episode6 雪の朝の衝撃 末摘花
◇
ある姫のウワサを聞いた源氏は彼女に会おうとしますが、頭中将も彼女に関心を持っていると知って焦った源氏は彼女に猛烈アピールをします。上手くいったあとに襲うとある衝撃。
対して紫の君とは仲の良い兄妹のように過ごしています。
【超訳】
源氏 18~19歳 紫の君 10~11歳
―― 深窓の令嬢? ――
いつになっても源氏は夕顔を失ったことが残念な様子なの。正室の葵の上はあいかわらず冷たいし、付き合っている
「へ――、琴が上手な深窓の令嬢ねぇ」
いつものクセですぐに女の子に興味を持ってしまう源氏。一回その琴の演奏聞いてみたいな――と大輔の命婦にリクエストするの。
大輔の命婦がセッティングして源氏をお屋敷に呼んで姫に琴の演奏をしてもらったんだけど、これがそんなには上手じゃなかったのね。下手でもないんだけど、源氏の君のお琴の方がはるかに上手だったから大輔の命婦が機転をきかせて演奏を終わらせちゃったの。
「なんだかあんま聞こえなかったし、あれじゃ上手いかどうかわかんねぇよ」
「なあ、もう少し姫の近くに連れてってくんない?」
「そんなことムリに決まっているでしょうに」
源氏は大輔の命婦に文句を言いつつも、ホントのところはもっと近づきたいって煽られちゃったみたいね。
「姫と付き合えるようにセッティングよろしくな」
源氏は大輔の命婦にそう言って別のデートの約束があるのか帰ろうとするの。
「
幼なじみの気安さで大輔の命婦がそう言うの。
「へ――、こんなで浮気なんて言うならキミの派手なオトコづきあいはどう言うのさ」
源氏も大輔の命婦のことをからかうの。
―― VS 頭中将 恋の争い ――
ふと宮家の庭を見ると人影があるのね。誰かと思えば
「浮気現場、押さえたぜ」
頭中将は一大スクープを取ったかのようなドヤ顔なの。
「何してんの? おまえ」
源氏は相手が親友の頭中将だったから怒るどころかおかしくなってしまうの。
結局ふたりは頭中将の実家の左大臣家に行くことにしたの。源氏の正妻の葵の上は頭中将の妹で、ふたりは義理の兄弟でもあったのね。
左大臣家でも葵の上のところではなく、頭中将とついつい話しこむ源氏。話題はもちろんさっきのお屋敷のお姫様のこと。干渉する親兄弟がいなくて荒れていくお屋敷に住んでいる可憐なお姫さま、そんなお嬢さんを恋人にできたらいいよな。
(やばいじゃん、頭中将もあの姫を狙ってんのかよ、早くしないと……)
頭中将も頭中将で、これだけモテる源氏がここまで入れ込んでるなんて絶対にいいオンナだとばかりに
「ちょっとさ、文なんか送ってみたんだけどさ、もったいつけて返事が来ないんだよ。オマエんとこは?」
なんて頭中将が源氏に聞いてきたの。やっぱりコイツも狙ってんのかと源氏はニンマリするの。
「本命じゃねぇしな、返事来たんだかどうだか覚えてねぇわ」
そんな風にはぐらかして頭中将をけん制したの。
宮中の2大アイドル、光源氏と頭中将から文が届くという有り得ない状況に姫本人はもちろん、大輔の命婦すらビックリ。でも極度の恥ずかしがりで姫はどちらにも返事を出さなかったの。
―― 強行突破! ――
「なあ、1回も返事がねぇんだよ。俺のコト警戒してんじゃねぇの?」
いつになっても姫から返事をもらえない源氏は大輔の命婦にそう愚痴るの。
「あなたには釣り合わないかもしれないわよ。ちょっとないくらいおとなしい方だから」
大輔の命婦がそう牽制するの。
「おっとりしてるんだろ? カワイイじゃん。俺そういうコも好きだぜ?」
もう何が何でも源氏はその姫に会いたいのよね。
頭中将には取られたくないし、焦った源氏は大輔の命婦を説得して会わせてもらえるよう段どってもらうの。
「絶対お部屋には入らないでくださいね。障子越しですからね」
「オッケー、オッケー。わーってるよ」
源氏の性格をよく知っている大輔の命婦が何度も何度も念を押して屋敷へと連れて行ったの。
