episode44 玉鬘のお悩み       竹河

 ◇竹河ざっくりあらすじ

 源氏の養女の玉鬘の一家の近況が語られます。年頃の娘を誰に嫁がせようか悩んでいるようです。



【超訳】竹河 匂宮三帖

 薫 14~23歳 匂宮 15~24歳

 夕霧 40~49歳 玉鬘 47~56歳

 冷泉院 43~52歳 今上帝 35~44歳



 ―― 玉鬘のお悩み ――

 髭黒は太政大臣まで出世したけれど亡くなってしまい、玉鬘は息子3人、娘2人の世話に追われているの。経済的には困っていないんだけれど、訪れる人もあまりいなくて、源氏繋がりで夕霧がときどき様子を見に行っている程度なの。


 玉鬘は娘たちのことで悩んでいるの。息子たちは元服して自分で出世していくんだろうけれど、娘たちを誰と結婚させればいいのかいろいろ考えているみたい。亡夫の髭黒が娘に宮仕えさせたいって言っていて、今上帝も長女の入内を希望してるんですって。でも今上帝には明石中宮がいるのでたとえ入内しても敵わないわよねぇと思うとなかなか決断できないの。

 それから冷泉院もこの長女との結婚を考えているんだけど、以前自分が宮仕えするはずだったのに髭黒と結婚することになったいきさつを考えるとこの縁談もためらっちゃうのよね。

「親代わりだと思って大切にするので娘さんをください」

 冷泉院からそんなお手紙まで来るの。自分は冷泉院とはご縁がなかったからあのとき(髭黒と突然結婚してしまった)のお詫びに娘を嫁がせようかしらとも考えたりもして玉鬘は悩んでいるみたい。


 ―― 夕霧の息子と玉鬘の娘 ――

 それに夕霧の息子の蔵人くろうど少将も結婚の申し込みに来てるの。蔵人少将は夕霧と雲居の雁の子で他の息子たちよりも出世も早くて性格もよく、両親からも可愛がられているの。玉鬘にとって夕霧は義理の弟だし、雲居の雁は腹違いの妹で近しい間柄だから夕霧の子どもたちも玉鬘の息子たちとも仲良くて、お屋敷にもよく遊びに来ているの。でも蔵人少将はまだ若いから官位が低くて身分違いなんですって。でも夕霧からも雲居の雁からも「うちの息子と結婚してほしい」って手紙がくるの。玉鬘は長女には身分の高い人と結婚させたいなと思っているのね、ただ二女なら蔵人少将がそのうち出世したら結婚を考えてもいいかも、って玉鬘は思っているみたい。

 そんな蔵人少将が玉鬘に認めてもらえないなら無理に娘の所に侵入してきて強行突破されないように、玉鬘は女房たちに「絶対に間違いが起きないように」気を付けさせているんですって。


 ―― 玉鬘の思惑 ――

 そのころ薫は14,5歳になっているんだけど、歳よりは大人びていて素晴らしい青年に成長していたから玉鬘はうちの婿になって欲しいわなんて思い始めたのね。

 薫の実家の三条邸と玉鬘のお屋敷は近所だったから薫もよく玉鬘の息子たちに誘われて遊びに来るのね。年頃の娘のいるお屋敷だから大勢男子たちが訪ねて来るんだけど、見た目の美しさも感じのよい性格も薫を超える人は誰もいないみたいね。

 玉鬘にしても源氏にはとても大事にしてもらったから薫のことを弟のように親しみを持っているの。


 お正月に夕霧や紅梅が息子たちを連れてきてくれるんだけど、彼らが帰ったあとに薫が訪ねてきてくれるの。夕霧の息子たちも家柄もいいし綺麗な公達だけれど、薫の美しさは群を抜いているみたいなの。女房たちもきゃあきゃあ盛り上がっていて、

「やっぱり姫様には薫さまのお隣がお似合いだわ」

 なんて言っているんですって。とにかく薫と話をしたい女房達が次々話をふるんだけれど、薫の反応リアクションはイマイチなのよね。

 夕霧は年をとればとるほどに源氏にそっくりになっていくけれど、薫は見た目は違うけれど、雰囲気オーラが源氏に似ていてきっと源氏の若い頃は薫のようだったんじゃないかしらって薫が帰ったあとで玉鬘はそんな風に女房と話しているの。女房たちもあたりに漂う薫の残り香でまだ盛り上がっているのよね。


 ―― 薫とのセッション ――

 薫は周りからカタブツ呼ばわりされるほどの超生真面目オトコ。でもあんまりにもカタブツ扱いされるのも面白くないので、ちょっと気取って玉鬘のお屋敷に遊びに行くことにするの。梅の花の季節みたいよ。

