#10

「えー……っと…」

「し、信じてもらえないでしょうけど」

「ジョーくん……」

「はい?」

「ジョーク?」

「いえ」

「ふうん」

「……あの」

「なあに?」

「やっぱり、その、ビックリですよね」

「別に」

「へ?」

「ビックリというか、意味が分からなくて呆然としてるわ」

「ま、…そうなるかもしれませんね」

「根拠は?」

「根拠、と言いますと」

「アタシ達が、血がつながっているという根拠。」

「根拠ですか。」

「アタシの生まれは青森八幡、両親はともに健在。

範忍南汰朗(ハンニンナンダロウ)に範忍亜多詩(ハンニンアタシ)。

そしてアタシが可愛い一人娘の範忍七香(ハンニンナノカ)21歳よ。

ウチの家族にアンタが付け入る隙はないわ。気味の悪いことはもう言わないでね。

へば!(じゃあね!)」

「ま、待って下さい根拠があります!あ、芦田之冗(あしたのじょう)に、21歳、独身、」

「知ってるし聞いてねぇよ」

「生まれは鹿児島奄美大島、父は芦田之友朗(あしたのともろう)、母は芦田之…」

「あしたの…明日子とか?」

「芦田之亜多詩(アシタノアタシ)」


「………」


「珍しいですよね、こ、こんな名前。」

「…すごいね。うん、すごいすごい。すごい偶然ね。

確かにこんな珍しい『亜多詩』なんて名前が母ちゃんの時代に

二人いるなんてね…」

「ウ、ウチのお父さんが教えてくれたんです。」

「友朗が?」

「ボクらが生まれた後、お、お母さんはすぐ出て行ったって…」

「……ボク…ら?」

「一人女の子だけ連れて…」

「それがアタシだって言うの?」

「……グスッ」

「ちゃんちゃらおかしいわよ、ジョーくん、良く聞いて!

えーと、仮にアンタが弟だとしましょう。するとね」

「…すると?」

「なんでアタシが覚えてないのよ?アンタより年上ってことになるでしょうが。

ジョーくんが赤ん坊の時にしろアタシはお姉さんなワケでしょ。

じゃあ聞くけどアンタいくつよ、本当は何歳?ねえ?つくならもっと理屈の合った嘘をつきなさい。

同じ21で姉弟って……ん?待てよ、早生まれってヤツの可能性もあるか」

「いえ」

「じゃ、そんな連続でボンボンと子供を生めるわけないでしょうが」

「いっ、一緒だったんですよ」

「はあ?」

「同じ日に生まれたんですって…」

「……それって」


「はい、ボク、七香サンの双児の弟なんです」

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