三十、難問出題鍵
それから何人もの隊員と出会ったが結果は芳しくなかった。多くの兵士はケネスと同じく、何らかの重要な任務に従事していると断言したが、根拠に乏しく曖昧だった。もっとも第一連隊の任務も似たようなものだったけれど。
アガサは地下に潜伏しつつ、ジュジュに〈秘密兵器〉を作成してくれることを約束した。他の隊員たちも、出勤数を増やすことはあまり積極的ではなさそうだったが、市内を巡回中の話し相手にはなってくれそうだった。今は情報を得つつ、各々を理解することが大事だと考え、ジュジュは日々徒歩や電車で街をぶらついた。
「一番隊がスフィンクスの総力を結集した巨大怪獣を討伐したって話さ。しょうもねえ」いつものように駅裏でケネスはくだを巻いている。「あんたはよくご存知だろうけど一番隊のパワーなんざこけおどしさ。あとはただのどんちゃん騒ぎ。こっちみたく地道な活動を繰り返すってのが本当の仕事だってのに」
「仰るとおりで」
「コーヒーでも買ってくるぜ。電車見といてくんない」
「分かりました」
そう言ってジュジュは地面の蟻を見ていた。
後日アガサの元を尋ねると、「来たねえジャッジ副長! お待ちかねの新兵器だぜ! 〈難問出題鍵〉だ!」と言って鍵束を差し出した。
「これはいったいどういう形式の兵器ですか? スフィンクスのものに似ているようですが」
「いかにも! こいつはトルメンタ波動を異常発生させて問題に即した怪物を出現させるってのはご存知のとおり、しかし! こいつは断片全域から集中的に波動を集めて問題もクソもない異形を呼び出すしろもので、スフィンクスでもテクノロジーはあったけどさすがにご法度ってんで日の目をみなかったやつの強化版! 使えば地獄! すばらしいぜ!」
「そんなぶっそうなものは欲しくないのですが」
「なんだよ! 往来を修羅の巷と化したくないのか! あたしはそれがやりたいから秘密結社に入ったってのに! しゃあないなあこいつは保管しておくか。オーガストの野郎が来たときの迎撃に使用してやるぜ」
何かいやな予感がしたが、それは的中し、三日後再び来るとアパートのあった場所は立ち入り禁止となっていた。地下への階段を覗くとまだ生きている異形の肉塊が蠢いている。さすがに踵を返すと背後にアガサが立っていた。
「おお副長、どうだいこのナイスなデザインの肉! ちょっとずつ食ってるわけよ、図らずとも食費は節約できたな!」
「オーガストが来襲したのですか?」
「いや間違ってテーブルから落としたら発動しちまったぜ! ここの大家さんには悪いことしたけどまあ肉屋にでもなればいいんじゃないの! 無限に増殖するし!」
実際にそうしたらしいが後日食中毒で死者が出て、すべて焼き払われることとなった。
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