#12



4

「……ジョーくん」

「な、七香サン」

「おやすみ。」

「ま、待って下さい、説明させて下さい」

「死んじゃうくらい眠いの。おやすみ」

「明日の七香サンは…いえ、今の七香サンにとっては明後日です、明後日に七香サンは恋人に

さされて死んでしまうんです」

「……なんだって?」

「今、七香サン、恋人と仲、悪いでしょ?」

「…ま、否定しないけど。アイツがアタシを殺す勇気なんて無いよ」

「で、明後日、恋人サンは七香サンが別の男性と仲良くしてるとこを見て…」

「いい加減にしなさい」

「は」

「濃人はそりゃイヤなヤツだけど一応彼氏だからね。アイツを悪者扱いするのはアンタが弟

だろうが、友達だろうが、赤の他人だろうが勝手にするがいいわ。『そのうち彼はこうする

でしょう』なんて、未来予想も一人でやってくれない?アンタの妄想にアタシを巻き込まないで

くれる?」

「…食いついてくれましたね?」

「…アンタだいじょぶ?」

「未来予想でも妄想でもないんです、これが」

「じゃあなあに?アンタの願望?」

「違います。…確実な未来なんです」

「つきあっとれんわ」

「分かるんです。…ボク昨日のことが」

「誰だって分かるわよ」

「あ、いえ、ボクは今七香サンと同じ時間並列上にいないんです。

だから、ボクは今話している七香サンにとっては明日の冗なんです。」

「アシタのジョー…あ、そ。つまり、こう言いたいの?

今アタシが喋ってるジョーくんは明日のジョーくんで、今現在のジョーくんではないと」

「はい」

「証拠は?」

「今現在そっちの世界と24時間の誤差があります。ってことはですね、今そちらは木曜日の

23時19分ですね?」

「はいはい、」

「証明してみせますよ、ボクが明日の冗ってことを」

「わかったわ。」

「え、まだ、まだ証明してないのに分かられても…」

「いや、証明してもらうわ。その代わり完璧にアタシを信用させるくらいの合理性を元に

証明してよね、徹底的に穿つわよ。それでもアタシを完璧に信じさせることが出来たら信じて

やってもいい、ただし…」

「…ただし?」

「証明出来なかったら、今日アンタが言ったことは全てデタラメだとアタシは認識するわよ。

明日の存在と。それに弟だっていってたのもまだ怪しいし。芦田之冗はただのペテン野郎だって

SWITCHのみんなに言いふらされても大丈夫?」

「はい、かまいません」

「おっと、ジョー、強気に出たわね」

「では証明しましょう、そろそろ22分ですね。TVをつけてもらいたいのですが…」

「はいよ」

「ニュース番組にチャンネルをあわせてもらってもいいですか」

「ちょうど『ニュース・れいんぼイッパツ』やってる」

「今、Jリーグの試合結果やってますよね」

「アンタも見てれば分かることよ」

「22分になると選挙特報が始まります」

「予想出来ることなんじゃない?」

「そんな、ニュース番組の枠を予想するなん」

「あ、選挙特報だ」

「ほうら、どうですか?」

「イマイチ」

「ふぇ?」

「予想も出来ちゃうんじゃない?政治に詳しかったら。それにアンタがこの局のスタッフの誰

かと繋がりがあったらそれぐらいの情報を手に入れることが出来る。そんなモノはないと言い

張ったとしてもアタシは納得出来ないわ」

「手厳しいですね」

「どうも」

「じゃあ、この次に何のニュースが入るかを言っても…」

「ええ、納得出来そうにないわ」

「でもね、七香サン」

「なあに?早く合理的な説明をしなさいよ、女の子達の白い目が怖けりゃ…わ」

「………」

「わ、うわわ、きゃ」

「………」

「きゃあっ、ちょ、ちょちょちょ、ジョーくん!」

「………」

「ね、ねえ!なに落ち着いたフリしてんのよ!?地震よ!そっち大丈夫なの?きゃ」

「………」

「ふぅ、結構大きかったなあ。この地し…地震…?」

「七香サン」

「ジョーくん…」

「ボクが最初に言ってたの思い出しました?」

「………」

「確かに言いましたよね。『地震に気をつけて下さい』って」

「言った…言ったけど…」

「その地震、ボクが昨日経験したものです」

「………」

「だから必然的に今のボクは何も感じてない。この時間には地震が起きてないんです。」

「………」

「どうです?明日の存在を信じてもらえたでしょうか?」

「いや、まだよ…今の世の中のことだから。地震を予想する探知機なるモノが開発されてても

おかしくない」

「なんとか粗を探したいようですけど、それはまだ現代科学の力ではなし得てないと思われますよ?」

「だってありそうじゃない。地震観測レーダーとか…」

「無理がありませんか…?ちなみにそれは何を観測するんです?」

「震源地を…特定する…?」

「七香サンが疑問に思ってちゃ始まらない」

「………」

「でもボクは知っています、この地震の情報を」

「……!」

「震源地は駿河湾沖、マグニチュードは4。津波警報がしかれました。」

「ほ、ほんまかいな…」

「それは七香サンの目で確かめることです、まだつけてるでしょTV」

「う、うん…あ」

「……テロップ、出ました?」

「…う、うん…あ、…マジ…?」

「久々に大きい地震だったので特報がしかれ、どこかの大学の地学の教授が言ってました。

今回の揺れは横型らしいです。ちなみに初めにカタカタ…ときてグワーっとくる、カタカタが

初期微動、通称、P波。次いで来る大きい波がS波と言うらしいですね」

「………」

「短時間でこうは調べられませんよ?」

「………」

「ですから、信じて下さい、今話しかけてるボクは七香サンにとっての明日のボクだってことを!」

「う、う~ん…」

「明後日七香サンは死ぬかもしれない!ぼくはそれを伝えるために、七香サンに、いや、姉さんに

死んで欲しくないから呼びかけてるんだ!誰だってそうだろ?兄弟姉妹が死ぬのを分かってて見過

ごせる人がいるっていうのかい?ましてやボクらは双児の姉弟だ!

だから信じて!姉さん!!」

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