episode29 ふたりのお父さん 行幸
◇
冷泉帝の姿を拝見して玉鬘はときめいてしまいます。一方で源氏はようやく内大臣に玉鬘のことを知らせます。実の父親の内大臣と玉鬘はやっと対面を果たします。
【超訳】
源氏 36~37歳 紫の上 28~29歳
玉鬘 22~23歳 夕霧 15~16歳
冷泉帝 18~19歳
―― 帝のお出かけ ――
あいかわらず源氏は玉鬘を溺愛していて、紫の上が心配している通りになるかもしれないの。でもそうなると玉鬘の実のお父さんの内大臣から仰々しくお婿さん扱いされるのもゾッとするよなって思って源氏は玉鬘と恋人関係になるのを抑えているみたい。
12月になって冷泉帝の
冷泉帝がお通りになると、その美しいお姿に玉鬘は見惚れちゃうの。本当のお父さんの内大臣や兄弟も通ったんだけど、帝のインパクトが強すぎてあんまり覚えていないみたい。冷泉帝はなんとなく源氏に似ているみたいだけれど、源氏以上に厳かな雰囲気の方だわって玉鬘は思ったみたい。普段源氏や夕霧を見ていて貴族の男子はみんなキレイだと思っていたんだけれど、帝の美しさはこの世のものとは思えないほどみたいね。他にも
次の日に源氏は「素敵な帝を見て、宮仕えしたくなったんじゃない?」と手紙を送るの。玉鬘は思っていたことを見透かされちゃった気分になるの。実は最近源氏は玉鬘に宮仕え(宮中で女官として働くこと)を考え始めていたのね。尚侍といって後宮を取り仕切ったり、帝のご寵愛を受けたりする可能性もある役職なのね。(朧月夜尚侍は朱雀帝の寵妃だったわね)玉鬘は帝の寵愛を受けるというのではなく、お仕事として宮中に上がるのはいいことかもしれないって思っていたみたい。
~ うちきらし 朝曇りせし みゆきには さやかに空の 光やは見し ~
(雪がちらついてたので、はっきりと帝の御顔はみられませんでしたので(宮仕え)は決められません)
源氏の提案に玉鬘は歌で答えるの。源氏は紫の上と一緒にその歌を読んで、紫の上にも玉鬘を尚侍にしようとしていることを話すの。
「秋好中宮さまが養女だし、新弘徽殿女御さまは内大臣のお子様だから玉鬘を女御(お妃)としては出せないけれど尚侍ならね。若い女子が帝の顔を見たらその気になると思ったんだけどな」
~ あかねさす 光は空に 曇らぬを などてみゆきを 目をきらしけん ~
(帝の美しさは光り輝いているのにどうしてちゃんと見なかったの?)
「気持ちを決めるといいよ」
源氏はしょっちゅうそんな風に進めたみたいね。
―― 父との対面、玉鬘の真実 ――
ひとまず源氏は玉鬘の
大宮さまはご病気だったのだけれど、源氏のお見舞いを喜ぶの。ついでのように内大臣にお願いしたいことがあると話すの。大宮さまは夕霧と雲居の雁のことだわって思ったんだけれど、源氏が話したのは玉鬘のことだったの。内大臣の娘ということは大宮さまにとっては孫になるわね。
内大臣のところにも源氏が大宮さまのお見舞いに行っているって知らせは届いているの。
「母上の屋敷はあんまり人がいないからな。源氏(太政大臣)をちゃんとおもてなししてるんだろうか」
「俺が行ってもいいんだけど、それだと大げさになるからお前たち行ってこい」
自分の息子たちを大宮さまのところに行かせようとしていると、大宮さまからのお手紙が届くの。
「源氏の君からお話があるようなので、こちらにいらっしゃい」
手紙を読んで、内大臣もこれは夕霧と雲居の雁のことだと思うのよね。
「こうまで言われちゃしょうがないな。行ってやるか」
特に身だしなみに気を使って出かけることにするの。
大宮邸で久しぶりに源氏と内大臣は対面するの。今は政敵同士だけれど、以前は良き友人で良きライバルだったなぁとお酒を飲みながら昔話に花を咲かせるの。
