ドッペルゲンガーの証明
#05
ドッペルゲンガーの証明
Probatio Diabolica 2
1
「…アンタ…誰?誰なの?」
「ど、どうしたんだいキミ?いきなり…」
「妙な違和感あったけど…一体何者なのよ!?」
「落ち着きなさいよ、ね、キミ。僕は僕以外の何者でもないさ」
「何かのジョークかと思ってたけど何?誰?気味の悪い喋り方しないで!」
「そんな。これが僕の本来の喋り方さ。」
「違う!あんたが自分のことを『僕』だって?」
「そうだよ、僕は『僕』さ」
「それにいつもアタシのことは『オマエ』って呼んでたくせに…」
「キミどうしたんだい?急に僕のことを『誰』だなんて」
「だって…」
「ははあ、今日一日で僕の変化に気付いてもらえたんだね?嬉しいよ。
僕はキミが理想とする恋人に一段と近付けたようだ」
「え?は?や、その、」
「なのに僕を僕じゃないなんて言うなんてひどいじゃないか」
「だ、だって」
「その証拠に僕たちは今猛烈に愛し合ってる」
「けどぉ…。アンタの鼻の穴、そんな形だったっけ…?」
「…そうだよ?何だって言うんだい?」
「しょ、正直に言っていいかしら?」
「どうぞ?」
「確かにアンタは今日一日普段と打って変わってアタシに優しくしてくれたわ。
デートでパチンコ店以外に行ったのは初めてだったわ」
「喜んで頂けたかな」
「楽しかったのは事実よ。けど同時に不安を覚えたわ。頭の中にどうしてもよぎるもの」
「それは?」
「もしアンタが本当はアンタじゃなかったら?…って」
「ははは、なにをおっしゃいますやら」
「動作の一つ一つにアンタらしからぬものが見えたから」
「……」
「過去や歴史、情報なんかいくらでも収集出来るから真似ようと思えば真似られる。
でも本人の行動の癖や言動癖なんて簡単には習得出来ないから…」
「本気で疑ってるのかい?」
「遊園地でアトラクション待ちの時とかさ。アンタ、イライラしたり時間を持て余すと、お尻をボリボリかきむしったり人の匂いを嗅いだりするくせに…」
「そんな世間体に悪いことをキミはまだ望んでるのかい?」
「い、いや、そう言う訳じゃ…」
「手を握ったのも反則だって言いたいのかい?」
「だって今まで手なんて繋いだことなかったでしょ?『んなコトよりオメエのケツの方が落ち着く』って、所構わずアタシの…」
「嫌だったんだろう?今までは悪かったね。だから僕はキミの理想を…」
「ねえアンタ…」
「なんだい?」
「…本当に…誰なの?」
「ははは、まだ言ってる。やめてくださいよ。僕は生まれ変わったキミの恋人さ」
「決定的なこと言っていい?」
「え?」
「アタシたち、こうやってベッドにいるけどさ」
「うん?」
「違うのよ」
「へ?…何が?」
「そ、その、ね。そ、それがね。事が終わって気付いたけど…ハッキリ言って別物よ」
「……」
「何か言いなさいよっ、どういうこと?」
「よくなかったかい…?」
「え…?」
「だってさ、キミも言ってたぞ。漫画で良く目にするあの台詞。」
「何か言ってたかしら?」
「良かったから言うんだよね、『こんなの初めて』って」
「最中の常套句よ」
「二人の相性がいいならそれでいいじゃないのかな」
「それに、ここにあった大きいほくろ」
「うん?」
「いつの間に消えたの?」
「…え?…………あったっけ?」
「………」
「まあ落ち着きなよ、水でも呑んで来なよ」
「………! …う、うん…」
「…………………………ん?
どした?何持ってるの?ちょっと?背中に何隠してんだい?」
「アンタ…」
「っと、え、おい…?」
「アンタ、自分ちの状況知らないのね」
「へ?…は?何の冗談?今から料理でもするのかい?それ、危ないからしまって…」
「アンタはアンタじゃない」
「ま、まだ言ってんのかい?」
「家賃まだ滞納して…水道なんて3日前から停まってるのにおかしいよね」
「……いや、外に買っておいでよって意味で…ちょ、やめ…」
「アンタは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます