4. 人生のリセット

 土曜日の早朝の車内はがらんとしていた。3年間毎日通過した3駅が窓の外を流れていく。

 そこから先はあまり見慣れない景色だった。

 横浜市内に住んでいながら、横浜の方まで出かけることは稀だったからだ。

 途中、桜木町駅を通るときに懐かしさがこみ上げてきた。彼氏が変わる度、最初のデートはみなとみらい行った。家族も友達も信用できない私は、そのときに付き合っている人がすべてだった。

 桜木町はいつも静かで美しい。駅を取り囲む透明な壁の向こうに、開けた広場とビルの間の空が見えた。

 みんなさようならだ。

 東京の田端へ引っ越すことは、ほとんどの知人に伝えていなかった。誰も自分のことなどさほど気にかけていないだろうと思っていたからだ。気付かれないうちに遠くへ行って、そのまま忘れられたかった。私も忘れてしまいたかった。全部リセットして、新しい人生を始めたかった。

 誰にも抑圧されず、命の危険もない人生。

 希望を持って生きられる人生を。

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