そこで源氏は内大臣に玉鬘の話をするの。まさかの展開に内大臣は驚いたけれど、探していた娘が見つかり、裳着の後見役も当然引き受けてくれたわ。
でも夕霧と雲居の雁の話はその日はされなかったから、内大臣にしてみれば少しだけあれ? と疑問の残る対面ではあったみたいね。
玉鬘のことを喜んだ内大臣だったけれど、ひょっとして源氏がすでに玉鬘に手を出してるんじゃないの? って疑うの。でも自分の娘(新弘徽殿女御)が冷泉帝のお妃なので玉鬘を宮仕えに出すのも困るなぁ、源氏の愛人でもいいのかもなぁなんて考えるの。
源氏は玉鬘にも話したの。ようやく実のお父さんに自分のことを知ってもらえて会えることになって玉鬘は喜ぶの。
夕霧にも源氏の子どもではない(=夕霧の姉ではない)ことを話すの。あの台風の日にちらっと見た源氏と玉鬘の様子は親子じゃなかったからなのかと妙に夕霧は納得したのね。そしてだったら自分も玉鬘のことを好きになってもよかったんじゃん、なんて思うのだけれど、いやいや、いかんいかんと自制するところが真面目な夕霧らしさなのよね。
―― 玉鬘の裳着 ――
迎えた裳着の日はおばあさまの大宮さまや源氏の養女の秋好中宮さまや六条院の夫人がたなどからお祝いの贈り物や和歌が届くの。
~ ふたかたに 言ひもてゆけば
(
大宮さまはそんな和歌を贈られたの。
二条院に住んでいる人たちはお祝いは遠慮したんだけれど、古風な末摘花からは贈り物と和歌が届くの。しかも玉鬘宛てではなく源氏へのクレームのような和歌に源氏も苦笑して返歌をするのよね。
~ わが身こそ うらみられけれ
(あなたのそばにいられない自分が恨めしいわ)
~
(毎度毎度のからころも、安定のからころもだよね)
裳着の式はとても盛大で、実の子でもない玉鬘のためにこんなに立派な式をするなんて、って内大臣は驚きながらも「やっぱり下心があるんじゃね?」なんて怪しむの。
今までも玉鬘に猛アピールしていた蛍兵部卿宮はまた源氏に結婚の申し出をするんだけれどはぐらかされちゃったみたいね。
―― 近江の君 ――
玉鬘のことは内大臣が引き取っている近江の君にも伝わったの。自分と同じ身分の低い人が母なのに、内大臣さまがお父さんの上に源氏の大臣にまで大切にされてることを恨んでいるの。
「宮仕えならアタシがしたかったのに。柏木のお兄さんが無理にアタシを連れてきたくせに! こうなったら頼れるのは女御さまだけよっ!!」
本気で怒っている近江の君を兄弟たちは茶化すの。
「尚侍の欠員があるんだったら、僕たちも応募しようと思ってたのに」
内大臣もからかって面白がるの。
「宮仕えしたいんだったら、帝に手紙でも書けばいいのに。長歌なんて書いてみれば?」
「ウッソ、ホント? じゃあお父ちゃんが下書きしてそれにアタシがちょい付け足すカンジでどうかな」
几帳の後ろに控えている女房たちは笑いたいのを我慢するのに必死みたい。
落ち込んだときは近江の君と話すに限るだなんて内大臣は言ってるんだとか。
◇二十二帖で源氏が見つけ出した玉鬘、ようやく二十九帖で実のお父さんと対面できました。内大臣は娘が見つかったことを喜び、また政略結婚などを考え始めますが、ひょっとして源氏が手を出したんじゃないかとも疑っているようですね。
~ ふたかたに 言ひもてゆけば
三条大宮さまが孫とわかった玉鬘に贈った歌
第二九帖 行幸
☆☆☆
【別冊】源氏物語のご案内
源氏物語や平安トリビアについて綴っています。
よかったら合わせてお楽しみくださいね。
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