幕間2 ~そして、ある殺人鬼の場合~
「――。」
周囲の気配に気を配りながら、街道から外れた獣道をひたすら歩く。息は乱れ、羽織ったマントはボロボロになりながら、それでもただ歩く。
疲労が蓄積している。腰に下げた剣が重い。だが、この剣を捨てるわけにはいかない。これが無ければ夜道で出くわす魔獣と戦えない。日中であれば、魔獣との遭遇は避けられる。けれど、日中の移動は出来ない。今はまだ私が犯した事は人々には知れ渡っていないかもしれない。けれど、ろくな装備も持たず旅をしている今の様子を見られれば、それだけで怪しまれるに違いない。
夜空を見上げれば、そこにはあまりにも頼りない三日月。あと数日もすれば新月になる。新月の闇夜の中での野営は避けたい。それまでには街に辿り着かなくては。
「リズ・シルノフ・アジリエート……。」
何の感慨もなく、あるいは、万感を込めて。その名を呟く。彼女から、全てを奪ったその名を。
意思が瞳に宿る。折れかけた心が燃焼する。私は、まだ死ねないのだ。まだ私にはやらなくてはならない事が残されている。
私は向かう。彼女の居るドラゴニアへ。そしてその途上のハイデルンの町へ――。
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