#04

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「…と、そろそろお遊びはやめて本当の事を喋ってくれないか。

キミはあの時間犯行現場にいた、と。」

「だから言ってるじゃないですか!アタシは自宅のトイレに籠っていたって。」

「あくまで言い張るつもりか。」

「言いますよ。テレポート云々よりアタシが何故濃人を殺すんです?動機も何も無い。」

「じゃあ他に誰が信田を殺したというんだ?

応屋はアパートから出入りする者は誰も目撃していない。」

「……」

「はたまたアレが自殺だというのか?キミと一緒に居ながらにして。」

「自…殺…?他殺じゃないかもってこと…?」

「ああ、そうだな。キミがあくまで殺ったのじゃないのなら信田はキミの目の前で

包丁を自分の胸に突き刺したということになるが。」

「……」

「言っておくが今までのキミの苦し紛れの言い訳でかなり他殺の線が高いよ。

最早自分がやりましたと言ってるようなもんだ。」

「自殺…かもしれない…?」

「ね、目が泳いでるよ、キミ…。今更動揺してるのか?」

「……」

「考えられるのはこの二択しか無い。

・キミの目の前で信田は自殺した

・キミが信田を直接殺害した

キミは家から出ていない。」

「……自殺…」

「目の前で自殺を図ったと仮定したら何故そう供述せず、子供騙しの様なアリバイを

用いたんだ?本当のことを言えばいいのに。

しかし、キミは殺してしまった、という事実に囚われすぎて、自分じゃない何者かに、

という発想からとんでもない空想話に発展した。」

「……」

「答えは・…だね?」

「……」

「まただんまりかい?」

「……」

「しかしやっとここまで来た。出し惜しみしてた切り札だがな、応屋がちょうどその

犯行時刻から20分前にキミらが喧嘩する声を聞いていたんだ。」

「…………!」

「なんて言い争ってたんだ?」

「……」

「言えないのか。」

「……」

「オ…オイオイ泣くな泣くな、参ったな。女性の取り調べはこれだから…」

「アッ…アタ、アタシ。」

「取り敢えず落ち着け。な。落ち着いてから喋れ…」

「アタシッ。」

「おう。」

「彼に言っちゃったんです……ウ…」

「なんて。」

「『死ねばいいのに』って…」

「……へ?」

「彼…ずっと就活で内定決まらなくって…それでずっとイライラしてて…

八つ当たりされてもアタシ耐えてたんだけど…もうこらえきれなくて…

それで言い争いになってしまったんです…」

「……」

「ウゥ……」

「……それで」

「…すごく傷つけてしまった…その頃もう相当にナーバスになってて口ぐせのように

『死にてーよ、もう死にてーよ、死にてーよ』って言ってたところに…」

「……」

「追い打ちかけちゃった……」

「……」

「まさか本当に死ぬなんて…」

「…ちょ、ちょっと待て。それ、どういう意味だ?」

「だって『死ねばいいのに』って言って自宅のトイレにすぐテレポートしたから…

そりゃね、アタシもあんな事言ってしまって責任感じてましたけど。

それまで他殺、他殺って言われてたから…」

「……」

「やっぱりそうだったんだ…あたしのせいだぁ…」

「自殺かも知らんが…だからって…キミね…」

「刑事さん。」

「お、おう?」

「アタシやっと…無実を証明する事が出来そうです。」

「そ…そらまたなんで…」

「…あ…でもこれって『自殺教唆』ってやつだから立派な犯罪か…」

「どうゆうことだ。」

「アタシね、今、モーレツに所望しているんです。」

「……」

「謝りたい。」

「…信田にか。」

「彼の所に行って謝りたい。許してもらえるとは思ってません。

…けど今スグ彼の所へ行きたいんです。」

「…いやしかし…」

「取り調べはここで終わりにして下さい。キチンと証明をして出て行くので…。

アタシがあの時濃人の所にはいなかったことを…」

「…しかしだな、しかしだ。…信田は死んだんだぞ…?」

「はい。」

「この世にはいない。」

「どこでも同じ。アタシに行けない場所はないもの。」

「…あ、いや待、待て…あ、おい、何立ってんだ?」

「何言ってんですか…さっきまで実演実演って言ってたのは刑事さんじゃない。」

「そ、そうだ。そうだが、しかしこういう展開になるとだな、おい、座れ、座りなさい!

いいから座りなさいって!落ち着くんだ、な?キミはまだ…」


「アタシが証明です。」


『ガバッ!ドサッ!』

「いたた…刑事さん何するの。」

「いや、つい…」

「クス…」

「キミ…」

「はい?」

「ハンニン、ナノカ…」

「はい。」



  END

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