幕間3  ~■■・シルノフ・アジリエートの場合~



 夢を見ている。

 それは、とても懐かしい夢。

 一人の少女が、剣を振っていた。その剣技は緻密にして苛烈。どんなに素早く飛ぶ鳥も正確に串刺しにし、どんなに強靭な毛皮を持つ獣も一刀両断する。

 皆が彼女の剣技を褒め称えた。いや、剣技だけではない。彼女はあらゆる面で天才だった。魔術も、芸術も、その人格さえ。

 彼女を知らない者はこの村には無く、彼女は常に人々の中心に居た。

 私は、そんな彼女の姿を遠くから眺めていた。私は、彼女を取り巻く人の輪には入れない。何故なら、誰も私をあの輪の中に入れようとはしてくれない。私を見ると、誰もが蔑み、嗤い、嫌悪した。

 何故、そうなったのかは分からない。物心ついた頃からそうだった。だからきっと、私は初めからそういうモノだったのだろう。

 全ての努力は報われない。どんな悲しみも同情されない。息をする事さえ困難な、その苦しみさえ理解されない。

 ……だから。

 だからそんな私が。私とは対極の場所にある彼女に憧れたのは当然の事だった。彼女のように成りたいと思うのは当然の事だったのだ。

でも、彼女の日向と私の日陰の間にはあまりにも明確な境界線があった。

それは、決して交わる事は無い。どんなに手を伸ばしても、それが彼女に届く事は無い。

 けれど、ある奇跡があった。

 雪の降る日。

 日向から伸ばされた彼女の手。

 本来、交わることの無いそれを前に私は――。

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