2. 見捨てる
当時、母は子供たちが満足に食事が出来なくても、仕事に出ることはなかった。
10時には娘たちを布団に入らせ、自分は夜中の三時、四時までTVを見て過ごすのが習慣になっていた。私は睡眠が浅く、夜中に手洗いへ行こうと寝室を出ることが多かったが、TVの前の母が舌打ちするのが聞こえてくるのだった。
いつも戸棚に袋入りのこしあんがあって、どうしても空腹のとき妹たちと舐めていた。それは普段母が深夜に食べているものらしかった。
それでも母は働かず、高校生になった私のバイト代をアテにした。
「あんたから貰ってるわけじゃないから。借りてるだけだよ、返せばいいでしょ」
放課後毎日のように働いて得た金は、ろくに感謝もされることなく、奪われていく。大学に行くために始めたバイトだったが、一向に金は貯まらなかった。
「本当に出てっていいの?」
家を出ていけという言葉は、私にとっては救いの言葉だった。
妹のふたりを残して、家を出て行くことを決めた。
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