3. 夢が叶うとき

 早朝の駅前は人がまばらでいつもより広々と感じられた。ひんやりとした空気とまだ白っぽい日差しの良い春の日だった。

 宅配便の仕分けのアルバイトで知り合った彼の家で朝まで過ごして、その足で東京へ向かう。

「絶対東京まで遊びに行くからね」

 彼は人を信じ切ったような笑顔を見せる人だった。愛情とかそういったものが世の中にあるかもしれないと思わせてくれる人だった。

 もう、会うことはないだろう。

 改札を通って振り返ると彼は手を振っていた。

 私はもうこの町に帰ってくるつもりはない。全部捨ててでも、自分の道を行くと決めた。

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