限界を見る冒険者
俺の呪いが解けていないことを知りつつも、パーティーの仲間は「そんなものお前の実力でフォロー出来るだろう」と楽観的な姿勢を見せていた。
しかし。
俺が歩けばトラップが発動する。右目が見えず視界に捉え損なった魔獣が襲いかかってくる。俺と対峙した魔獣の大ぶりの一撃がたまたま急所に入る。落石に弾かれた魔獣が俺と玉突き事故を起こして仲間を巻き添えにする。俺が斬り飛ばしたモンスターの腕が仲間に危うく直撃しそうになる。
そんなトラブルが起きる度に仲間に怒鳴られ小突かれ愚痴を言われる、その程度なら良かった。
その程度で済まない問題は、程なくして起きた。
その日の探索先は、既に森に飲み込まれつつある廃都だった。整然とした町並みとせめぎ合うように木々が茂り、通常の街路を至る所で塞ぐ複雑な迷路を俺達は進む。そしてようやくたどり着いた、かつての交叉点と周囲の建物が崩れて出来た広場。そこで俺達は魔獣の一団と出会った。
魔獣の一団すなわち大猿のような魔獣数十体は俺達を取り囲んだ。退路を確保しようとした騎士の動きも、脇道や建物から湧いてくる何体もの魔獣によって封じられた。
それでも、俺達パーティーにとってピンチと呼べるような状況ではなかった。俺の剣のひと振り、魔術師の呪文ひとつでそれら魔獣を数体は倒せる算段が立っていたからだ。一体ずつなら盗賊だって急所を狙って一撃で倒すことも可能だった。
けれど、問題は戦闘の序盤で発生した。
いつものように俺が先陣を切って踏み込み、さらにその右斜め後ろに剣の間合いを空けて盗賊が陣取った。魔術師と僧侶は背後警戒のために背中合わせになっている騎士に守られている。
突っ込んでくる数体の魔獣に大きく剣をひと薙ぎ。それだけで俺は二体ほどを両断、他にも二体か三体に手傷を負わせた。さらにもう一撃、と振るった斬撃に――
違和感。
直後に、盗賊のうめくような叫び声。
思わず振り向くと――背後の盗賊、その頬にざっくりと、斬撃の痕。
慌てて彼を庇いつつフォーメーションを切り替える。魔獣の群れの隙を見て騎士が広場側に回り込み、代わりに俺が退路を切り開くために元来た道へ突っ込んだ。
ようやく周囲の安全が確保できるところまで戻ったところで僧侶が盗賊の治癒を始めた。傷は深いものの僧侶の腕にかかれば後遺症の問題もないという。ただ大きな治癒で体力が削がれるため、今日の探索はこれで打ち切る必要があるとのことだった。
そして、それよりも重いひと言が、盗賊の口をついて出た。
もう一緒には戦えない、と。
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