第9話『VSフィリップ、ジョニー』

「さあ、皆さんお待ちかねの準決勝だ! ここまで上り詰めた選手たちを紹介していくぞ!」

 司会者の言葉に合わせて闘技場に設置されてある巨大モニターに準決勝まで勝ち進んだ選手たちが映し出される。

「一組目は生徒会役員のフィリップ、ジョニーコンビ! 水と風を合わせた混合魔法を得意とする二人組だ!」

 次に映し出されるは生徒会長のベネットとそのパートナー兼生徒会副会長のジミー。

「二組目は我らユナイテッド魔法学園小等部の生徒会長と副会長のベネット、ジミーコンビだ! 混合魔法で使われる霧に囲まれると反撃しにくくなるので注意が必要だ!」

 次は風雷坊と恐れられているウィリアムス兄弟が映し出された。

「三組目は我らユナイテッド魔法学園一の暴れん坊、風雷坊のギルバート、アルバートコンビだ! その強さは生徒会長コンビと同等と噂されているぞ!」

 そして最後は! とレオンとミシェルがモニターに映し出される。

「四組目! 何と同調率一〇〇パーセントと言う驚異の数値を叩き出した新星、レオン、ミシェルコンビだ! レオンくんは闇、ミシェルくんが光であるため、伝説の混合魔法、混沌が見られるぞ! さあ、選手たちの紹介も終わった事だし、早速準決勝を始めるぞ! 最初に戦うのは……」

 モニターにフィリップ、ジョニーコンビとレオン、ミシェルコンビが映し出された。

「フィリップ、ジョニーコンビ対レオン、ミシェルコンビだ!」

「行こう、ミシェル」と言ってレオンは闘技場のステージへと向かう。

「うん」とミシェルは彼の跡を続いた。

 ステージに上がるとそこには対戦相手のフィリップとジョニーがいた。

 フィリップは「よろしくお願いします!」と元気に一礼した。

「お手柔らかに頼むぞ」と隣にいるジョニーは言った。

「お互い、油断せずにいこう」とレオンは微笑んだ。

 いよいよ準決勝……、レオンの足を引っ張らない様にしないと……! とミシェルは自分の頬を叩いて気合を入れた。

「これより準決勝、フィリップ、ジョニーコンビ対レオン、ミシェルコンビの試合を始める」

 両者構えて、と審判は片腕を前に出した。

 それと同時に二組も戦闘態勢に入る。

「始め!」と火蓋は切って落とされた。

「『同調』!」

 二組はほぼ同時に融合する。

 対戦相手の同調体の姿はフィリップをベースに髪と目の色はジョニーの緑色をしている。

「行きますよ! 二人とも!」

 フィリップとジョニーの同調体はそう言って右手を地面に添える。

「アイスリンク!」

 その瞬間、地面が一面氷に覆われる。

「これは……!?」と驚愕するミシェル。

 対してフィリップとジョニーの同調体は口を横に広げて「これが自分たちの混合魔法、氷魔法です!」と説明した。

 氷の膜が張られたことで自由に動く事が出来ない……!

 苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるレオンとミシェルの同調体に対してフィリップとジョニーの同調体は更に追い打ちをかける様に魔法で氷の矢を精製し、それを放つ。

