episode25 恋多き父と一途な息子 蛍
◇蛍ざっくりあらすじ
源氏は玉鬘を訪ねては口説いて困らせたかと思えば、玉鬘のことを好きな蛍兵部卿宮の恋心を焚きつけるようなこともして、玉鬘は戸惑うばかりです。
一方源氏の息子の夕霧は引き離された幼馴染の雲居の雁のことを一途に想い続けています。
【超訳】蛍 玉鬘十帖
源氏 36歳 紫の上 28歳
玉鬘 22歳
夕霧 15歳 柏木 20歳
―― 源氏のサプライズ演出? ――
源氏から想いを寄せているだなんて告白をされちゃった玉鬘は憂鬱な日々を暮らしているの。父親がわりに身元を引き受けてくれた人からのまさかの告白に、こんな目に遭うのも母親の夕顔が早くに亡くなっちゃったからだわって思って悲しく思っているみたい。
源氏も気持ちを伝えはしたものの、これ以上深入りしちゃいかん、と思ったらしく気持ちを抑えつつもしょっちゅう玉鬘の部屋には通うのよね。そして会っては玉鬘を口説いて困らせていたみたい。
玉鬘は明るく朗らかな性格でまじめなんだけれど、それでもこぼれるような愛嬌がある魅力的な女性だったみたいよ。
そんななか、源氏の異母弟の蛍兵部卿宮は相変わらず玉鬘にアツい
照明を落としたお部屋のインテリアもステキで、
暗闇の中を一斉に蛍が飛び交い光を放つから、一瞬几帳の向こうの玉鬘の横顔が蛍兵部卿宮側から見えたの。あまりの玉鬘の美しさに蛍兵部卿宮はますます夢中になってしまうんだけど、その夜に蛍兵部卿宮が贈った歌への玉鬘の返歌はつれない内容だったんですって。
~ 鳴く声も 聞こえぬ虫の 思ひだに 人の消つには 消ゆるものかは ~
(恋心を語らない蛍だけれど、この恋の炎は人が消そうとしても消せませんよ)
~ 声はせで 身をのみ焦がす 蛍こそ いふよりまさる 思ひなるらめ ~
(声は出さずにひたすら身を焦がしている蛍の方が、口に出して愛を語るあなたよりも想いの深さは勝っているのでしょうね)
恋人のような振舞いをするかと思えば、他の男を焚きつけるようなことをする源氏に玉鬘は惑わされて戸惑うばかりだったのよね。
仮に実のお父さんの内大臣に娘と認めてもらっているなら、源氏と恋仲になるのもあり得るかもしれないけれど、今現在は源氏が父(養父)で自分は娘(養女)でありながら恋愛関係にあるなんて世間に知れたらどうしよう、って悩んでいるの。
一方の源氏も玉鬘が恐れているような見苦しい関係にしようとは思ってないみたい。ただ玉鬘のことは恋しいと思ってはいて、はたから見ると疑わしいような振舞いもするのよね。でも娘がわりの玉鬘を恋人にしようとはしないで、美しい気持ちだけで彼女を愛そうと自分を自制していたみたいね。
―― 源氏と花散里 ――
5月の端午の節句に花散里と夕霧が住む夏の町で弓の技を競う催しが行われたの。普段は静かな夏の町だったけれど、この日はとっても賑やかで晴れやかな催し物で見物している女房たちの衣装も美しいの。花散里も夕霧の母親気分で純粋に楽しんでいるみたいね。源氏と花散里は今日の催しに来ていた人たちの話をするの。
「兵部卿宮さまったらあなたより年下なのに老けちゃってるみたい」
源氏はその意見が当たっていると思いながらも微笑んだだけで否定も肯定もしないの。でも花散里は玉鬘に求婚してきている髭黒右大将のことを褒めたからそれは面白くなかったみたいね。
久しぶりに源氏は花散里のところに泊まるんだけど、花散里はもう若くないので別々に寝ましょって言ったみたい。長い付き合いなのに今でも多くを望まず、控えめで優しい花散里にやっぱり源氏は癒されるのね。
「六条院でも目立たないわたしのことを気にかけてくださってどうもありがとう」
花散里がそんな風に和歌を詠みながら御礼を言うから源氏もぐっとくるのよね。
「いつだって一緒にいるよ。キミと別れたりなんかできないよ」
気持ちで結ばれているふたりのようね。
梅雨に入り、六条院では女君が女房達と物語を読みあいながら盛り上がっているの。源氏もときどきそんな女子トークに参加しながらも玉鬘に言い寄ったりしているの。
紫の上も明石の姫君に物語を読み聞かせしてあげているの。姫君が昼寝をしている間に源氏がやってきて、恋愛描写が多かったり、継母が子供をいじめる話なんかは姫君にふさわしくないからとあれこれ指図をするのね。
自分のことを棚にあげてこんなことを話している源氏を玉鬘が聞いたとしたらどう思うのかしらね?
―― 子どもたちの恋 ――
自分が父親の妃(藤壺の宮)に恋してしまったような過ちがあってはいけないからと、源氏は息子の夕霧を紫の上に近づけないようにしていたのね。けれども明石の姫君とは兄妹だからと夕霧と姫君とは遠ざけなかったの。夕霧も気軽に姫君の部屋の御簾内にも入っていってお人形遊びの相手もしてあげていたの。でも、そうしていると昔雲居の雁と遊んだことも思い出したりもしているみたいね。
夕霧は女の子と軽い言葉を交わしたりはすることはあっても、結婚もせず、誰かと深く付き合ったりすることもなく、ずっと雲居の雁のことを想っているのよね。
雲居の雁の父親の内大臣に頼み込めば交際は許してもらえるのだろうけれど、内大臣に認めてもらって向こうから折れてくれるのを待つと誓った夕霧は律儀にそれを守っていたの。雲居の雁とは手紙のやりとりをたまにするだけだったみたい。
一方、内大臣の息子の柏木は、友人の夕霧に玉鬘との仲をとりもって欲しいと頼むんだけど夕霧はさらりとかわしてしまい、まるで昔の源氏と内大臣の関係みたいなの。
源氏とは違って子供がたくさんいる内大臣。けれども男子が多く、女子は長女の新弘徽殿女御を中宮にできず、二女の雲居の雁も夕霧とのウワサが広まり他の人と結婚させるわけにもいかず、悩みのたねだったのね。
じゃあ、ということで若い頃に付き合っていて娘を産んでくれた夕顔(頭中将は撫子と呼んでいた→episode2 男子会の恋バナ 空蝉)とその娘を探そうとするの。占い師にも「長年忘れていた娘が、他所の養女になっている」なんて言われたものだから息子たちに探させるように指示をしたんですって。
◇源氏の思惑と玉鬘の戸惑い、それに蛍兵部卿宮の玉鬘への想いが綴られています。それから夕霧の近況ですね。一途に雲居の雁を想っていますが進展しない恋路はお父さんとはずいぶん違っていますよね。
~ 鳴く声も 聞こえぬ虫の 思ひだに 人の消つには 消ゆるものかは ~
蛍兵部卿宮が玉鬘に贈った歌
~ 声はせで 身をのみ焦がす 蛍こそ いふよりまさる 思ひなるらめ ~
玉鬘が蛍兵部卿宮に返した歌
第二十五帖 蛍
☆☆☆
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