晦冥のリドル

澁谷晴

一、銀朱連隊

 ジュジュことジュリエット・ジャッジは大学を中退すると、悲願だった対リドル機構、〈銀朱連隊〉へ入社した。

 面接したのはシャーマンという三十歳くらいの女性で、場所は薄暗い喫茶店だった。彼女の長い黒髪はぼさぼさで、伸び放題の前髪のせいで表情を窺うことはできなかったが、きっと苦虫を噛み潰したような表情だろう。

「ジャッジさん、おたくさあ、うちに入りたいって?」

「入りたいです。そういう系統の話をしに来たんです」

「ああ」

 そこでシャーマンは言葉を切って、五十秒ほどジュジュを見た。

「我が社をどう捉えてる? これは面接、希望者はたくさん。あと私がすることといったら言葉尻、揚げ足、そういうのを捕らえまくる。分かる? おたくの意識だ。そいつを知りたい」

「太陽的な。太陽的なものだと思っています。あとは解明者、百万人くらいの沢山の」

太陽SOL? で、解明者SOLVER? なるほどね、銀朱VERMILLIONの解明者が百万人MILLION、か? 百万人もいないよ、そこら」

「それでもと輝く太陽です、そういった方向の存在? 的な」

「太陽が三千個もあったらえらいことだ――うちで絶賛故障中の湯沸かし器を直す手間は省けるが――だが正解だ、おたくの意識、当たらずとも遠からず、だ。解明が任務、役割、使命、宿命。連隊はリドルどもを駆除できる唯一の存在だ。この世の希望だ。太陽というのもあながち違うわけじゃない。違わない。リドルは人類世界にとって害悪、停滞、悪鬼羅刹、ほっといたら超ヤバい。それでおたくは我が社に入りたいんですか? 太陽な解明者、銀朱の勇者、英雄、それに加入したいっていう思考、願望、意思、労働意欲、あるんだ?」

「はい、そのような方向性で」

 するとまたシャーマンは三十秒ほど黙って、

「いいだろう。採用する。正社員。そして我が部隊におたくは加入する。そうしたのなら、分かるかな。分かるだろうな。ジュリエット・ジャッジ。履歴書にも書いてあるけど〈ジュジュ〉と呼んで欲しいって? フレンドリーだね。フランクだね。おたくの意思を信じよう。ジュジュ、加入した暁には」

 シャーマンは伝票を掴んで立った。ジュジュは慌てて半分くらい残っていた紅茶を飲み干す。

「私のことは隊長って呼ぶんだ」

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