9 カエルの王子は見栄っ張り ①
1
「この服小さいです、着れませんって!」
「あんたみたいなへちゃむくれ娘が一丁前に服を着ようとするからよ! トルソーらしく大人しく服に着られてなさい!」
「そんなむちゃくちゃな!?」
「本当に入らないわね……あいつより胸がない癖にウエストが太いってどういうことよ。あいつがおかしいの? あんたが寸胴なの?」
「胸の話はしないでください……」
数日前のモデル代役探し依頼での約束通り、わたしは烏丸先輩のアトリエ――被服室で打ち合わせをしていた。もっとも、一方的に容姿をdisられることを打ち合わせと呼べるのなら、だけど。
「ていうか、あんた本当にフリル似合わないわね。これじゃ衣装案練り直さないといけないじゃない。どうしてくれんのよ……」
無理矢理わたしに着せたふりふりの服と自分のクロッキーを物凄い形相で見比べている烏丸先輩。どうすんのよ、と言われても。
「とりあえず少女的なデザインはやめたほうが良さそうね……体型から考えてもっと直線的で……あんまりマニッシュすぎても嫌だし……」
「あの、先輩?」
「うるさいわね! 今いいところなのよ!」
いいかげんお腹や腰が苦しくなってきて、服を脱いでもいいかと聞きたかっただけなのにこの言われよう。今更ながらこの一件、結局どっちも損しかしてないんじゃないだろうか。
「はぁ……」
やっぱりこの話なかったことにしちゃ駄目かなあ。モデルなんてただでさえ自信がないのに、文化祭までずっと烏丸先輩とこんなやりとりしなきゃいけないなんて。自然と出る溜め息と薄暗い未来に対する不安を抱えながら、ぼんやり視線を彷徨わせる。被服室は相変わらず混沌としていたが、掃除はきちんと行っているらしく埃っぽさや汚らしい感じはない。きらびやかで可愛らしい烏丸先輩の作品たちを見ると、どうしてこんな素敵な服を作る人があの烏丸先輩なのか不思議で仕方がなかった。
「……あ、これ可愛い」
烏丸先輩は洋服以外にも鞄や靴も手掛けているらしく、壁際にはそういった小物類が収められたショーケースがあった。その中でもひときわ目を引いたのは銀色に輝くハイヒールサンダルだった。いったいどんな素材でできているのか、ところどころ透明になっていてまるでシンデレラが履くガラスの靴だ。あんまりに綺麗すぎて、靴というよりもはやそういう飾り物のようにすら見えてくる。
こういう靴を履くのはきっとお姫様みたいな人なんだろうな……。
「触ったら殺すわよ」
「ぎゃっ!?」
いつのまにか隣に来ていた烏丸先輩の低い囁き声にぎょっとする。
「ぎゃってなによぎゃって。仮にも先輩に向かって」
「いきなり現れるから……ていうか、ガラスケースの中のものをどうやって触れって言うんですか」
「前に盗まれたことがあるのよ。さもなきゃわざわざこんな大がかりなケース用意しないわ」
「盗まれたって、この靴がですか?」
確かに素人が作ったとは思えない美しさだし、そんな人がいてもおかしくはないのか。烏丸先輩からなにか盗んだら死ぬまで呪われそうだけど。
「正確にはこの靴の姉妹作が、だけどね。結局犯人は未だに見つからないし、これ以上盗まれたら先輩に会わせる顔がないからって用意してもらったのよ。この『サンドリヨン』は絶対に誰にも触らせないわ」
「先輩って?」
「『サンドリヨン』と『アンデルセン』を作った先輩よ。あんな綺麗な靴、私には絶対に作れない」
と、烏丸先輩は恍惚とした表情でガラスの靴――サンドリヨンを眺めた。自分の作品に絶対の自信を持っている先輩がここまで言うなんて……その盗まれた方の靴もさぞ素晴らしい出来栄えだったんだろう。いったいどんな人なんだろうか、靴の作者の先輩って。
「ところでいつまでぼうっとしてる気? まだ打ち合わせは終わってないわよ」
「え、だって試着はもう……」
「たった一着着ただけで終わるはずないでしょう!? あんたのちんちくりん体型に似合うイメージを探さなきゃいけないんだから! ほらさっさと脱ぎなさい! 次はこれを着るの!」
「ええ~~!?」
本当、この仕事降りちゃだめかなあ……?
