第8話『VSアンナ、ケイシー』
魔闘祭で二、三回戦と順当に勝ち進んでいくレオンとミシェル。
その圧倒的な戦闘能力に一回戦から敗北して暇を持て余し、観戦しに来た高等部の生徒たちの目にも留まっていた。
あの美少年コンビは何だ?
二人とも可愛い!
二人とも弟にしたい!
など人気を勝ち取っていた。
「次の対戦相手は誰だ?」とレオンが聴くと、「次は生徒会役員のアンナさんとケイシーさんのコンビだよ」とミシェルは答えた。
成る程、生徒会の人間か……。
「気を引き締めた方が良いぞ」
そう言って現れるは生徒会長のベネット。 彼の隣には勿論パートナー兼生徒会副会長のジミーがいる。
「生徒会の人間は皆、同調状態特有の混合魔法が得意だからな」
混合魔法、それは以前、生徒会長ベネットとそのパートナーのジミーがやっていた魔術の一つ。 相性の良い二つの属性を混ぜ合わせる事で強力な魔法を解き放つ事が出来る。 彼らは炎と水の属性で蒸発を利用した霧を発生させる。 容易にやっているようにも見えるが実はこの混合魔法にはお互いの同調率が最低でも八〇パーセント超えてなくては使えない欠点があるのだ。
レオンとミシェルも、初めて同調して風雷坊と対峙した時も使用した事がある。
「そいつは厄介だな」と心にも無い事を口にするレオン。
「どうせ突破するんだろ?」とベネットは少し呆れる様に笑った。
当然だ、とレオンが言ったその時、「それはさせませんわ」と不意に後方から気品さが感じる声が耳に入り込んだ。
そちらに振り返るとそこには赤みのかかった茶色のロングストレートの髪をした女の子と、薄ピンクのショートボブの髪をした女の子がレオンたちの下へと近づいてきた。
赤茶色の髪をした女の子の顔つきは可愛らしいものではあるが、どこか厳しさを兼ね備えた目つきが一歩他人を退かせる雰囲気を醸し出している。 一方、薄ピンクの髪をした女の子は赤茶色の髪の少女と比べて身長が少し低く、どこか怯えているその金色の大きな瞳は守ってあげたくなる衝動を覚えてしまう可憐さがあった。
「貴方がレオン・スミスですわね? 私の名前はアンナ・キャンベル。 生徒会で監査を務めていますわ」
赤茶髪の少女、アンナは高飛車な自己紹介をする。
「わ、私はケイシー・アンダーソンです……。 アンナちゃんのパートナーで生徒会会計を務めています……」
ケイシーはアンナとは正反対に弱々しい自己紹介をした。
「ちょっとケイシー? もっと胸を張って堂々としたらどうなの?」
「うぅ……、だってぇ……」
小声で勇気づけるアンナに対してケイシーは頼りなく身体をモジモジとさせる。
そんな彼女の姿を見たミシェルは親近感を覚えるのであった。
皆の視線に気づいたアンナは恥ずかしさを誤魔化す為に咳払いをして「兎に角!」レオンを指差して睨みつけた。
「覚悟しておきなさい。 私たちが生徒会長たちのオマケでないことを証明してみせるわ!」
行きますわよ! とアンナはパートナーのケイシーを連れてレオンたちの前から去って行ったのだった。
「すまないな、レオン、ミシェル。 彼女は良い子なんだが如何せんプライドが高くてな……」と申し訳なさそうにアンナをフォローするベネット。
「別に良いさ。 ああ言った奴は嫌いじゃない」と笑うレオンに対して、さっきの二人の方がタイプだったりするのかな? とミシェルは少し不安を覚える。
「それでは、四回戦を始めるぞ!」
司会者の言葉が耳に入り、「じゃ、俺たちは行くわ」とレオンはベネットとジミーに手を振ってミシェルと共に闘技場へと向かっていった。
「それでは四回戦、レオン、ミシェルコンビ対アンナ、ケイシーコンビの試合を始める。 両者構えて」
審判の言葉に従って二組は戦闘態勢に入る。
「始め!」と審判は腕を振り上げた。
それと同時に「『同調』!」と二組は光に包まれて融合する。
同調した彼女たちの姿はケイシーの髪の色や目の色がアンナのものになっていた。
「さあ、いきますわよ! アイアン・ニードル!」
先に打って出たのはアンナとケイシーの同調体。
土属性と炎属性の混合魔法でレオンとミシェルの同調体に襲い掛かる。
「ほう……?」とレオンは感心する様にそれを避けて黒と白が混じった光の球体を放つ。
しかし、相手の同調体は「アイアン・シールド!」と魔法名を叫んで鉄の盾を出現させてそれを防いだ。
「何だ? 鉄の塊を出すだけか?」
半ば煽る様にレオンとミシェルの同調体が発言するとアンナとケイシーの同調体は「あら、余裕の笑みを浮かべるにはまだ早いわよ?」と口元を緩めて片手をそっと地面に添えた。
「アルケミー!」
魔法名を口にしながらアンナとケイシーの同調体は地面から剣を精製した。
「私の属性は土。 ケイシーの属性は炎。 私の属性で鉄を精製し、ケイシーの属性でそれを鍛え一つの武器を精製する事が出来ますの。 安心しなさい。 刃引きはしてありますわ」
だから、とアンナとケイシーの同調体はその剣でレオンとミシェルの同調体を映して言葉を続ける。
「安心してくらいなさい!」
アンナとケイシーの同調体は一気にレオンとミシェルの同調体に距離を詰め、精製した剣で襲っていく。
レオンとミシェルの同調体はその太刀筋を難なくかわして距離を取るが巨大な鉄の針が地面から襲い掛かってくる。
「防戦ばかりじゃ私たちには勝てませんわよ!?」
「そうだな、じゃ、本気だすか」
「へ?」とアンナとケイシーの同調体が驚愕を顔に浮かべた時には既にレオンとミシェルの同調体が距離を詰めていた。
「遅い!」とレオンとミシェルの同調体はアンナとケイシーの同調体の腹部、顎と順番に掌底した後、左頭部に回し蹴りを入れて左方に吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされたアンナとケイシーの同調体はクッ! と声を漏らしながらも直ぐに立ち上がった時には対戦相手の魔法の準備が出来ていた。
「カオス・ストリーム!」
刹那、レオンとミシェルの同調体の両手から黒と白が入り混じった閃光が放たれた。
鉄の盾を精製しようとしたがその閃光が余りにも早い為、それは叶わず諸にくらってしまい同調が解ける。
「アンナ、ケイシーコンビ、戦闘不能の為、勝者、レオン、ミシェルコンビ!」
歓声が響き渡る。
レオンとミシェルは同調を解いてすぐにアンナたちの下へと向かった。
「大丈夫か?」と手を差し出すレオンに対し、「何とか……」と苦い笑みを浮かべながらアンナはその手を取って立ち上がった。
ミシェルも彼女のパートナーのケイシーを起き上がらせる。
「流石同調率一〇〇パーセントのことだけはありますわね」とどこか皮肉を込めて言うアンナに対してレオンは「すまない」と気まずそうに笑った。
「中等部に上がって再び魔闘祭で相みえる時は敗けませんわ」
「その時はまた勝たせてもらうよ」
レオンの勝利宣言がどこか憎めないのか、アンナは不敵に笑って「行くわよ」とケイシーを連れて去って行ったのだった。
「さあ、ミシェル。 次はいよいよ準決勝だ!」
対してミシェルは「うん! 絶対勝って決勝に行こう!」と笑みを浮かべたのであった。
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