第3話空白の運命と弄ばれる戯曲
「な、なにバカなこと言って」
しかし完全にレイナの発言を否定することもできないサム。
当然だ。彼の運命の書は彼女の言う通り「何も書かれていない空白のページのみが広がっている」空白の書なのだ。
「・・・うん、そうだよ。サムの運命の書は真っ白だ。」
「ちょっとジム!!」
「でも、僕たちの仲間であることに変わりはない。そうじゃなきゃここまで一緒に旅をしませんから」
そう言いきるジム。よほどその発言がうれしかったのかうっすらと涙を浮かべるサム。
「ジム、あんたってやつは・・・あれ?そう言えばジョンはどこへ消えた?真っ先に何かしら言ってくるものだと思っていたんだけど・・・・」
そう言いながらあちらこちらに視線を走らせるサム。
「あいつなら、気になることがあるって言ってどっか行っちまったぜ。」
と、事後報告をするタオ。
「はぁ!?ったくあいつは。団体行動ってのができないのかよ?」
「まぁまぁ、僕たちは僕たちで宝探しに行こうよ。ここまで来たら再開できると思うし。」
と、一人怒りをあらわにするサムを宥めつつ、今後についての提案をするジム。
「それについては僕も賛成かな。このまま何もしないのもあれだし。」
「その事についてなんだが、俺たちも同行してもいいか?」
と、同行を申し出るタオ。
「ちょっと、何勝手なこと言っているのよ!?」
「姉御、ここは同行した方がいいと思いますよ。」
と、タオの勝手な交渉を咎めようとするレイナを説得するシェイン。
「サム、どうする?」
「・・・ジムがいいのなら、の話ですが。」
構いませんよと了承するサム。当然のことながらジムに拒否する理由は無い。
かくして「調律の巫女」御一行はジムたちの宝探しに同行することになった
「ねぇジム、本当にこっちでいいんだよ、ね?」
「そ、そのはずなんだけど・・・」
「さ、さっきから同じところをグルグルしている気がする、ね。」
やや疲れたように声を掛け合うサムとジム、そしてエクス。
「何者かが妨害しているのかしら?」
「何のためにだ?」
「タオ兄・・・普通に考えれば、この先にあるお宝を、誰かが独占したいんだと思います。誰か、心当たりはありませんか?」
と、推察をするレイナとそれに疑問を挟むタオ、そしてジムたちに質問をするシェイン。
「・・・あまり考えたくはないけど、ジョンならあり得そう。」
「え、なんで」
「それは・・・っ!?」
バチンと、視界と感覚が刺激されたのと同時に、またしてもヴィランが。
「こいつらが妨害していた、なんてことは無いか。」
そこまでできそうじゃないし、と刀を鞘から抜きつつ呟くサム。
「うん、それは僕も同感。」
ナイフを構えつつ同意を示すエクス。
「まずは目の前のことに集中するわよ!」
と、今度は魔導書を開きつつ口を開くレイナ。
「ぶっ飛ばしていきますよー。」
と、ロッドを構えるシェイン。
「おっしゃ、行くぜー!!」
長柄の槍と盾を出すタオ。
臨戦態勢でヴィラン達を迎え撃つエクスたち。
「全く、きりがないじゃんか!!」
あちらこちらのヴィラン達を切り裂きながらぼやくサム。
「そればっかりは言ってもしょうがないと思うけど・・・」
と、各個撃破をしながら確実に仕留めるエクス。
「二人とも、口より手を動かしなさい!!」
「あちゃぁ、姉御に言われちゃおしまいですよ・・・」
「ちょっとそれどういう意味よ!?」
(ある意味お嬢が一番煩いけどな。)
「これで、お終いだ!!」
最後にジムの矢がヴィランを仕留め、幕引きとなった。
「それで、なんでシルバーだと思ったの?」
フリントの洞窟へ行く道すがら、先ほどの発言の真意をジョンがサムに尋ねる。
「・・・本当ならこういうことは本人の口から言うべきことなんだろうけどね。あいつ、あの船での旅路の途中で自分の正体を僕に行ってきたんだよ―自分はあの海賊フリントの元部下でフリントの船で操舵手をしていたんだって、なんで僕に言ったんだろうね。」
「あいつが、悪い海賊・・・」
「信じられない、ないし信じたくないっていうあんたの気持ちもよくわかるけど、これが現実なの。」
サムとジムが話し込むのを横目にレイナたちが疑問を交わしあう。
(ねぇ、確かジムってジョンが海賊だったっていうこと知っていたはずじゃないの?)
(そのはず、なんだけど・・・)
(きっと、バタフライ効果というものかもしれませんね)
(バタ・・・なんだって?)
やがて話が終わったのかレイナたちを不審そうに見て、声を掛けるサム。
「?何貴方たちこそこそと話しているの?」
「「「「いや、別に何も。」」」」
明らかに怪しい反応だったが一応納得したサム。
「まぁ、あいつがこんな妨害をするとは思ないけどね、第一、あいつにはあんなことできないはずだし」
「あ・・・」
「考えてもみれば確かにそうね・・・いくら海賊だからってこんな魔法染みたことはできないはずよ。」
「シェインも同感です。まぁシルバーさんがカオステラーなら話は別ですが。」
「・・・考えてもしょうがないし、取り敢えずは宝のもとへ行こう。もしかしたらあいつのことだからそっちに行ったのかもわからんし。」
「それもそうだね。こっちだよ。」
かくして一行は宝のもとへといくのであった。
「あ、あぁ、がぁ・・・っ」
―シルバーの、助けを求めるにはあまりにも小さすぎた呻き声を耳にすることもなく。
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