2
「それは大変だったな。しかし、きみもいよいよ我が美学部の一員として活躍するようになったのだ。今現在の苦労もきっと輝かしい未来の糧となるだろう。さらなる成長のため、是非とも頑張ってくれ!」
烏丸先輩のことを愚痴っても、プリンス先輩はいつものようになんの根拠もない能天気な結論を出してくれる。してるのかなあ、活躍。できるのかなあ、成長。
「あはは……ごめんねシンちゃん、オレが休んだせいで……」
風邪が治り、ようやく学校に出てこられるようになったウィザード先輩はいつものように苦笑いしてお茶を淹れている。あんまり頼っちゃ駄目だとは思っても、やっぱりこの部室にはウィザード先輩の紅茶は欠かせない。
「なに、気に病むことはないぞウィザード。我々は常日頃きみに頼りきりだったことを痛感した。これからはあまりきみを煩わせないよう、日々努力していくことを約束しようとも!」
「もう体調は平気なんですか? 不安でしたらもう少し休んでも構いませんよ?」
「先輩がいなくても、おれたちは大丈夫だ」
プリンス先輩だけでなく、ビースト先輩やスワン先輩も口々にウィザード先輩をいたわる言葉を投げかける。さすがは部内きっての人望を誇るウィザード先輩だ。
「みんな……」
「ハハハ、さすがだな人気者! 俺もあやかりたいもんだ!」
一方の人望のない方の先輩ことキング先輩はウィザード先輩の肩をばんばん叩きながらさりげなく服を脱ぎだしている。スワン先輩がすかさず腹筋に蹴りを入れる。
「ゲフゥ!? 的確に鳩尾を!?」
「みんなありがとう。でも、本当にもう大丈夫だから。ほら、みんな紅茶飲もう?」
と、みんなにカップを配っていくウィザード先輩。プリンス先輩の分にスワン先輩、ビースト先輩と続いて、次はわたし。……ん?
「おや? ウィザード、キングの分はどうした?」
「……あれ?」
ウィザード先輩が配ったカップは全部で四つ。淹れた本人であるウィザード先輩の分は除くとして、明らかに一つ足りない。キング先輩の前だけカップが置かれていなかった。
「おかしいな、ちゃんと全員分淹れたと思ったのに……」
「そうか、俺は緑にとって仲間内に入らない存在だったのか……」
「ち、ちがっ、そういうわけじゃ!」
「やっぱりもう少し休んだ方がいいんじゃないですか? こんな凡ミスするような貴方じゃないでしょうに」
如才ないウィザード先輩がカップを数え間違えるなんて信じられない。平気だって言ってたけど、まだ風邪を引きずってるんじゃ……。
「ごめん、そうかもしれないね……」
「お前は普段働き過ぎなんだ。もうちょっと怠けたってバチは当たらないだろ。貸せ、自分で淹れるから」
「あ……」
キング先輩はウィザード先輩からポットを取ると、空のカップに自分の分の紅茶を淹れた。ウィザード先輩は申し訳なさそうにしている。
「……青星。今日は依頼、なにもないのか」
なんとなく気まずくなりかけた空気を見かねたのか、唐突にスワン先輩が言う。あたふたしていたプリンス先輩も渡りに船とばかりにその話題に乗る。
「あ、ああ! そろそろ来るはずだ!」
その言葉通り、今日の依頼者はそれからまもなくやってきた。部室のドアをぞんざいにノックし、彼は慣れた風に入ってくる。
「やあ、美学部。本当になんでも依頼を聞いてくれるんだね?」
「げっ」
いつぞやのカエル顔男……! ウィザード先輩に対して散々美学部の悪口を言ってたくせにどの面下げてやってきたの!?
