episode18 ふたりの女性と娘のこと 松風
◇松風ざっくりあらすじ
明石で恋に落ちた明石の君が源氏との子の明石の姫君と共に京にやってきます。紫の上は動揺しますが、源氏は養女として姫を育ててみないかと紫の上に提案します。
【超訳】松風
源氏 31歳 紫の上 23歳
明石の君 22歳 明石の姫君 3歳
―― 明石の君のために ――
源氏がしていた二条院の東の院のリフォームが完成して西の棟に花散里が引っ越してきたの。東の棟には明石の君を迎えようと源氏は考えているみたい。北の対は他の恋人たちを住まわせようと細かく仕切った部屋を用意していて面白い間取りになっているんですって。寝殿は誰の住まいにもしないで、源氏が来たときに休憩所に使ったり来客用に使うつもりのようね。
明石の君には何度も手紙を送って「京においで」と言うんだけれど、明石の君は身分の低いわたしが高貴なみなさまと一緒に生きていくのはツラすぎますって思ってるの。そうはいっても源氏との子供の明石の姫君がこのまま明石で埋もれてしまうのもいけないわとも思っているのよね。
娘の明石の君の戸惑いとは関係なくお父さんの明石の入道は京へ引っ越す準備を始めていたの。いきなり源氏の二条院に行くのも娘が気おくれするだろうから、都に近い
それを聞いた源氏は喜んで、大堰川のお屋敷のリフォームにもあれこれ指示して、明石にも召使を行かせたの。
―― 明石の君、京へ ――
とうとう明石の君は明石を離れることになるの。明石の君と娘の明石の姫君、それからお母さんの
~ 行くさきを はるかに祈る 別れ
(姫君の幸せを祈る別れだが、涙は堪えることができないよ)
門出に縁起でもないと入道は涙を拭うの。
~ もろともに 都は
(あなたと一緒にこちらに来たのに、ひとりで都に戻ることになるなんて戸惑ってしまいます)
入道の妻の明石尼君がそう歌を詠んで泣いてしまうの。長年一緒に連れ添った夫と離れてこれからは娘の夫(源氏)を頼ることに不安でいっぱいなのよね。
~ いきてまた 逢ひ見んことを いつとてか 限りも知らぬ 世をば頼まん ~
(またお会いできるのがいつなのでしょうか。寿命だっていつまでかわかりません)
「せめて都まで送ってくれませんか?」
明石の君はお父さんにそうお願いするんだけれど、それはできないよと入道は言いながらも都までの道中のことはとても心配しているの。
「私が死んでも法事などは気にしなくてよい。悲しむ必要もない」
「(死んで)煙になる直前まで姫君のことを祈っている」
そう言って明石の入道は明石の君たちを見送ったの。
――
そんなお父さんと別れ、大堰川のお屋敷に来たのはいいけれど源氏はすぐには来てくれないのね。源氏が近くにいる京まで来たのに源氏には逢えなくて、離れてきた明石のことも恋しいし、明石の君はとても寂しく暮らしていて、源氏が明石でお別れのときに置いていったお琴を弾いたりして過ごしていたの。
~ ふるさとに 見し世の友を 恋ひわびて さへづることを
(懐かしいあなたのことを想ってあなたのお琴を弾くけれど、こんな田舎娘の琴を誰が気づいてくれるのかしら……)
源氏はすぐにでも行きたいんだけれど、変なウワサになっても嫌だから自分で紫の上に告白するのね。明石の君が京に来たことをね。それから自分の造っている嵯峨の御堂の用事があるから
当然紫の上のご機嫌は悪くなったわ。
そうしてなんとか源氏は大堰川の屋敷で明石の君と3年ぶりの再会を果たすの。明石での普段着姿でもステキだった源氏の正装はまばゆいほどに立派だったんですって。源氏もこんなに深く愛していたんだなって明石の君を見て思うの。姫君もとっても可愛らしく成長しているの。
お母さんの明石の尼君も源氏と明石の君との再会に今までの心配事も忘れ、ほっと一安心したの。
源氏も尼君に挨拶をして姫君を育ててくれたお礼を言うの。尼君は姫君の将来に母親(明石の君)の身分の低さが問題になるんじゃないかと不安ですって源氏に打ち明けるの。
―― 源氏と明石の君 ――
源氏は近くの御堂の建設の進捗を見に行っては明石の君のお屋敷に帰ってきて明石の君とのひとときを満喫するの。
~ 契りしに 変はらぬ 琴のしらべにて 絶えぬ心の ほどは知りきや ~
(あのとき約束しただろ? 俺の気持ちはあれからずっと変わってないよ)
~ 変はらじと 契りしことを 頼みにて 松の響に
(”気持ちは変わらない”ってその約束だけを信じていたの。浜辺の松風の音で泣き声を隠しながら)
明石にいたころよりもずっと美しくなった明石の君のことを源氏は永久に離れることはできないなって思うの。明石の君も同じ気持ちみたいね。源氏はすぐにでも明石の姫君を自分の近くで育てたいと思うんだけど、まだ明石の君は二条院には引っ越す勇気がないの。明石の君と姫君を引き離すのも可哀想だしね。でも身分の低い明石の君の子どもとして育つよりも身分の高い紫の上の養女として育てた方が姫君の将来的にはいいんじゃないかって源氏は考え始めるの。
しばらく明石の君の家に滞在していた源氏だけれど、二条院に帰る日になるの。
姫君が可愛らしく源氏に懐くから源氏は帰りたくないみたいね。明石の君も逢えたばかりなのに源氏が帰ってしまうから辛くて見送りもできないの。その姿は気品があって内親王かと思うほど気高い雰囲気なんですって。
源氏も男盛りの美男子なの。明石にいた頃は少し痩せていたけれど、今はとても素敵なオーラを放っているみたいよ。
―― 紫の上に打ち明ける ――
源氏はそのまま二条院に帰ろうとしたんだけれど、頭中将たちが遊びに来てしまってもう一泊して宴会をすることになるの。明石の君ともゆっくり別れを惜しむことも手紙を出すこともできなくて源氏も心残りだったみたいね。
源氏は二条院に戻って紫の上のご機嫌をとるの。そうは言いながらも明石の君と
源氏はこのことをどうやって明石の君に伝えたらいいんだろうって悩むの。月に2回程度しか明石の君のところには行けないの。七夕の恋人同士よりは短い期間だけれど、明石の君も源氏と逢えないつらい日を過ごしていたの。
◇久しぶりの明石の君との再会に可愛い姫君の登場です。その可愛い娘の将来を見据えて源氏は紫の上に養母になってもらおうと考えます。紫の上もその提案を喜んで引き受けますが、肝心の明石の君にはまだ伝えていません。
高貴な家柄だからでしょうね。子供の縁組で家を栄えさせたり、政略の手段にしたりするのは珍しいことではないのでしょうね。そのためには生みの母の身分が低いなら身分の高い妻を養母にしようということなのでしょうか。
~ 契りしに 変はらぬ 琴のしらべにて 絶えぬ心の ほどは知りきや ~
源氏大臣が明石の君に贈った歌
~ 変はらじと 契りしことを 頼みにて 松の響に
明石の君が源氏大臣に贈った歌
第十八帖 松風
☆☆☆
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