episode22 元カノのムスメ 玉鬘
◇
若い頃の恋人だった夕顔の娘(源氏の子ではない)を見つけ出し、源氏は養女として引き取り六条院に呼び寄せます。
【超訳】玉鬘 玉鬘十帖
源氏 35歳 紫の上 27歳
玉鬘 21歳
―― 夕顔のこと ――
源氏は若い頃に亡くしてしまった恋人の夕顔のことをいまだに忘れられないでいたの。デートに連れ出したんだけれど、突然亡くなってしまったのよね(episode4 年上の彼女と癒しの彼女 夕顔)
他にも恋人なんていたけれど、「もしも生きていてくれたら」って今でも夕顔のことを想っているの。
夕顔を亡くしたあと、侍女の右近はそのまま源氏と紫の上に女房として仕えていたの。もう何年も経つんだけど、右近もまだ夕顔の死を残念だと思っていたのよね。きっと生きていらしたら明石の御方さまくらいには源氏の殿から愛されていただろうに、きっとこの六条院に住んでいらしただろうに、って思っていたみたい。
源氏と付き合う前に内大臣(頭中将)との間に産んでいる娘のことも源氏は探しているんだけど、見つけられないでいたの。
―― 夕顔のムスメ ――
あの頃、源氏と夕顔が出かけたあと、夕顔と侍女の右近は行方不明になってしまい、家来たちは心配するんだけれど、ふたりは帰ってこないの。
そんなとき夕顔の娘の
何年かして大宰府の任期を終えた乳母の夫だったんだけれど、都に戻る前に病気で亡くなってしまうの。家族にかならずお姫さま(夕顔の娘)を都に連れて帰り幸せにしてほしいと、そのためなら私の供養などいらないからと言い残して。
お姫さまはそのまま筑紫で成長して夕顔よりも美しい女性となっていたの。噂を聞きつけて地元の男子たちが求婚してくるんだけれど、いずれは都に戻るからと、乳母が身体に障害があって嫁げないと嘘をついてかわしていたの。
なんとか都へ連れて帰って、実父の内大臣に引き合わせたいと乳母たちは考えるんだけど、乳母の娘や息子は筑紫で結婚してしまい、すぐには動けずにいたのよ。
―― 都へ ――
肥後(熊本県)の役人で
けれど長男の
大夫監が追ってくるかと心配したけれど、なんとか逃げ延びて都へとたどり着いたのよ。
―― 感動の再会 ――
けれど都に着いたとはいえ、豊後の介や乳母には内大臣へのツテがなく、連絡のとりようがなかったの。とりあえずはお参りにでも、と神社やお寺参りに行くことに。
そこで偶然休暇をとって同じくお寺参りをしていた右近と感激の再会をすることになるの。
右近は成長した夕顔の娘の美しさに驚くの。源氏の奥様の紫の上さまにも劣らない美しさだと感心したの。都ではない田舎で育ったにもかかわらずよくぞこんなに気品高く育ててくれたと右近は乳母に感謝したのよ。
乳母は右近に姫さまのことを父親の内大臣に知らせてほしいと頼むんだけれど、実は探しているのは源氏だと話して、右近は過去のこと(夕顔は源氏とのデート中に亡くなった)を打ち明けたの。
―― 六条院へ ――
右近は六条院に戻るの。源氏と一緒にいる紫の上を見ると、夕顔の娘も美しかったけれど、やっぱり紫の上さまには適わないかしら、なんてことも思うらしいの。紫の上は27、8歳になっていて美しい盛りなの。右近の休暇中にさえまた美しくなったんじゃないかって思わせるほどなんですって。右近は源氏にとうとう夕顔の忘れ形見を見つけたことを報告。すると源氏はすぐに六条院に引き取ろうと言い出すの。実の父の内大臣に知らせたところで向こうは子だくさんで他の子どもたちに気おされてしまうだろうから、自分の元で養女として育てて世間に披露しようと考えるの。
夕顔の娘の元には源氏からの贈り物が次々と届くの。実の親でもない人からこのようなものをいただく理由がないと遠慮はするんだけれど、右近や周りの勧めもあって六条院に移ることにするの。六条院では夏の町に入ることになり、花散里が母親代わりを務めることになるの。源氏は紫の上にも事情を話したわ。
―― 亡き恋人の忘れ形見との対面 ――
とうとう夕顔の娘と源氏が対面するの。九州にいたころにも「都の光源氏」のウワサを知っていて、そのリアル源氏の美しさに姫も女房たちも圧倒されてしまうの。源氏はすっかり親気分で世間には自分の娘と知らせるの。姫は美しく感じがよかったから源氏は嬉しくて紫の上に話すの。都の男子たちが彼女に求婚にくることになる、と源氏は楽しみにするの。紫の上からは「変わったお父様ねぇ。男子たちを煽るなんて」と呆れられるの。源氏は彼女のことを想ってこんな歌を詠むの。
~ 恋ひわたる 身はそれなれど
(ずっと
そんな歌を詠って夕顔の娘のことを玉鬘と呼ぶようにするの。
夕霧も花散里に面倒を見てもらっているので、玉鬘のことを母親の違う姉だと思っているの。玉鬘は本当は姉弟ではないから気が引けちゃうんだけどね。筑紫からの脱出を協力してくれた豊後の介も六条院の
―― 六条院での新年 ――
お正月に向けて源氏は新しい衣装を用意するの。紫の上は六条院の方たちの衣装を源氏に見立てさせるのよ。
「俺が選ぶ衣装で相手を想像するなんてキミもやるね」
なんて紫の上をからかいながらも恋人たちの衣装を選ぶのよ。
そう、この時代の女性は自分の夫や恋人が他にも付き合ってい人がいると知ってはいても会ったことはないのが普通なのね。
まずは紫の上のために流行りの葡萄染め(えびぞめ)の紅梅模様を選ぶの。表が白で裏が赤の
「確かにその人らしいけれど、衣装と本人が合わない人もねぇ……」
と末摘花のために選んだ衣装を眺めながら、本人にもこれくらいの艶やかさがあればねぇとため息をつくの。
それから高貴な人が纏う紫色の衣装を明石の御方のために選ぶ源氏を見て、紫の上はやっぱり明石の御方はあなたにとってトクベツな方なのね、どんな素敵な女性なの? と思ったりするの。
尼になって二条院に住んでいる空蝉にも
衣装を贈られた方たちはそれぞれ御礼などのリアクションがあったんだけど、末摘花だけは例の「からころも」攻撃の和歌だったの。
~ 着てみれば うらみられけり からころも かへしやりてん 袖を濡らして ~
(衣装しか届けてくれないなんてあなたに逢えなくて泣いちゃうわよ。からころも! こんなお衣装返してやるんだから! 袖なんて(涙で)濡れちゃってるんだからねっ)
もう可笑しくて源氏は笑ったの。古風で奥様ぶってちょっと出過ぎたことをするんだよなぁと苦笑したのね。
◇若い頃の恋人で不慮の死を遂げてしまった夕顔の娘のお話です。いろいろあったけれど、源氏に養女として引き取られ六条院での華やかな暮らしが始まります。
ここからの十帖を「玉鬘十帖」とも呼びます。玉鬘の恋物語が始まります。
~ 恋ひわたる 身はそれなれど 玉鬘 いかなる筋を 尋ね来すらむ ~
源氏大臣が紫の上に玉鬘のことを明かした歌
第二十二帖 玉鬘
☆☆☆
【別冊】源氏物語のご案内
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topics14 源氏物語54帖のうちわけ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054884243326
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