明日の証明

#09


明日の証明

Probatio Diabolica 3


1

「ううん、だってアイツ、めんどくさいじゃん。

あ、ごめん、キャッチかな?また後で電話するねぇ。

ーはい、もしもし?」

「………」

「もしもし?どちらさん?」

「………」

「もしもぉーし?聞こえませんかぁ?」

「………」

「迷惑なり、ポチッとな、」

「あっ……」

「はい、どなたでしょうか?イタズラ電話?」

「…あ、あのぅ」

「なんでしょう?名前とご用件をどうぞ?」

「あ、あの、七香サン…ですよね?」

「はい。オタクは?」

「ボ、ボク…、あの、アレ、アソコの…」

「?」

「アソコのっ…び、美容院の…」

「キモ」

「あっ、あっ待って待ってください!…ボク、」

「ストーカー?」

「ち、ちがいますよぅ、ぼぼ、ボク、芦田之(あしたの)です」

「芦田之ぉ………ジョー?」

「そそそうです、芦田之冗です」

「あはははははは」

「……ど、どうしたんです?」

「知ってたもんねぇー、ちょっとからかってみた」

「………」

「ジョーくんさ、オドオドしてるから声色ですぐ分かるんだよ。

ダメじゃん、女の子に話しかける時はさぁ、ビッと決めなきゃ。ビッと」

「……はい…」

「パッと見はいけてんのにさぁ、もったいないよ。SWITCHの女の子達もみんな言ってるよ」

「……はい…」

「で、なあに?」

「……え?」

「仕事がらみ?気になるお客さんがいるとか、そーいった悩み相談?」

「や、…いえ、自分、まだアシスタントなんで…」

「まぁ、そのベシャリじゃあねえ。じゃあなによ、こんな時間に。

アタシもうシャワー浴びて寝たいんだけど」

「……あの」

「……どしたのよ、深刻な話?」

「は、はい…」

「……明日じゃあダメな話?」

「はい」

「あぁもう。あのさ、ジョーくん。同い年なんだから敬語使うのやめなよ。堅苦しいんだよ」

「はい…あっ、すいません。あっ……ごめん……なさい……」

「どうやら無理なようね」

「そ、そのようです…」

「で?」

「あ、あの、本筋じゃないんですけど最初に言っておきたいことが」

「ん?」

「地震に気をつけて下さい」

「え?何?地震?起きるの?」

「あ、でもそれは本題じゃなくて……」

「じゃあ本題。どういった用件かしら」

「………」

「アンタ、ね」

「…あ、その、ちょと、待っ」

「そんなに言いにくいことなの?時間かかりそうだから明日にしてよ」

「あ、あし、明日じゃダメなんです!絶対明日じゃダメなんです!」

「…お酒飲んでるの?」

「へ?」

「お酒の勢いで今のうちにアタシに告白しようとか」

「は?」

「言っときますけど、アタシ彼氏いるよ。濃人クンってゆー」

「ほ?」

「コクりじゃないわけ?」

「い、いや、こ、コクりにちかいもの…かも」

「なによ」

「あ、あの、ボク」

「うん」

「ボク、実は」

「うん」

「な、七香サンの」

「じれってぇぞ」

「す、すす、すいません、ボクっ実は七香サンの!」

「なんなんだ!?」


「弟なんです!!」

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