさか…記憶が?」

「貴方は…誰なの?」

数分後彼女は意識を失い、病院に搬送された

病名、全生活史健忘…雪は自らの過去の記憶全てが消えた。

「…俺のせいだ。」

キョンは自分を責めた。

「…大丈夫。」

坂井、キョンを激励する。案の定部活は当面中止となり、学校側は世間の患者保護団体からのクレームがあとを立たなかった。

「我々は、必ず犯人を捕まえます。」

と警察は語る。

テレビではこの騒動で視聴率をとろうとマスコミが押し掛けた。

そしてあれから一週間、雪はほんの少し記憶が戻った。その時の会話が病院の協力の元、

とある機関が入手している。

「雪、大丈夫か?」

この時、雪は会話が出来ないほど弱っていた

その為、この時の会話は一台のパソコンに委ねられた。

「Snow.S>…問題ない。なお、この会話がされていると言う事は、貴方は私を通して元の世界に帰還出来る、と言う事だ。」

キョンは最初何を言っているか分からなかった。

「どういう事だ。まさか最初から仕組まれていたのか?」

「Snow.S>…私が轢かれると言う事態は予想外であったが、とにかく今の貴方には私が作った緊急脱出プログラムを使い元の世界に帰還して欲しい。つまり、此処は長門有希が作った世界であり、架空のものでしかない。なお私を操作しているのは向こうの長門有希である。元の世界に戻りたいと願うならばenterを、そうでなければそれ以外のボタンを入力せよ。」

此処へ来てようやくキョンでも状況が読めてきた。

「けど、お前はどうなる?」

「Snow.S>おそらく私は、情報統合思念体によって抹消されるだろう。でも私は貴方に会えて、嬉しかった。」

キョンは最後に

「…坂井、お前の望みを聞きたい。」

「Snow.S>…貴方を元の世界に帰還させる。これ以上は望まない。強いて言うのなら」

坂井雪の口がゆっくりと「ありがとう」と動く。やがてキョンは一切の迷いを捨て、enterを押した。

「キョン君~朝だよ~」

妹が彼を起こした。そこはベットの上だった。

「…坂井!」

不意に立ち上がり、《夜間飛行》の栞を確認する。すると…

「帰還おめでとう先輩。」

と坂井雪の字で書いてあった。

そしてキョンは部室の扉を開けようとした時

「おはようございます先輩。」

そこには一人の後輩が立っていた。

「此処では初めましてと言う所でしょうか坂井さん。」

古泉がそう言う。

「いいえ、私は渡橋雪です。」

「…やってくれるな。」

キョンが少し笑みを見せた。

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