「クッ! ライト・アロー!」

 飛んでくる氷の矢を光の矢で撃ち落とす。 その時、フィリップとジョニーの同調体が距離を詰めて蹴りを放ってきた。

 咄嗟に防いだレオンとミシェルの同調体は氷のリンクの影響で滑り倒れる。

 彼らはいったいどうやってあの距離から移動してきたんだ!? と困惑するミシェルに対し、落ち着け、奴らの足もとを見るんだ、とレオンが宥める様に意思を疎通させる。

 彼らの足もとには氷で出来たアイススケートシューズのブレードの様な物がついていた。

 成る程、あれでアイススケート選手の様に動いてきたって訳だね? と意思を送ってくるミシェルに、そうだ、とレオンは頷く。

 距離がある時は魔法を放って体制を崩し、俺たちがその魔法を防いでいる間に距離を詰めてさっきの様に攻撃を仕掛けると言う戦法だ、とレオンは意思を通して説明する。

 何か策はないのかい? と言うミシェルの問いに、レオンは一つだけある、と答えた。

 しかし、これは危険な賭けだ。 失敗すれば、俺たちは確実に負ける、とレオンにしては珍しく弱気な発言に、大丈夫、僕はレオンを信じるから! とミシェルは言った。

 ありがとう……。

「行くぜ! カオス・クエイク!」

 レオンとミシェルの同調体は光と闇を混合させた塊を地面にぶつけ、氷で出来た膜を全て破壊した。

 余りにも強烈な衝撃に予想外だったのか「何だと!?」とフィリップとジョニーの同調体は驚愕を顔に浮かべながら足を崩す。

 その好機を逃さない様にレオンとミシェルの同調体は素早く黒と白の入り混じった球体を精製した。

「これで終わりだ! カオス・ストリーム!」

 両掌から混沌の閃光が対戦相手の同調体に向かって放たれる。

「しまった……!?」

 空中で避ける術がないフィリップとジョニーの同調体は悲痛な叫びを上げながらそれをくらい、爆音と共に煙に包まれる。

 それが収まるとそこには同調が解けたフィリップとジョニーが倒れている姿があった。

「フィリップ、ジョニーコンビ、戦闘不能の為、勝者、レオン、ミシェルコンビ!」

 歓声が沸き上がる。

 レオンとミシェルの同調体は大量の魔力を消費した影響か、その場で腰を下ろし分離した。

 危なかった。 あの時、もしも魔法を外していたら俺たちに勝機は無かった。 流石はフィリップとジョニー、生徒会役員のことだけはあるな……。

 そんな事を考えているとジョニーが痛む身体に鞭打って立ち上がり、フィリップに肩を貸して起き上がらせてフラフラとレオンたちの下へと近づいてきた。

「いやぁ……、負けましたよ……」

 フヘヘッと笑うフィリップ。

「次は敗けない」と相変わらず無愛想な表情を浮かべながらジョニーは言った。

 対してレオンは「もう、お前らとは戦いたくないな」と弱気な発言をしながら苦い笑みを浮かべるのだった。

「準決勝! 勝利を勝ち取ったのはレオン、ミシェルコンビ! 次は風雷坊ギルバート、アルバートコンビ対ベネット、ジミーコンビの試合を執り行いたいところだが、レオン、ミシェルコンビが先ほどの試合でステージを大破してしまったのでまずは修復作業から入らせてもらうぞ!」

 司会者の言葉にレオンとミシェルはただただ苦笑いを浮かべるのだった。



 あれから約一時間をかけて闘技場のステージは修復された。

 その間に観客席に移動したレオンとミシェル、フィリップとジョニー。

 四人は観客席で試合を観ていたアンナとケイシーと合流し、そのまま雑談に入った。

「まさか貴方たちが敗けるなんてね?」

 意外ですわ、と言うアンナの言葉に「良い所までいけたんですけどねぇ」とフィリップはしてやられたと言わんばかりに笑った。

「今まで一番手こずった相手だったよ」と言うレオンの言葉にミシェルも同意する様に頷く。

「ははっ! そう言ってもらえると有難いです!」とフィリップは口を横に広げる。

 陽気に笑う彼に対し「貴方、敗けたのですのよ? 悔しくなくって?」とアンナがキツイ口調で聴くと「フィリップはこういう奴だ」とジョニーが応えた。

 それによりアンナは思わず呆れる様に溜息を零す。

「それでは皆様、お待ちしました! これより準決勝、ギルバート、アルバートコンビ対ベネット、ジミーコンビの試合を始めるぞ!」

 待ってましたと言わんばかりに歓声が響き渡る。

 いよいよか……。

 レオンたちは闘技場のステージへと視線を送るのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る