 お屋敷の入り口で夕霧の息子の蔵人少将と鉢合わせるの。お屋敷から楽器の音が聴こえてくるからひょっとして玉鬘の長女が弾いているのかもって立ち聞きしてたんですって。玉鬘からは認めてもらってないから望み薄だろうになぁって薫は同情しながらも彼と一緒に敷地を進むの。薫が歌を口ずさみながら歩いて行くと、お屋敷から聞こえる演奏が薫の歌にぴったり合っているんですって。薫も気分がノッてきてこの前のお正月とはうってかわって冗談なんかも言ったりするの。


 お屋敷に来た薫に玉鬘は和琴を弾いてとリクエストするの。薫の爪弾く琴が玉鬘の実の父(元頭中将)の音色にそっくりなのね。でもそれ以上に柏木の音色そのまんまに聞こえてきて、玉鬘は思わず涙ぐむんですって。

 何をしても薫が注目の的になってしまうので、夕霧の息子は自分がふがいなくて落ち込んじゃうの。


 ~ 人はみな 花に心を 移すらむ ひとりぞまどふ 春の夜の闇 ~

(みんなが薫に夢中だから僕はひとりで春の闇を彷徨っているんだ)


 翌朝、薫は音楽会の御礼に和歌を送ってくるんだけれど、玉鬘の姫君への想いがほのめかしてあったみたいよ。


 ~ 竹河たけかはの はしうちいでし 一節ひとふしに 深き心の 底は知りきや ~

(あの夜に謡った竹河の歌詞のように僕の気持ちを知っていただけましたか?)


 この日以来薫は玉鬘の息子のところによく遊びに来て、姫君のことを気にしだすの。そして、玉鬘も薫が我が家の婿に来てくれないかしら、相手は誰がいいかしら、なんて考えているんですって。


 ―― 長女の縁談 ――

 3月になって桜の木の近くで玉鬘の娘ふたりが碁を楽しんでいるの。姫君たちは18、9歳で容姿も性格もそれぞれに素晴らしいの。長女は気高く美しくて華やかなカンジで、お母さんの玉鬘が「普通の人の妻にはしたくない」って思うのももっともなのよね。二女は清楚で聡明な顔立ちなの。


 玉鬘の息子たちは冷泉院と長女との結婚に反対なの。帝位を退いている院よりもこれから帝になる東宮の方がいいんじゃないかってお母さんの玉鬘に提案するの。


 月日が経っても冷泉院からのアプローチはまだ続いているの。おまけに冷泉院のお妃で玉鬘の異母妹の弘徽殿女御からも気にしないでどうぞと言われちゃうの。もう断り切れないわね、ということで結婚準備を始めると、息子の蔵人少将に泣きつかれた雲居の雁(夕霧の正室で玉鬘の異母妹)からも手紙が来て玉鬘は本当に困っちゃうのよね。


 雲居の雁には「いずれ二女を息子さんに……」って玉鬘は返事するんだけど、息子は長女のことが好きだからそんな提案は受け入れられないの。そんな間にも長女の結婚準備は進んでいって、夕霧も雲居の雁ももうどうしようもできなかったみたいね。


 ―― さらに玉鬘のお悩み ――

 4月に長女が冷泉院と結婚したの。蔵人少将も薫も失恋で落ち込んでるの。今上帝までもが玉鬘の息子に不平を言い、そのことを息子は玉鬘に伝えるけれどいまさらどうにもならないわよね。

 冷泉院は長女をとても寵愛して、長女はすぐに妊娠して女の子を産んだの。産後も冷泉院の寵愛が変わらないから弘徽殿女御の女房たちは面白くなくて女房同士のもめごとも出てくるの。おまけにいまだに今上帝が愚痴ってくるから玉鬘は二女を帝に入内させることに決めちゃうの。


 なにはともあれふたりの娘を嫁がせたので玉鬘は出家しようって思うんだけど、息子たちに反対されちゃうの。

 長女は男の子も産んで冷泉院の愛情を独り占めしていたから、とうとう弘徽殿女御との関係までギクシャクしてきちゃうの。そんな話を聞くと宮仕えなんてさせるんじゃなかったわ、って玉鬘は後悔したんですって。



 ◇源氏亡きあとの玉鬘一家の近況ですね。夕霧に紅梅に玉鬘、子供たちの「婚活」に忙しそうですね。

 さあ、次巻から宇治十帖です。いよいよ薫と匂宮の物語が動き始めます。



 ~ 人はみな 花に心を 移すらむ ひとりぞまどふ 春の夜の闇 ~

 蔵人少将が落ち込んで思わず口をついた歌


 ~ 竹河たけかはの はしうちいでし 一節ひとふしに 深き心の 底は知りきや ~

 薫が玉鬘に長女のことを想って贈った歌



 第四十四帖 竹河


 ☆☆☆

【別冊】源氏物語のご案内

 源氏トリビアを更新します。

 よかったらご覧くださいね。


 源氏の世界⑪ 『源氏物語』ツアー京都編https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054886857416

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