「公沼か。お前なんぞがなにしに来た」
「おやおや誰かと思えば白島くんじゃあないか。いつ見ても端正なご尊顔で羨ましいねえ」
トゲを含んだスワン先輩の言葉に皮肉たっぷりに返すカエル顔。やっぱりこの人好きになれない……。
「紹介しよう、彼は二年B組の
「ただの没落貴族の傍系さ」
口ではそんなふうに謙遜してるけど、顔はまんざらでもないような表情だった。この学校にいるブルジョワジー、なんだか誰もかれもろくでもない人ばっかりな気がする。
「そんなやんごとなきお家柄の方がなにをしにこちらへ? 貴方がお気に召すようなものはございませんが……」
イケメンモードを演じるビースト先輩の口調にもさりげなく毒気が混じっている。かしこまりすぎて執事みたいな口調になっていた。
「用がなかったらこんなところ来るわけないだろ? きみらがどんな依頼でも聞いてくれるっていうからわざわざ足を運んだんだ」
「青星くん……」「青星……」
プリンス先輩のいつもの安請け合いを真に受けたらしい公沼先輩に、ビースト先輩とスワン先輩が白い眼を向けている。慌てて弁解するプリンス先輩。
「な、なんだっ!? 確かに少々の行き違いはあったかもしれないが、来るものは拒まずが我が部の信条だろう!?」
「以前そうやってなんでもかんでも請け負いすぎて仕事が回らなくなって、『受ける依頼は選ぼう』って約束したのをもう忘れたんですか?」
「うぐっ……」
「はいはい、喧嘩はそこまで。それで公沼くん、今日はどんな依頼で来たのかな?」
と、ようやくいつもの調子に戻って場を仕切ってくれるウィザード先輩。公沼先輩はごほんごほんと大袈裟な咳をしてから話しだす。
「きみたち、ぼくにガールフレンドを作ってくれないかい?」
3
公沼先輩が美学部に来てから三日後。わたしは
「良かったわぁ、圭ちゃんのお友達が良い子そうで」
「やめろよ母さん、そんなにじろじろ見たらかがりが恥ずかしがるじゃないか」
……なぜか公沼先輩とそのお母さんと一緒に。
「それに、友達じゃないって。彼女は『彼女』なんだって」
「あらあら、そうだったわねぇ」
彼女じゃないよ、ほぼ赤の他人の先輩後輩でしかないよ。……と、言いたいのをぐっとこらえて昨日ビースト先輩からみっちりレクチャーしてもらったアラフォーの女性ウケする上品な笑顔を浮かべる。こんなカエル顔嫌味男の彼女役なんて、本当ならそれこそ頼まれたってごめんなのに……。
『ファイトだぞシンデレラ! 頑張れっ!』
『頬が引きつってますよ。あれだけ僕に時間を使わせておいて失敗するなんて許しませんからね?』
イヤリングと髪飾りに偽装したスワン先輩特製超小型インカムから、わたしたちをどこかからモニタリングしているらしい先輩たちの声が聞こえてくる。美術やお菓子作りだけではなく、機械いじりの素養まであるのだからスワン先輩の芸達者ぶりには驚かされる。
『大丈夫だ、我々がついている! 「偽彼女デート大作戦」、しっかり頑張るんだぞ!』
いつもながら無責任なプリンス先輩の発言にため息をつきたくなる。まったく、他人事だと思って……。
なんでわたしがこんなめちゃくちゃなことをさせられているかというと、話は三日前に戻る。
「公沼先輩に彼女を……?」
「お前、なにか勘違いしてないか。そんなくだらないことなら出会い系サイトにでも頼め」
スワン先輩がいつになく怖い声で言う。確かにそんなこと、わざわざ人に頼むようなことじゃないと思う。
「ち、違う違う! 馬鹿にするなよ、恋人くらいお膳立てしてもらわなくても自分で探すさ!」
「じゃあどういうことだ? 彼女を作ってくれと言われてもなにがなんだかわからんぞ」
首を傾げるキング先輩に、ウィザード先輩が何か思いついたように口を開いた。
「急に『彼女』が必要になったってことかな?」
「む、どういうことだ、ウィザード?」
「そこはぼく本人に訊けよ。青星くんってたまにめちゃくちゃ馬鹿になるよな」
めちゃくちゃ直球にdisる公沼先輩だった。
