第3話 探索
(第三話:探索)
城の中に入った一行。
誰もいない、そして何もない城内をくまなく探索した。
しかし、やはりどこにも誰も、人どころかヴィランすらいなかった。
すると突然、
「・・・おなか減った・・・・・」
なんだかんだ言っても、ファムと名乗った少女は、あくまでも小さな女の子。
城の中を探し回って疲れている一行。
先を急いでこんな所早く移動しないとと考えるレイナは、
「カオステラーがいるかもしれないのに、ゆっくり食事なんて・・・」
と言い放ったものの、
「ぐ~~・・・・」
お腹の減りは隠しきれなかったようだ。
そんな、おとぼけに笑いを堪えながらタオが、
「くくく・・・さっき、食堂があったからなにか食べようぜ。」
「・・・しょうがないわね。
わかったから行きましょう。」
少し耳を赤く染め、足早になったレイナを先頭に食堂へ向かった。
一同が食堂に着き、一応ヴィランがいないかくまなく確認した。
だが実際、気配すらない。
この異様な雰囲気に恐怖を感じてはいるが、
「腹が減っては戦は出来ぬ!
ということで、ここは、鬼ヶ島流調理術免許皆伝の私が腕を振るいましょう!」
意外と何でも出来るシェイン。
ここまで、完全にボケ担当となってしまったレイナとは違い、女子力を発揮し手際よく手料理を作っていく。
シェインは、意外なほど道具はもちろん、食材までしっかり整った調理場に違和感を感じていたが、自身のお腹の減り具合にそんな小さな事は気にしない。
シェインの作る料理で食堂が、食欲をそそるいい香りに包まれていった。
その香りに食欲がまし、エクスも料理完成を楽しみにしながら手伝いをしている。
さて、料理が一通り完成し、それでは全員で
「いっただっきま・・・」
「クルル~・・・クルル~・・・」
食べようとした時、どこからともなく、さっきまで影どころか気配すらなかったはずの調理場付近からヴィランが現れた。
美味しそうな料理を目の前に、お腹が空いている事も重なって、イライラが頂点に達したレイナが、
「あんた達!いい加減にしなさいよ!
食べ物の恨みは怖いんだからね!
覚悟しなさい!」
またしても鬼の形相となっていったレイナ。
一行は、レイナの勢いに押されながらヴィランを撃退。
その後、ストレス発散と満腹感ですっかり落ち着きを取り戻したレイナ。
「ふ~・・・シェイン、本当に美味しかったわ。
また作ってね。」
上機嫌のレイナは、満面の笑みだった。
一段落し、城内をくまなく探索した一行が次に向かったのは、城の外にそびえ立つ謎の塔。
「ここはなに?」
とレイナが少女に尋ねると、
「ここは・・・私の部屋なの・・・・」
少女はこわばった声で答えた。
その少女の様子に疑問を感じたエクスが、
「ここでお化けがたくさん出てきたの?」
「・・・うん・・・」
怯えた様子の少女は、小さくうなずいた。
少女に導かれるまま塔の中に入った一行ではあったが、やはりここにも人の気配がなく、不気味に薄暗い空間が上まで続いているだけだった。
「本当にここがお嬢ちゃんの部屋なのか?」
中の異様な雰囲気を不思議に感じたタオだったが、
「そうなの・・・」
やはり、少女は小さく答えるだけだった。
とりあえず、ここが一番怪しいという事に代わりはなく、一行は塔の一番上まで上っていくことにした。
どこまでも続く見ため通り急な階段に、途中心が折れそうになってしまった。
やっとの事で到着した塔の一番上にある部屋に入った。
しかし、その部屋には、ホコリをかぶったミシンのような機械が中心にポツンと置いてあるだけで、殺風景そのものだった。
一行は、人はもちろんヴィランの気配すら感じないその部屋に入り、中をくまなく探した。
しかし、怪しい箇所がないのはしょうがないとしても、ここで少女が暮らしている事が信じられないくらい、生活感のない空間だけがそこにはあった。
本当に、ここを少女が自室として使っていたのだろうか。
色々と疑問に思うところではあったが、
「ところで、この機械はいったいなに?」
と言いながら、部屋の中心に置いてある唯一のモノといえる機械へと近づいていったレイナ。
「何があるかわからないから、さわらない方がいいよ・・・」
エクスがレイナに忠告したが、話しかけるよりも先にレイナは謎の機械に触っていた。
「痛っ・・・」
レイナの指先に何か尖ったモノが刺さったようで、ほんのり血が流れてきたと思ったそのとき、
バタッ!!
と、大きな音を立てて、急にレイナがその場で倒れ込んだ。
「レイナ!」
一瞬の出来事で、何が起きたのかわからなかったが、急に倒れたレイナに近づくエクス。
動かなくなったレイナに寄り添い、指先を確認するが、ただ小さな傷があるだけで、他には外傷も何もない。
エクスは、急に倒れてしまったレイナを抱きかかえ、
「レイナ!レイナ!!」
声をかけるも返答はない。
そんなレイナをあざ笑うかのように、さっきまでホコリをかぶっていた謎の機械がみるみるヴィラン化して襲ってきた。
「なんでこんなモンが急に出てくるんだよ!
さっきまでそんな気配すらなかったのに。」
さすがのタオも、この笑えない状況ではかなり焦っている。
レイナが倒れたままだったが、現れたヴィランを放っておく訳にもいかず、残りのメンバーで対抗する。
さらに、謎の機械に呼応するかのように、どんどんヴィランが集まってきた。
「いったいこいつらどこにいたんでしょうね?!」
シェインもさすがに焦った様子ではあったが、
「ここはなんとかするしかないよ!」
レイナをかばいながら、エクスもヴィランに対抗する。
次々に襲ってくるヴィラン達を倒しながら、なんとかその場を凌いだ一行。
「危なかったね。
ところで、レイナ大丈夫・・・かな?!」
心配そうなエクスをよけて、シェインがレイナに近づく。
「どうやら眠っているだけのようですね。」
「なんだよ・・・心配させるなよ・・・」
タオも、さっきまでの不安と緊張が一気に抜けたようだ。
「ここは、鬼ヶ島流心肺蘇生術で・・・・・はァッ!!!」
シェインがレイナに、おもいっきり振りかぶり、きつい一撃を与えた。
ちなみに、鬼ヶ島流心肺蘇生術と大げさに言ってはいるが、単純に顔面に対するおもいっきりの張り手です。
ほほを真っ赤に染め、痛みと驚きで飛び上がったレイナ。
「いったーーーーい!」
「よかった。気づいたんだね。」
ほっと胸をなで下ろしたエクスだったが、当のレイナ自身はなにがなにやら。
「???なにがあったの?」
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