障子越しに源氏は会えて嬉しいとか、今までずっと会いたかったんだとかいつも通りに口説くんだけど、まったくレスポンスがないの。
「ちょ、ホントにそこにいる?」
そんなことを言いながら結局源氏は姫の部屋の中に入っちゃったの。
―― 素顔の姫君 ――
大輔の命婦との約束も破り、姫の部屋に入ってしまった源氏はそのまま姫と一晩を過ごして、明るくなる前に
一応、一夜を過ごした女の子に贈る
まだ少女だけど愛くるしい紫の君と遊んであげたりしていると、彼女の所に通うのもぶっちゃけ面倒くさいんだけど、まぁ手は出してしまったので、時々は通うことにするみたい。
ある雪の降った朝、戸を開けて降り積もった雪に反射する太陽の光のもと、源氏は初めて姫の顔を見てボーゼンとするの。可愛くなかったのよ。特に鼻が高いんだけど、先が曲がっていて赤かったの。とても痩せていて着物の上に毛皮を羽織っていたのもおばあさんみたいに見えたの。
「あああ、朝日で軒のつららは解けたのに、ど、ど、どうして氷(キミ)は溶けないんだろう……」
そんな歌を源氏は詠むんだけど、姫君はとっさに返歌ができなくて困っていて、見ているのもツラくて家に帰るの。
美人じゃないけどフツー程度なら源氏もここまでの衝撃は受けなかったんだけど、普通でもない容姿に可哀想になっちゃったみたいなの。でもここからが源氏の優しいところなんだけど、美人じゃないから、なかったことにして知らん顔ということはしないのよ。きっと他の男は我慢できないだろうから、自分が責任をとって生活の面倒を見てあげることにするの。もう色恋はなしで付き合っていこうぜというカンジかしらね。
元々が皇族の姫でスレていない素直な性格だから、源氏も「ま、いっか?」ってことになったみたい。
そんな源氏に姫もようやく心を開き始めて、お正月の支度にと源氏に和歌と衣装を届けるの。
~ からころも 君が心の つらければ
(あなたがツレナイからわたしのたもとはこんなに濡れちゃってるの)
上手でない和歌と野暮ったい衣装の贈り物に源氏はこんな歌を詠んだのよね。
~ なつかしき 色ともなしに 何にこの 末摘花を 袖にふれけむ ~
(大して好きでもないのに、なんであの子と付き合っちゃったんだ?)
これ以来、宮家の姫のことを末摘花の君と呼ぶことにしたの。末摘花というのは紅花のことなのね。紅花=赤い鼻ってことね。
―― 可愛い紫の君 ――
紫の君とは兄妹のような仲の良い関係だったの。まだ紫の君が幼いからさすがに結婚はしてないの。人形遊びをしているときに源氏はわざと紅を自分の鼻に塗ってふざけるの。
「俺がこんな風にブサイクになっちゃったらどうする?」
「そんなのいやだわ」
「やべ、赤いのが取れなくなっちゃったよ!」
「やだやだ! どうしたらいいの?」
紫の君が源氏の鼻が赤いままだったらどうしようと焦っているの。源氏も紅がとれないと言って紫の君をからかうの。心が癒されて和むひとときを源氏は満喫していたのね。
◇源氏物語で最も微笑ましい巻でしょうね。この頃の恋愛形式だと充分に起こりうることよね。会ったこともない人を好きになって、気持ちだけ盛り上がって、暗い夜に暗いお部屋でデートして、明るくなってからあらビックリっていうね。
対照的に幼くても可愛らしい紫の君が源氏の癒しになってきているわよね。こちらは幼いうちに自宅に連れてきているから(略奪まがいだったけど)、最初から顔を見ているし、そのお顔があの憧れの人とそっくりなんだし。こちらがこの時代では珍しいパターンでしょうね。
~ なつかしき 色ともなしに 何にこの 末摘花を 袖にふれけむ ~
源氏宰相の中将が末摘花の君のことを想って詠んだ歌
第六帖 末摘花
☆☆☆
【別冊】源氏物語のご案内
源氏物語や平安トリビアについて綴っています。
よかったら合わせてご覧くださいね。
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