「黄堂さん家ほどじゃあないけど、うちも結構婚約だの嫁探しだのでうるさくてさ。父さんには『高校卒業までは好きにさせてほしい』って許しはもらえたけど、母さんが会うたびぐちぐち言ってきて鬱陶しいったら。今時高校生で見合いなんてないだろ!?」
見合いって……あのお見合い? 写真見たりお座敷で二人っきりになったりするやつ? 本当にあるんだ……。
「断ればいいだろ。恋人がいるとか、気になる女がいるとか言って」
「今まではね。でもさあ……」
はあ、とため息をつく公沼先輩。ああ、なんとなく察しがついた。
「『どうしてもお見合いが嫌なら、その恋人とやらを連れてこい』……そんなところ?」
「今更嘘だって言えないし、かといって今すぐ彼女が作れるわけないし。このままじゃよく知らない女と結婚させられる羽目になるんだよ、助けてくれ!」
「えっと、つまり……」
公沼先輩が美学部に頼みたいことというのは。
「公沼くんのお母さんの前で恋人を演じてくれる女の子を斡旋してほしいってことでいいかな?」
「もちろんお里が知れるような下品な女は駄目だぜ? 母さんの目を誤魔化せるような上品で知性のある子を紹介してくれ」
頼む立場のくせに随分居丈高な物言いだった。
「わかりました。ここは我らが部長の出番ですね。さあ青星くん、一肌脱いでください」
「うむ、ここは私が……ってどういうことだ!? 私になにをさせる気だビースト!」
「こういうときは貴方が適当に女装して誤魔化すのが常道でしょう?」
「どうやらきみと私との間で大きすぎる見解の相違があるようだぞビースト!」
「青星くんは駄目だよ。顔はともかく喋ったら馬鹿がすぐにバレる」
馬鹿がバレなかったら女装した男でもいいんだ……?
「ううん、でも難しい依頼だね? そういう案件って言うと女の子側もしり込みしちゃうと思うから、引き受けてくれる子がいるかどうか……」
「性格の悪い嫌味な不細工野郎の彼女役なんて誰だってごめんだろう」
ウィザード先輩が濁そうとした部分をストレートに言ってくれるスワン先輩。言い方が悪すぎるけど、そうなんだよね……。
「ふん、そんなことはぼくだってわかってるさ。だからきみたちに頼んでるんだ。なんだってどうにかしてくれるって話だろ?」
「それは……そのだな……」
大言壮語してしまったらしいプリンス先輩が冷や汗をかきながら目をそらす。依頼内容もよく聞かずにむやみに引き受けるからこんなことになるんだよ。
「やっぱりここは責任を取って青星くんが引き受けるのが筋じゃないですか?」
「それは駄目だって言ってるだろ。第一きみたち、青星くんがマトモに演技できると思うのかい?」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「おい、なんで皆黙るのだね?」
無理、だろうなあ……。プリンス先輩以外のその場の全員の心が一つになった瞬間だった。
「……じゃあ、どうする。小角先輩、なにかアテはあるのか」
「ううん……いなくはないけど……」
ウィザード先輩は難しそうな顔で帽子をいじる。
「嫌がりそうなことはあんまり頼みたくないしなあ……」
「ふむ、どこかにいないものか? 公沼くんのお眼鏡にかない、どんなに嫌な事でも進んで引き受けてくれる素晴らしい人格の持ち主は……」
そんな良い人、都合よく現れてくれるわけないじゃん。と、思っていたら――いつの間にかわたしに視線が集まっていることに気がついた。
「え、なんですか……?」
「顔はまあ、貶されるほど悪くはないと思うんですよね」
唐突にビースト先輩が言う。
「鬼女面みたいな目つきの悪さも表情の作り方やメイク次第でごまかせるはずです」
「あの……」
「受け答えはオレらがあらかじめレクチャーしておけばいいかな? 付け焼刃でも一日くらいならしのげると思う」
「え……」
ウィザード先輩まで。
「ああでも、シンちゃんってアドリブに弱いんだっけ……想定外の話振られてパニクっちゃったらどうする?」
「前に街田に作らされた偽装インカムがあっただろう。あれが使えるんじゃないのか」
「はい!?」
スワン先輩も!?
