第5話 伏線…

第1話だったかで、ダイエットの動機を、

「労働争議」と並んで「嫌がらせ」とか書いた。(ような気がする)

前者については少し述べた。(ひょっとしたら詳細を記すかもしれないがとりあえず)

で、後者である。それが表題でもある伏線になっている。


これも既に記したことなのだが、(何話か忘れた…ご寛恕を)

件の従前業務では健康管理が大きなテーマとなっていた。

成果取り上げ云々のシステムもそれについてのものだ。


さて、ここまでくるとメインテーマである「ダイエット」にだいぶ近づいてきたではないか。

さんざん回り道して、くどくどジメジメした内容を書き連ねてきたが、

ようやく、我、出発点に立てり、の心境である。

回り道し過ぎて単に「ダイエット」関心で読み始めた読者はとうに離れてしまっていると思うが、

そのような読者も含めて問いたいことがある。

人間の身体のこと、どの程度わかっている?


じつはまったくといっていいほどわかっていない。

私が、というのはもちろんだが、科学的に、という意味である。

そもそも人の身体には数多くの細菌や酵素なんかがあって、

そいつらが「勝手に」働いてくれちゃってるおかげで、我々は生き延びていられる。

いつらが働くメカニズムは多少なりともわかりつつあるが、

なぜ、そんなに都合よくターゲットを捉えて反応するのか?

(物理統計的によく言われる距離の2乗に反比例する、みたいなレベルでは説明できない高確率)

そういったことはわかってない。

あるいは嗅覚。受容体と物質との反応にしても、まだまだわからないことばかりだ。

(同位体や立体異性体の嗅ぎ分けとか)

もっと端的な例では、あんなに単純な(ヒトに比べれば)植物が、

なぜにあれだけの(太陽電池などよりはるかに)高い効率でもって、

二酸化炭素と水(と光)から炭水化物を生成しうるのか?


そういうことに科学はじゅうぶんなエビデンスをまだ準備できない。

人間の身体はある種のブラックボックスなのだ。

医学や薬学などは科学の鎧の下で「最先端でござい」と偉そうに胡坐をかいているが、

実際にはその鎧は継ぎ接ぎだらけで、裏側にまわるとハリボテだったりする。

(だから舞台裏ではエゲツナイ争いも繰り広げられるわけだが…)

「名医3度の診察で8割」とも言われるように確定診断は至難の業だ。

そんな状況の中で彼らはガラスのプライドを背負って患者に接しているのであるから、

つくづく大変な仕事だなぁと恐れ入る。

まぁ、ここで医療に難癖をつけるつもりは毛頭ない。

人間のことはまだまだわからん(分子生物学的に)ことも多いということを言いたいだけだ。


ところが一方で、人間の身体は正直だ。

眠らなければ眠たくなるし、食わなければ腹が減る。

もし、そうでなければ、通常とは違うメカニズムで何かが狂っているのだ。

(心配事がある、失恋した、家族が死んだ…等)

ともかくも、詳細内部構造はわからないブラックボックスだが、

インプットすればアウトプットが得られる。

医師が患者にクソ面倒な検査を強いるのは、

そのアウトプット(バイタルサイン)を得て診断の助けにしたいからである。

いろいろな要因要素を切り分け、仮説にもとづきデータと照合し、経過を観察する。


だが、何も小難しい知識や機械を使うまでもなく、

自分で自分の変化に対して自覚的であることによって、

このアウトプットを得ることは誰にだってできる。

基本的に食えば肥るし、食わなければ痩せる。動けば痩せるし、動かなければ肥る。

それを注意深くウォッチしながらコントロールすること、

それが「ダイエット」。

そんな単純なことができないとほざく阿呆のなんと多いことか。

件の会社の管理メソッドもそういう意味では確固たるものはできていなかった。

(だからこそ俺がシステム化したろうじゃん、としたわけでもあるのだが)

俺ならそんなの身をもってやってやるよ、軽くね。


そういうことが伏線の正体である。

かくして私の「ダイエット」という、

生物学的エントロピー増大則への反逆行為が始まった。


第6話に続く…?

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