二、連隊結成のいきさつ

 銀朱連隊の起源は四百年ほど前に遡る。諸国が争いに明け暮れる中、突如としてその怪異は現れた。〈リドル〉、それが何かは誰も知らなかった。

 それに足を噛まれたという者もいれば、夜道で目を光らせているのを見た、という者もいた。

 血を吸われた。口から火を吐いていた。人肉を喰らっていた。剣を振り回していた。

 畑が荒らされた。父が殺された。憑依されて他人を殴ってしまった。唆されて飲むまいとしていた酒を飲んでしまった。

 など、被害が多く、見た目も、小鬼、火球、竜、大男、小娘、老婆、鎧姿の騎士、巨人、霧、泥、猫、犬、牛、などなど多種多様で、いったいそれが何か誰にも分からなかった。

 そのうち、一国がリドルのせいで滅んでしまった。どのように滅んだのかは誰も知らない。

 このままでは世界がリドルに破滅させられるのではないかと誰もが恐怖したとき、その男は現れた。

 その人物は一般的に〈イスカンダール皇子〉と呼ばれる、異国の第十だか第十一皇子で、金にものを言わせて遊蕩の旅を送っていた最中、リドルの暴虐を見て、いても立ってもいられなくなり立ち上がったのだ。

 イスカンダールは燃えるような朱の両目をしていた。

 そして、同じ色の外套と、誰も名前を聞いたことのない神に祝福された、一振りの剣を持っていた。

 その当時リドルによって苦しんでいた王国にやって来た皇子は、その剣と今ではあまり詳細が分からない秘術、魔術、呪術、謎の道具、技術、発声法、呼吸法、剣技、体術、交渉術を用いて、彼に賛同した王国の騎士団とともにリドルを倒した。

 英雄となったイスカンダールはその国の王女を娶り、大公の位を授かった。

 彼と同盟者は銀朱連隊を名乗り、リドルと戦い続けた。

 彼らが用いた技の数々は、断片的な情報を元に再現され〈銀朱流〉として連隊が今日でも最大の武器として振るっている。

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