「ああ、あれがあったな! もしもシンデレラが窮地に陥っても、あれで我々が助言すればいい!」
「ふん、あのときのガンたれ女か。あんまり気に食わないけど、ぼくもわがまま言える立場じゃないしな。妥協するよ」
「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!?」
わたし抜きでどんどん進んでいく話に慌てて割って入る。こないだあんなことがあったばっかりなのに、また!?
「うん、どうしたシンデレラ?」
「どうしたじゃありませんよ! わたし、まだやるともなんとも言ってないじゃないですか!」
「灰庭さんの意見を訊いたら絶対断るでしょう? 貴女」
身も蓋もないことを言ってくれるビースト先輩。当たり前だ。
「だって彼女役なんてわたしできませんよ!? 他人と話すの苦手だし、演技なんてできないし……第一、デートなんてしたことありません!」
「デートならしたことあるだろ。ほら、俺と一緒に歩いたり、緑といちゃついたり」
「そんなのデートのうちには入りませんって……!」
「そ、それならば私ともしたことになるな! ほら、前にゲームセンターで……」
「それもデートには入らないと思います……!」
「入らないのかっ!?」
よしんば入るにしても、ちょっと異性と歩いたり一緒にいるくらいのことと、相手の親御さんと顔合わせしたりすることを同列に語ることはできないはずだ。
「まあ、多少無茶なのはわかってるさ。だから俺たちがフォローするんだろ?」
と――キング先輩はふいに優しい顔になってわたしの肩に触れた。
「お前に無理を強いていることくらいはわかる。だからお前も俺たちを容赦なく頼れ。それが『仲間をやる』ってことなんじゃないか?」
「先輩……」
う……駄目だ、マジトーンのキング先輩に言われるとなんとなく断りづらい……。
「うむ! シンデレラが我が部の一員として新たなる一歩を踏み出す時だ! 我々も全力で支援しようではないか!」
「え、いや、わたしはまだ……」
「頑張ってくださいね灰庭さん。僕も応援します」
抗議の言葉はビースト先輩に遮られる。顔こそイケメンモードのままだけど、この目は明らかにめんどくさがってるときのそれだ。公沼先輩に聴かれないように小さな声でそっと囁いてくる。
「そろそろ貴女も部員らしいことをしてください。いつまで経っても守られているお姫様じゃないんですから」
「…………!」
あまりに挑発的な物言いにむっとする。わ、わかってるよ、そんなこと……!
「……大丈夫? シンちゃん。本当に嫌だったらオレがなんとかするから、無理はしなくていいよ……?」
ウィザード先輩が心配そうにわたしの顔を覗き込む。
「なんとかするってどうするんだ? お前にもアテはないんだろう」
「ないけど……でもシンちゃんに嫌な事やらせるわけにはいかないだろ? 無理強いは良くないって」
「それで緑が無理をしたら本末転倒だろうが」
そうだ……わたしが断ったら、またウィザード先輩が頑張るくらいしか解決策がないんだ。病み上がりでまだ調子が悪い先輩を無理させるわけにはいかない……!
「……わかりました。わたしがやります」
「シンちゃん!?」
「うむ、よくぞ言ったシンデレラ! 美しいぞ!」
「ふん、精々頑張って公沼の名を汚さないような女に化けてくれよ?」
偉そうな公沼先輩に最初からないやる気がますます減っていく。本当、なんでこんな奴なんかの為に。
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