第4話 逃走
(第四話:逃走)
さっきまで襲ってきた謎の機械は、静かにひっそりと部屋の中心に戻っていた。
「いったい何が起こってるんだ?!」
タオは、改めて部屋の中心にぽつんとある謎の機械に近づきじっと観察してみる。
「近づかない方がいいんじゃないかな?」
エクスが、心配そうにタオを引き戻そうと話しかけるが、
「特に変わったようすもねぇな。」
と言い捨てたタオには問題なく、謎の機械も静かにそこにあるだけで、また襲ってくるようには見えない。
シェインが少女に、
「ファムさん?この機械はいったい何なんですか?」
と問いかけるが、少女は、
「わからない・・・」
「わからないわけないだろ?!
だってここはおまえの部屋なんだろ?!」
少しイラついた声でタオが少女に近づく。
「だってわからないんだもん!
さっきまでこんなのなかったし・・・」
声を荒げたタオに驚いたのか、少女は泣いてしまった。
少女の機嫌をとる事と合わせて、現在の状況整理をするために、
「一度、さっきの食堂に戻りましょ。
ここにいても、良いことなさそうだし。」
レイナが少女の頭をなでながら優しく話しかけた。
一行は、少女が自分の部屋と言っていた部屋を出て、扉が閉まった。
バタン!
それが合図になっているかのように、周りの窓ガラスが突然、
ガタガタガタガタガタガタ!!!
急に、大きな音をたてて揺れ出した!
ガタガタガタガタガタガタ!!!
「きゃーーーーーーーー!!!」
その光景は、誰がどう見でも不思議な怪奇現象そのもの。
謎の物音にびっくりしたレイナが駆け足で階段を下っていった。
レイナの叫び声に、幽霊がもしいたとしても、幽霊の方が驚いてどこかに行ってしまいそうなほどの叫び声をあげながら、勢いよく階段を駆け下りていく。
「おいおいおいおいおいおい!!!」
タオも、この現象にはさすがに冷静でいられるわけもなく、焦って階段を駆け下りる。
「ごめんなさいごめんなんさいごめんなさいごめんなさーーーい!」
シェインも、自分が何を言っているのか訳がわからなくなるほど冷静さを失っている。
「大丈夫?
早く行かないとおいてかれちゃうよ!」
「うん。」
エクスだけは、冷静に少女の手を引き、驚きとパニックで先に逃げて行ってしまった3人を追いかける。
塔を出て、振り返る一行だったが、塔の外は入る前と同じ、さっきまでの静けさそのものだった。
何も変わった様子がない。
一呼吸し、落ち着いたシェインが、
「??あれ??お化けは?」
と言った瞬間!!
ガタガタガタガタガタガタ!!!
また塔が物音を立てて揺れ出した!
皆、言葉を発する事すら忘れて、塔から逃げるように、一目散に走り去った。
全速力で走りきり、静まりきった城に戻ってきたが、
ギィーーーーー・・・バタン!
城の中に入り、扉が閉まったと同時に怪奇現象がまた起こり、あちこちの窓は激しく揺れ、通りかかるすべてのドアはバタバタと開いたり閉まったり。
さっきまでとはうって変わり、まるで一行を拒絶するかのように城全体が激しい音を立てている。
この異常な状態に、パニックでおかしくなってきたレイナが走りながら叫びだした。
「どうせヴィラン達の仕業に決まってるんだから、早く出てきなさいよ!!!」
その叫びに呼ばれてきたのか、幽霊のヴィランが行く先を塞ぐように襲ってきた!
「ヴィランが相手なら怖くないんだから!!」
そのままの勢いで、怒りながら泣いているレイナがヴィランの群れに突っ込んでいった。
「もーーやだーーーー!!!」
次から次へと襲いかかるヴィラン達を、レイナは泣きながらも撃退していった。
皆、全速力で走りきって疲れ果てていた。
気づくと目の前には食堂の入り口。
その時にはもう、ヴィランは一匹もいなくなっていた。
やっとの事で、食堂に戻ってきた一行。
「何か温かい飲み物でも用意しますね。」
といって、シェインは周りを警戒しながら調理場へ向かった。
「さて、ここで何が起きたのか、一旦確認するわよ。」
泣き叫んだ後で目を赤く染めたレイナが、食堂のイスに腰を掛ける。
一行は、さっきまでの全速力とヴィラン達との戦いで疲れ切っていた。
「お待たせしました。
一先ず、ここにはヴィランはいないようですね。」
シェインが用意した飲み物に口をつけ、生き返るような気持ちで、
「はぁ~・・・・」×4
ため息交じりに肩を落とす一行だった。
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