C'est la vie.

自嘲する冒険者

 誰かがこの手記を読んでくれているだろうか。

 誰もが俺のことを忘れ去ってしまう前に、少しでも俺の足跡を残したい。

 そんな俺の我が儘に付き合ってくれる読み手が居てくれるなら嬉しい。


 俺は剣士――冒険者だ。それも「冒険者の端くれ」なんて己を卑下する必要が無い程度には名が通っている。

 洞窟や森の主の類いを除けば、俺が一人で倒せない魔獣は存在しない。そしてその主にしたところで、魔術師、盗賊、僧侶、騎士、それぞれの職においてのエキスパートが揃っている俺達パーティーの敵じゃない。

 街へ戻ってもそれは変わらない。自ら最強を自称するような馬鹿ではないが、ここ数年で俺達より強いパーティーに会った記憶は無いし、それぞれのメンバーは行く街々でそれぞれの専門職の指南役や講師として招かれることも多い。

 ギルドの掲示板に上がらないような、駆け出し冒険者は首を突っ込むだけで生還不可能な任務を依頼されることもしばしばある。

 だが、それも過去の話になるかも知れない。


 俺は、剣士にとって肝心の目を奪われた。

 それと……幸運も。

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