第2話 30歳前後の殿方×女子中学生キャラがボツになった事情
「おじさん」の定義とは何か。
これは結構難しい問題です。中学生から見れば、三十近い男性は「おじさん」だと感じるでしょう。しかし、会社の中では、三十前後なぞ「まだまだ若造」の部類です。
個人的には、十五から二十ほど年が離れれば、若い側にとって、相手は世代の離れた人=おじさん、という位置付けになるのではないかと思っています。
同じ三十歳男性でも、十五歳にとっては立派なおじさん、二十五歳にとっては兄貴分のような存在、というわけです。
このスタンスで「おじさんとの恋」のお話を考えると、主要キャラクターの設定年齢はおのずと範囲が限定されます。
女性側を小学生にするわけにはいかないので、ヒロインは最低でも十三歳以上。となると、それに十五を足して、男性側の年齢は二八歳以上ということになります。
中学生が三十歳前後の男と出会い、彼に興味を持つ、というシチュエーション……。これもかなり限られます。女子中学生が近所に住むアラサー男と仲良くなる? なんだか犯罪のニオイがして嫌だなあ。
やはり、学校を舞台にするのが一番自然なような気がします。中学生の女の子が、三十歳くらいの男性教師を好きになる。これなら適度な距離感も取れますし、少女らしい妄想恋バナにしてもカワイイかも。
では、中学の先生と教え子の学園ラブストーリーでいくか……、と思ったとたん、自分の中学時代のことを思い出しました。そうだ、このパターン、リアルであったんだった……。
中学三年生の時、理科の先生を好きになった同級生がいました。穏やかで少年っぽい雰囲気の三十歳前後の彼が「カワイイ」のだと言っていました。
二月になり、彼女は、先生にバレンタインデーのチョコをあげようと思いました。
学校では「校内にチョコ持ち込み禁止」というお触れが出ていました。それなりに荒れていた中学校でしたし、「もらえない男子が気の毒」というような話があったのかもしれません。
しかし、彼女は、そんなことは全く無視して、手作りチョコを準備しました。
バレンタインデー当日、彼女は、放課後の教室で少し時間を潰し、それから、いそいそと職員室へ行きました。当の先生が席にいるのを確認して、勇気を出して中に入る……。
しばらくして彼女は、「受け取りを拒否された」と言って泣いて帰ってきました。
まあ、先生が率先して規則破りに加担するわけにもいかないし……。相手も対応に苦慮したのだと思います。
しかし、ショックを受けた同級生は、それ以来すっかり変わってしまいました。学年三百人中「五位以内」というのが彼女の定席だったのに、近々に行われた中学最後の定期テストで、彼女はすべて白紙回答したのです。定期テストのすぐ後には、県立高校の入試も控えていたというというのに。
彼女の進路がどうなったのか、その後は全く分かりません。
チョコを渡せなかった同級生の子の気持ちは、正直なところ、私には皆目理解できませんでした。なぜなら私は、中学生の頃は全く目覚めていなかったからです。中学時代の三年間はアニメと漫画と落書きに費やしてしまいましたので。
ホームルームで散々「チョコはダメだ」と言われていたのに、同級生はなぜ物議を醸すようなことをしたんだろう。成績優秀だった彼女が敢えて規則を破る決意をした時、どんな想いを胸に抱いていたんだろう。
中学生の精神年齢でいっぱしの恋をした彼女の心境は、当時も今も、さっぱり想像できません。
こんな調子だと、状況設定まではどうにかなっても、心理描写の部分で困ってしまうのは目に見えています。
ベースとなるプロットは、「最後に置いて行かれる」というエンディング。なぜ「置いて行かれる」にこだわるのかは自分でもよく分からないのですが、とにかく、この大事な場面でヒロインの心境が書けないのでは、全く楽しくない。
もう少し、ヒロインの年齢を上にしたほうがいいかもしれない……。
というわけで、仕切り直しで、女子高生と三十代前半の「おじさん」という組み合わせを考えることにしたのでございます。
そもそも、私がおじさん恋バナ妄想に取りつかれたのは高校生の時なので、妄想していることをそのまま書けば、ヒロイン側の心理描写は楽勝のはず……?
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